それから数日後、ガイはまた働きに出ようとしていました。 ララ「どうして・・・また人を殺しに行くの・・・?」 ガイ「そうしないと・・・自分が死んでしまうんだ・・・」 ガイはそれ以上何も言わずに、家を出て行きました。 それからも毎日、ガイは働きに出かけました。でも、出かけるときの「行ってらっしゃい」という元気な声も、帰って来た時に抱きついてくる可愛らしいその仕草も、一緒に食事をして、笑いあうことも無くなっていました。そして、何よりガイ自身に変化が現れ始めていました。
バキューン!! ガイ「チッ!」 弾をはずしたガイが舌打ちをします。 ダダダダダダ!!! ガイ(くそっ・・・) 「おい、ウルフ、引くぞ!!」 ガイ「なっ!しかし!!!」 「くずぐずしるな!!早くっ・・・ぐあっ!」 バタッ 仲間が目の前で倒れました。ガードマンの銃の弾が当たったのです。 ガイ「くそっ!!!」 ガイが逃げたのは、殺し屋達のアジトでした。 ボス「また仲間がやられた・・・」 ガイ「・・・」 ボス「ウルフ!貴様はこのところ失敗続きだ」 ガイ「・・・」 ボス「何か言ったらどうなんだ!!?」 ガイ「くっ・・・」 ボスがガイの額に拳銃を当てても、ガイは何も言いませんでした。 ボス「・・・これ以上失敗したら殺すからな!」 ガイ「・・・はい」
ガイ(遅くなったな・・・) もう月が出ていました。その月をぼんやりと眺めながら、ガイはひとりで歩きます。 誰かを殺そうとする度に、ララの悲しい表情が頭の中を駆け巡ります。そして拳銃の弾はそれて、標的に当たらないのです。 ガイ「ただいま・・・」 真っ暗な家に入り、ランプに火を灯すと、冷めた料理が置いてありました。 一口食べてみて、おいしくない、と思いました。自分で作って食べる方がよっぽどましだと思います。 やがて食べ終わって、ベッドの方を見て見ると、案の定、ララが眠っていました。 ベッドの脇には、前に買ってきてあげた絵本が置いてあり、ララの頬には涙の跡がありました。 ガイ(・・・) なんだかやつれてしまったように見える顔を見つめて思います。自分のせいだ、と。 それからガイは絵本を手にとって読んでみました。 絵本の中身はこんなことが書かれていました。
ある所に、重い病気にかかった青年がいました。 その青年はその病気のせいで、もう先が長くない、と医者に言われ、生きる希望を失っていました。そんなとき、青年は自分と同じ位の歳の少女に出会いました。 その少女は青年と同じ病気にかかっていて、更に生まれつき体が弱かったので、青年よりも更に短命を言い渡されていました。しかし、その少女は毎日を笑って過ごしていました。 勉強して、暇な時は本を読んで、音楽を聴いて。そんな或る日、青年は少女に訊きました。 「どうして君はそんなに楽しそうに生きるんだい?死ぬのが分かっていて、どうしてそんなに元気に生きられるんだい?」 少女はにっこりと微笑み、そして青年にこう言いました。 「死ぬのは怖いけど、でも、だからってどうしようもないじゃない。だったら笑いたいの。毎日を俯いて、怯えて過ごしても、前を向いて、笑って過ごしても、どうせ死ぬなら、楽しいほうがいいじゃない」 その言葉を残して、少女は死にました。ひとり残された青年は、安らかに眠るその表情を見て、出来るだけ明るく生きようと決めました。それから3年間、青年は精一杯笑って、そして生きました。そして死ぬときのその表情は、少女に負けないくらい、安らかな表情で、眠りました。今も見晴らしのいい丘の上に、2人のお墓は並んでいます。その下で、今でも2人は、笑って生きた自分達の日々を思って、安らかに眠っているのです・・・
