■ トップページ  ■ 目次  ■ 一覧 

陰影 作者:藤野麻衣

第9回   *7* Jの笑顔
「まだかな」
今度J≠ェ来たら、色々と聞いてやるんだ。
そう決めたから。ずっと待ってるのに────。
「Jの奴、遅いんじゃ馬鹿野郎ーっ!!」
手に持っていたクッションを思いっきり壁に投げつける。
本当に不思議な人なんだから──……。
「呼びましたか?」
「うわっっ! 吃驚させないでよ!」
突然横に現れたJに思わず、大きな声を出す。
「呼んだのは貴方です」
Jって呼んだら出てくるんだ…知らなかった。
さて、本人も登場したので早速…。
「Jはどーして魔法使いなの?」
唐突に。
「…秘密です。それが聞きたくて呼んだんですか?」
コクンと頷く。…やっぱり教えてくれなかった…。
「帰ります」
そ…そんなぁ〜っ。まだ来たばっかりなのにー!
どうにかして引き留めて…。
「J! これあげる! 私が作ったの」
咄嗟に取り出したのは、数日前に作った手作りクッキー。
Jは一枚手にとって口に入れた。
「まぁまぁ…ですね」
不味くなくて良かった…と一安心。
「今度はもっと上手に作ってやる!」
「また作るんですか? 今度は食べませんよ?」
ムムム。
「良いじゃん。これくらい」
「貴方の願いを教えてくれたら良いですけど」
ま…また…。
「だから無いって」
「…では帰ります」
そんな…願い事なんて…っ!
慌てている私を見てJの顔が変化する。
微笑んでいる。じゃなくて。


笑顔


に。
「本当に貴方は…っ」
結局聞きたい事は聞けず、失敗だったけど。
Jが笑ってくれたから。まぁ、良いか。

← 前の回  次の回 → ■ 目次

Novel Editor by BS CGI Rental
Novel Collections