『あの…ジュールって奴…出来ると思うか? 元はただの良い子ちゃんなんだぜ? 此処に来る他のどの奴と比べても…だ。何の目的で来たのかは知らないが…きっと駄目だぜ。あいつ』
――――――…そんな事はない。僕…いや、私なら出来る! 駄目なんかじゃない! 出来なくなんかない! 絶対に………………願いを叶えてみせる!
そして僕…私は、目の前にある「物質界」への入り口に足を進めた───……。
何をやっているんでしょうか…自分は。せっかく1人落としかけたのに代金をもらわないなんて…。あの時、決めたでしょう? 絶対に成し遂げてみせると。別の人格…本当の自分≠捨てて…。
「あ。思い出した」 目の前にある卵をときほぐしながら、私は声をあげた。 考え込みながら、更に卵を混ぜていると、後ろから声がした。 「乃絵、何を作っているの?」 「ん? クッキー」 そう、私はJにあげるクッキーを作りながら考えていた。 「誰かにあげるの?」 「願いを叶えたがる魔法使いに」 言うと、後ろに居た母がクスッと笑った。 そう…Jが言っていた「魔法使いのおとぎ話」。 どこかで聞いたことがあると思っていた…。 「ねぇ、お母さん?」 「ん? 何?」 そう、あのおとぎ話は…。 「昔話してくれた魔法使いのお話、どんなのだっけ?」
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