ガイは絵本を閉じて、ララを見つめました。 少女の言葉が胸に響きます。 ガイ(どうせ死ぬなら・・・笑って・・・) 人は誰でも死にます。それはガイはよく知っていました。「笑って生きる」。ガイにとって、それは特別なことでした。でも、ララと出会って、ガイは変わりました。短い間でしたが、笑って過ごした日々がありました。その日々は、ガイの他のどんな日々をまとめても敵わないぐらい、楽しくて、大切な日々でした。 眠っているララの髪の毛をそっとなでます。そしてガイはひとつの決意をします。 ガイ(どのみち・・・もう僕に人は殺せない・・・) 電話の受話器をとって、ダイヤルを回します。 プルルルル・・・プルルルル・・・ ガチャ 「なんだ、こんな時間に・・・」 ガイ「ボス、ウルフです」 ボス「おお、ウルフか、お前から電話とは、珍しいじゃないか」 ガイ「ボス、僕は――――――」 暫く沈黙が続きました。 ボス「・・・お前、それがどういうことか分かってるんだろうな?」 ガイ「ええ、しかし・・・」 ガイは一瞬躊躇って、こう言いました。 ガイ「明日の夕暮れ時」 ボス「何?」 ガイ「明日の夕暮れ時。それまで・・・待って下さい。その後はどうぞご自由に」 ボス「・・・いいだろう、だが、条件がある」 ガイ「・・・」 ボス「明日お前の家の周りに数人の見張りを置く、もし警察のとこなんかに行こうとしたらそのときは―――」 ガイ「分かっています。それだけ分かってくれればもういいんです」 ボス「フンッ、じゃあな」 ブツッ・・・ ボスは腹立たしげな声で、ガイに別れを告げました。ガイは寝る前に、これが最後のおやすみだから、と、ガイは優しく、ララの髪を撫でていました。
次の朝・・・ ガイの料理している音で、ララは目覚めました。 ガイ「あ、おはよう」 ララ「おはよう・・・」 ガイはここ暫く見せたことがないような笑顔でした。 ガイ「もうそろそろ朝ごはんができるからね」 ララ「うん・・・」 ララにはガイが無理をしているようにも見えましたが、いつまでも暗いよりは、こういう雰囲気の方がいい気もしました。 ガイ「どうぞ」 初めてララがこの家に来たときと同じように、ガイは朝ごはんを出しました。 ガイ「おいしい?」 ララ「うん・・・」 口ではそう言っても、俯いているララの表情を、暫くガイは伺っていました。やがてララが朝ごはんを食べ終わる頃、ガイは勇気を出して、「海に行かないかい?」とララに尋ねました。 ララ「えっ?」 ガイ「この近くに、夕焼けが綺麗な海があるんだけど・・・どうかな?」 ララは戸惑いました。ガイが人殺しだと知ってから、お互いに声を掛け合うことがほとんど無くなっていました。そして、ララはそれをとても辛く思っていました。 ララは自分を殺した人殺しをとても憎んでいます。でも、仮にガイが人殺しでも、あんな人殺しじゃないんだ、と思って、後からずっと後悔していました。 ガイは自分が人殺しなのを知られて、ずっと悲しんでいました。「もう僕の傍にいないほうがいい」と言いました。「僕を殺してくれ」と言いました。そして「これ以上苦しめないでくれ」とはっきりと言いました。それでもララはガイの傍にいたのでした。そして今、そのガイがそっと自分に手を差し伸べてくれています。 ララ「・・・うん。一緒に行こう」 ララはいつもの可愛い笑顔を浮かべて言いました。 ガイ「良かった・・・」 ガイは心からほっとすると同時に、一人で呟きました。 『ありがとう・・・』
