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陰影 作者:藤野麻衣

第11回   *9* 狂い始めた歯車
『あの…ジュールって奴…出来ると思うか? 元はただの良い子ちゃんなんだぜ? 此処に来る他のどの奴と比べても…だ。何の目的で来たのかは知らないが…きっと駄目だぜ。あいつ』


――――――…そんな事はない。僕…いや、私なら出来る!
駄目なんかじゃない! 出来なくなんかない!
絶対に………………願いを叶えてみせる!


そして僕…私は、目の前にある「物質界」への入り口に足を進めた───……。




何をやっているんでしょうか…自分は。せっかく1人落としかけたのに代金をもらわないなんて…。あの時、決めたでしょう? 絶対に成し遂げてみせると。別の人格…本当の自分≠捨てて…。



「あ。思い出した」
目の前にある卵をときほぐしながら、私は声をあげた。
考え込みながら、更に卵を混ぜていると、後ろから声がした。
「乃絵、何を作っているの?」
「ん? クッキー」
そう、私はJにあげるクッキーを作りながら考えていた。
「誰かにあげるの?」
「願いを叶えたがる魔法使いに」
言うと、後ろに居た母がクスッと笑った。
そう…Jが言っていた「魔法使いのおとぎ話」。
どこかで聞いたことがあると思っていた…。
「ねぇ、お母さん?」
「ん? 何?」
そう、あのおとぎ話は…。
「昔話してくれた魔法使いのお話、どんなのだっけ?」

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Novel Editor by BS CGI Rental
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