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Link 〜過去の住む家〜 作者:藤野麻衣

第10回   #Nightmare 8# カランコエ

背中にぶつかった衝撃で、ガラスが割れる音がした。
そして、感じるのは鋭い痛み。声にもならなくて、ただ歯を食いしばってた。
背中が熱い。熱くて、その上痛い。
咄嗟に庇おうとして、スミレ体の上に覆いかぶさっていた。
本当、後先考えずだな。俺。
「アラン! 大丈夫っ!!? 背中、血、いっぱい出てるよ……っ」
「だ、大丈夫…………っっ」
痛みで顔を歪ませたまま、俺は何とか声を出した。
「大丈夫って顔してないよ!? 凄く苦しそうな顔してる…っ」
「いや、この状況で笑ってられる人、いないと思う……」
それでも繋いだままの手を、握り返してもう一度「大丈夫」を伝える。
スミレは痛みで動けない俺の背後に居る、彼女を睨みつけた。
「あんたがやりたかった事ってこれなの? アラン脅して、傷つけて。どうなってるか分かってるよね? 死んでもそれでも未だこの世を彷徨い続けて、家族失っても頑張って生きてきたアランを道連れにするわけ?」
彼女は言葉を発しなかった。
この位置からじゃ、彼女の表情は見えない。
力を振り絞って、スミレの横に体制を崩して、倒れこんだ。
背中が床に当たらないように、そして彼女の表情を見る為に顔と体を横に動かす。
彼女は無表情だった。
「これであなたが行く先は決まった。地獄だよ。何なら私が送ってあげようか?」
スミレは本気で怒っていた。
今、スミレか正体不明の幽霊、どっちが怖い?って聞かれても即答できない程の剣幕で。
彼女は怯えたりする事は無く、無表情のままスミレを見つめている。
「やっぱり、貴女、邪魔。居なくなって欲しい」
感情を出さず、無表情のまま言う。それがかえって恐ろしかった。
だけど。そう思って俺はスミレの手を引っ張った。
「スミレ…っ。ま、また…襲ってくるかもしれないから…っ…やめとけよ…っ」
喋る度に、まだ背中が痛む。
もし再び彼女が襲ってきても、多分俺は動けない。もう守ってやれない。
「大丈夫。自分の身は自分で守るから。それにアランも」
こういう状況下の中でも、そういう言葉を発せられるスミレはとても強い女だと思う。
本当は俺がスミレを守らなきゃいけないのに。だけど、今はそれで良いと思えた。
その言葉に安心させられて、俺は目を閉じる。
痛みがましになるまでは、大人しくスミレに任せておこうか………。
「じゃあ、良いよ。貴女がそこまで言うなら。私、地獄へ行くよ」
彼女の声が、聞こえる。

「……………………………お兄ちゃんと一緒に」

…オニイチャンとイッショに?
先程目を閉じたばかりだったけれど、思わず目を開けて彼女を見た。
彼女は更に近くに居た。
一歩、一歩、また一歩…そして。
立ち上がれない俺の方に手を伸ばして。
俺の脚に、触れた。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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