2人はお昼前に家を出ました。 ガイ(黒服・・・) ガイは、自分達が見張られているのをすぐに感じ取りました。 ララ「どうしたの?早く行こうよ」 いつものララらしい、元気な声でガイをせかします。 ガイ「あ、うん」 ガイは家の鍵を閉めつつ、(無意味だな・・・)と少し笑いました。もうこの家に帰ることもないのです。 ガイ「行こう」 ララ「うんっ!」 2人は街を手を繋いで歩きました。 街を行く人々も、ガイを見張っている殺し屋も、「一体ひとりで何をしゃべってるんだろう?」と、不思議に思いました。 途中、街で一番おいしいと評判の料理店に入りました。 ガイが店員に2人分の料理を頼んだので、周りの人は少し驚きましたが、気づいたら料理が全部無くなっているのにはもっと驚きました。 ガイ「噂通りの味だったね」 ララ「うん!本当においしかった」 お互いにそう笑いあうのですが、本当はお互いに相手の作ってくれる料理の方が美味しいと思っていました。恥ずかしくて口には出しませんでしたが――― 2人は途中で色々なところに寄り道をしながら、やがて丁度夕暮れ時に、街外れの海岸にやってきました。 ララ「もぅ〜、結構遠かったじゃないのぉ〜」 頬を膨らませてそう言うララに、「ごめんごめん」と言いながら、ガイは砂浜に座りました。ララもその隣にちょこんと座ります。 ザザーン・・・ザザーン・・・ 暫く2人は黙っていました。寄せて返す波の音だけが響き続けていました。 ララ「綺麗・・・」 やがてララが不意に呟きます。 ガイ「ああ・・・」 夕暮れの光が波の上を踊り、辺りは輝いていました。 ララ「ねぇ・・・」 ガイ「なんだい?」 ララは少し間をおいて、「いいの?」と訊きました。 ガイ「・・・」 ララ「私が傍にいてもいいの?」 ガイ「・・・君は・・・君はどうしたいんだい?」 ララ「・・・私は・・・」 ララの小さな頭がガイの肩にかかります。 ララ「私は・・・ずっと・・・このまま・・・」 ガイ「・・・」 人殺しでもいい。嘘つきでもいい。傍にいたい。その思いが、確かにガイに伝わりました。 このまま、こうしてられたら、他に何もいらない。ガイは目を細めます。 しかしそれは叶わぬ夢であることを、ガイは知っていました。そして背筋に冷たいものが走るのをガイの殺し屋としての本能が嗅ぎつけました。後をつけてきた黒服達の拳銃が自分に向けられていることを、もう時間が残されていないことを、ガイは知っています。 そしてガイは言わなければなりません。もう殺し屋の指が引き金を引きかけています。 ガイ「ララ・・・」 ララ「・・・」 ガイ「君は本当に・・・悪魔なのかい?」 ララ「えっ・・・?」 ララがその質問に躊躇った瞬間、パーン!!と大きな音がして、ガイの左腕から血が吹き出ました。 ララ「!?」 ガイ「くっ!」 予め用意してあったナイフを抜いて、ガイは岩陰に隠れていた数人の殺し屋達に向かっていきます。 何がなんだか分からないララは、その場に立ち尽くしていました。 パーン!!パーン!! 何発もの銃弾を避けて、ガイは殺し屋のひとりに飛び掛り、そして・・・ グサッ!! ララ「っ!!」 ナイフの刃は鮮やかに殺し屋の首を切り裂きました。「ぎゃっ!」と声を上げて、倒れてしまいます。その男の手から、拳銃を奪って、ガイはすぐさまその銃口を殺し屋達に向けて、 パンパンパン!! 3人の男が倒れます。ララはただ呆然としていました。次々と黒い服を着た男たちを殺していくガイ。その凄まじい光景を目の前にして、ララはその場に倒れそうになってしまいました。 やがて殺し屋はあとひとりになってしまいました。ガイも殺し屋も、それぞれ岩陰に隠れています。そして・・・ ザッ!! 2人同時に岩陰から飛び出ました。そしてその時殺し屋は、ララの目の前に飛び出てきました。 一瞬、2人とも立ち尽くして微動だにしませんでした。その直後・・・ パパーン!! 2発の銃声音が同時に響き渡ります。 頭に銃弾を受けた殺し屋は、ララの目の前でバタリと倒れました。 目を見開き、血をダラダラと流して倒れている殺し屋を見て、ララは後ずさりしました。怖くて何も言えませんでした。 バタッ! また、何かが倒れる音がしました。咄嗟にララはその方向へ目をやりました。 ララ「・・・ガイ・・・ガイッ!!」 