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陰影 作者:藤野麻衣

第16回   *14* 心の奥に在る記憶
私が、3人の願い事を叶えたい理由。
心の奥底にある、誰にも見えない、見せない、真っ暗な影。
忘れたい。忘れられない。大切な人の嘆く姿。


あの頃は、周りに家族が居て、何時も笑ってた。
父・母、そして妹。普通の、幸せな家族のはずだったのに―――…。
今、脳裏に浮かぶのは、無表情の父、泣き叫ぶ母、苦しむ妹。
笑顔を失った家族の姿。
あの時から、自分が死んだその日からずっと。
光。大きな音に大きな衝撃。そして…闇。
自分の最期の時。苦しくなるほど覚えている。
飲酒運転。楽しいはずの家族旅行が。
後ろから衝突してきた車のせいで終わった。
とっさに庇った妹。痛みなんか感じる間もなかった。
あの日から、自分のせいで、犯人のせいで、家族は笑顔を失った。
このままでは安心して天国なんか行けない。
どうせなら最期、家族の笑顔が見たかった。


『家族に笑顔を取り戻したい。3人の笑顔が見たい』


「神様。お願いします。自分の願いを叶えて下さい」
そして何よりも忘れられないのは…あの時感じた感情。


「ジュール、ジュール、ごめんね」
懐かしい声が聞こえる。
「私達、前に進まなきゃ駄目だよね。ジュール」
前に…どうか。どうかあの頃の家族に。
「Jっ。Jっ!」
夢を遮る声。
私の名を呼ぶのが聞こえる。私のもう一つの…。
私はその声で目を覚ました。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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