私が、3人の願い事を叶えたい理由。 心の奥底にある、誰にも見えない、見せない、真っ暗な影。 忘れたい。忘れられない。大切な人の嘆く姿。
あの頃は、周りに家族が居て、何時も笑ってた。 父・母、そして妹。普通の、幸せな家族のはずだったのに―――…。 今、脳裏に浮かぶのは、無表情の父、泣き叫ぶ母、苦しむ妹。 笑顔を失った家族の姿。 あの時から、自分が死んだその日からずっと。 光。大きな音に大きな衝撃。そして…闇。 自分の最期の時。苦しくなるほど覚えている。 飲酒運転。楽しいはずの家族旅行が。 後ろから衝突してきた車のせいで終わった。 とっさに庇った妹。痛みなんか感じる間もなかった。 あの日から、自分のせいで、犯人のせいで、家族は笑顔を失った。 このままでは安心して天国なんか行けない。 どうせなら最期、家族の笑顔が見たかった。
『家族に笑顔を取り戻したい。3人の笑顔が見たい』
「神様。お願いします。自分の願いを叶えて下さい」 そして何よりも忘れられないのは…あの時感じた感情。
「ジュール、ジュール、ごめんね」 懐かしい声が聞こえる。 「私達、前に進まなきゃ駄目だよね。ジュール」 前に…どうか。どうかあの頃の家族に。 「Jっ。Jっ!」 夢を遮る声。 私の名を呼ぶのが聞こえる。私のもう一つの…。 私はその声で目を覚ました。
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