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陰影 作者:藤野麻衣

第10回   *8* 最初の願い
不覚にも笑ってしまった。
笑ったのなんて、何年ぶりでしょう?
魔法使い≠ノなってから一度も笑ったことなんて…。
……なのにどうして…笑ってしまったんでしょう?
「出たーーーーーっっ!!」
……それにしても…不愉快だ。
2度目、3人目のターゲット、白柳 葵。
相変わらず五月蠅い。…です。
腕に何か。大切そうな物。抱きしめて絶叫ですか。
というか。私はお化けですか…?
「何を持っているんです?」
不快≠心の中にグチャグチャに押し込めて聞く。
「えぇぇぇえ…絵の具」
今にも私が襲いかかってくると思っているのか、頭を絵の具で庇っている。
「絵…描くの好きなんですね」
今まであまりの不快さに気付かなかったが、部屋には沢山絵が飾られている。
その絵を見回して言った。すると。
「うん! 大好き! 今度コンクールあるんだけど、テーマが人≠ナ……誰を…」
あっ。と口をつむぐ葵。
なるほど…………。
「貴方の願い、私が叶えましょうか?」
「え?」
五月蠅い女子高生。魔法使い≠見て怯えるこの人を唯一手懐ける方法。
「誰を描こうか迷っているのでしょう? 私を描いたらどうです? 代金は…」
誰も描く人がいないのなら。結局誰がやったって同じでしょう?
「有難うっっっ!」
白柳 葵。初めての心からの笑顔。
私に心を開いてくれた…?
結局続きは言えずじまい。私は…何をやって…。
きっともうこの時には、私の心が、計画が、狂い初めていたんでしょう―――……。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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