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コトノハ 作者:藤野麻衣

第1回   いつも支えてくれた貴方へ
To ...


こんにちは。いや、こんばんはかな? それともおはようかも。
突然の手紙、ごめんなさい。
今、貴方は泣いてる? 笑ってる? 怒ってる?
それは私には分からない事だけど、そうこれからもずっと。
この手紙を貴方が読んでいるということは、もう私はこの世にいないんだね。
そう考えると何だか不思議な気分。
だって私は今、自分が死んだ後に生きている貴方に手紙を書いているんだもん。
そしてこの後、この手紙は私のタンスの中に隠すんだ。
貴方が今、とても落ち着いた気持ちで読んでくれているなら嬉しいな。

何故、わざわざ貴方に手紙を書いてるかっていうとね、貴方に謝りたいことがあって。
私の勝手で貴方にはたくさん辛い思いをさせてしまった。ごめんなさい。
本当はずっと前から分かっていた。そう、丁度体調が崩れたとき。
今までそんなことは無かったのに、彼が急に夢に出てくるようになったから。
彼が死ぬとき、私と約束してたんだ。「必ず迎えに来るから」…って。
だけど、一度体調が回復したから、黙ってた。
というよりただ、私の思い込みに過ぎないって思いたかった。
だってこの物質界にはやり残した事が沢山あったから。
それに、貴方を残していく不安もあったしね。
私の「死」を知らせた時の貴方の表情が忘れられない。
もっと早く言っていれば、もっとみんなと一緒に過ごせたのに…。
もしかして、貴方を悲しませずに済んだかもしれないのにね。
本当にごめんなさい。

私はあと数日で逝きます。

これはただ、私の憶測に過ぎないんだけど。
自分の事は一番自分が理解しているつもりだから。

「死」を前にして、私は何も怖くありません。不思議なくらいに。
死を覚悟してから大分時間があったからかな。その分やりたいこともした。
未練なんて何も無いよ。強いて言えば、貴方を残していくことかな。
だけど、それもあまり心配していません。貴方を支えてくれる人が傍に居るから。
彼は貴方のことを一番に想ってくれている。
私が居なくなっても彼が貴方を支えてくれると思う。だから安心なの。
貴方もちゃんと彼に接してあげてね。意地をはらずに。
私は死んだら、あの彼の元へ行く。
そして、今度こそずっと一緒にいるんだ。
だから怖くない。実は、死後の生活に期待していたりもします。
彼が死んでから、色を失った世界を生きてるようだった。
だけど、貴方が居てくれたからこの世界でいろいろな「色」を見つけれるようになった。
貴方と、そして彼にはとても感謝している。
本当に有難う。

ねぇ、私が死んだとき、貴方は泣いてくれてた?
この手紙を見つけたって事は、遺品整理する余裕が持てたのかな?
もし、未だに貴方を苦しめているようだったらごめんなさい。
私なんて、忘れて良いから。しっかり前を見て進んでね。

何時でもどんな時でも、私は貴方を見守っているから。

それでは、貴方と再び会える日がなるべく早く、なるべく遅くなることを祈っています。

P.S 彼と仲良くね



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