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陰影 作者:藤野麻衣

第3回   *1* 腐ったリンゴ
誰の心の中にだって人に言えない秘密がある。
何をどう想っているか。何をどう考えているか。
それを表に出さずに私達は『今』を精一杯生きてる。

そう、だから『地味』に生きている私に変化が訪れるなんて…。

「お母ぁさぁ〜ん。もうこのリンゴ腐っちゃったよー…!」
「後で捨てといてちょうだい。乃絵。じゃあ、いってきます」
「いってらっしゃ〜い!」
私、乃絵・ミドルトンは母と二人暮し。日本人の父は数年前に死んじゃった。
だから母は普段仕事で家にいない。でも…寂しくないよ。
もう慣れちゃったし。自分で自分のことは出来るし。
…だけどたまに失敗もする。
「このリンゴ、もったいないなぁ…」
腐ったリンゴを手に取って言った。
『では、元に戻して差しあげましょうか?』
突如背後で声がした。急いで後ろを振り返る。
「え…?」
其処に居たのは一人の青年。
整った顔立ち、長身、ただ…。
「う…う…浮いてるっ!!?」
「魔法使い≠ナすから」
その青年はさらっと言う。
魔法使いなんてそんな…おとぎ話…。
「話を戻しまして、このリンゴ。戻すなら…そうですね。貴女の髪を少々」
混乱している私を後目に勝手に話を続ける。
「ちょっと……っ!」
「大丈夫ですよ」
彼はパチンと指を鳴らす。その直後。
リンゴは元の綺麗な色で形で、私の手の中に収まっていた。
驚きの顔で彼を見る。彼は涼しげな顔だ。
「凄い…」
「これくらい。貴女の髪もいただきましたし」
あいた手で髪を触ってみる。
…本当だ…さっきより短くなってる…。
「貴方は…??」
「魔法使いです。J≠ニお呼び下さい」
そしてそのJ≠ヘ私の手を取り、こう言った。
「貴女の願いを叶えに来ました。乃絵・ミドルトン様」

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Novel Editor by BS CGI Rental
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