誰の心の中にだって人に言えない秘密がある。 何をどう想っているか。何をどう考えているか。 それを表に出さずに私達は『今』を精一杯生きてる。
そう、だから『地味』に生きている私に変化が訪れるなんて…。
「お母ぁさぁ〜ん。もうこのリンゴ腐っちゃったよー…!」 「後で捨てといてちょうだい。乃絵。じゃあ、いってきます」 「いってらっしゃ〜い!」 私、乃絵・ミドルトンは母と二人暮し。日本人の父は数年前に死んじゃった。 だから母は普段仕事で家にいない。でも…寂しくないよ。 もう慣れちゃったし。自分で自分のことは出来るし。 …だけどたまに失敗もする。 「このリンゴ、もったいないなぁ…」 腐ったリンゴを手に取って言った。 『では、元に戻して差しあげましょうか?』 突如背後で声がした。急いで後ろを振り返る。 「え…?」 其処に居たのは一人の青年。 整った顔立ち、長身、ただ…。 「う…う…浮いてるっ!!?」 「魔法使い≠ナすから」 その青年はさらっと言う。 魔法使いなんてそんな…おとぎ話…。 「話を戻しまして、このリンゴ。戻すなら…そうですね。貴女の髪を少々」 混乱している私を後目に勝手に話を続ける。 「ちょっと……っ!」 「大丈夫ですよ」 彼はパチンと指を鳴らす。その直後。 リンゴは元の綺麗な色で形で、私の手の中に収まっていた。 驚きの顔で彼を見る。彼は涼しげな顔だ。 「凄い…」 「これくらい。貴女の髪もいただきましたし」 あいた手で髪を触ってみる。 …本当だ…さっきより短くなってる…。 「貴方は…??」 「魔法使いです。J≠ニお呼び下さい」 そしてそのJ≠ヘ私の手を取り、こう言った。 「貴女の願いを叶えに来ました。乃絵・ミドルトン様」
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