腹に銃弾を受けて、仰向けに倒れているガイがいました。 ララ「ガイっ、ガイっ!大丈夫!?」 ガイ「くっ・・・」 ガイは思わず「大丈夫」と言いそうになりました。しかしそれではいけないのです。ガイは体の痛みと、疼く心に耐えるために、歯を食いしばりました。ガイはこれから、一世一代の大嘘をつかなくてはなりません。そしてそれは、誰よりも大切なララを騙すための辛い嘘でした。ララのためだと、ガイは必死に演技をします。 ガイ「くっ・・・この傷じゃ・・・」 ララ「嘘・・・嘘!嘘だって言って!」 今にも泣き出しそうなほど悲痛な表情を浮かべるララに、ガイは痛みに耐えながら冷徹な表情で「悪魔め・・・」と言いました。 ララ「えっ・・・」 ガイ「やっぱり君は・・・悪魔だ」 ララ「!!」 ガイはよろよろと立ち上がり、そして冷たい言葉を続けます。 ガイ「君が来てから何もかもが変わってしまった・・・」 ララ「いや・・・」 ガイ「君は確かに僕を殺さなかった・・・でも僕はこうやって死んでいくんだ・・・」 ララ「違う!!そんなんじゃないもん!!」 ガイ「黙れ!!!」 ララ「っ!」 ガイ「じゃあなんで助けてくれなかったんだ?さっき君の目の前に男がいたとき、どうしてあの短剣で倒してくれなかったんだ?」 ララ「そんな・・・」 ララは信じられませんでした。自分のせいでガイが死んでしまう。言いようのない恐怖がララを縛り、ガイは右手にナイフを握り締めます。 ガイ「君はもうこの世にいるべきじゃない」 ララ「やだ・・・」 自分が殺されたあの日、自分を殺した黒い服の男の血走った目。殺し屋の目。ガイの目はその目にそっくりでした。 ガイ「殺してやる・・・」 ララ「いや・・・」 じりじりとガイがララに詰め寄ります。ララは恐怖でどうしようもありません。 ガイ「大嫌いだ・・・」 ララ「やめて・・・言わないで・・・こないで・・・」 ガイ「死ねッ!!!」 ガイは右手を一度大きく振り上げ、ナイフを振り下ろしました。 あの日と同じ、死の恐怖がララを襲い、ララは叫びました。 ララ「いやーーーーーーーーーッ!!!!」 辺りが真っ青な光に包まれました。光は一瞬で消え、恐怖に閉ざされた瞳を、ララは開けます。 ドサッと、何かがララに倒れこんできました。 『ありがとう・・・』 ララに寄りかかるようにしながら倒れて行くガイ。ガイは自らの残された僅かな力で、体を仰向けにしました。 ガイは笑っています。その胸には黒い短剣が深々と突き刺さっています。それは本能だったのでしょうか?ララは気づかないうちに短剣をガイに突き刺していました。 ララは自分の胸に手を当てました。全く傷がありません。 ガイ「よかった・・・」 ララ「ねぇ・・・これって・・・」 ガイ「これで・・・君を成仏さしてあげられるね」 苦しそうに笑うガイを見て、ララはやっと理解しました。何もかも、ガイの芝居だったのです。 ガイ「こうでもしないと・・・君はいつまでも彷徨っているだろうからね」 ララ「やだ・・・私やだよ・・・」 ガイは笑って、「見てごらん」と言いました。ララの体から光が放たれています。 ガイ「どうやら上手くいったみたいだ・・・」 ガイはやはり苦しそうに、それでもおかしくてたまらないと言いたげな笑みを浮かべています。 ララ「じゃあ・・・私・・・ガイを殺した・・・」 ガイ「いいんだ、もう・・・長くなかったから・・・」 真っ青な顔のララに、ガイは優しく声を掛けます。 ガイ「殺し屋は・・・もうやめたから・・・」 ララ「!」 ガイ「君が悲しむぐらいだったら・・・生きてても仕方がなかったしね」 ララ「・・・それだけのために・・・それだけのために死んじゃうの!?」 ガイ「それだけ?」 ガイは訊き返します。そして「それが僕の全てだよ」と言いました。 ガイ「他に何も持ってなかったんだ。親も、友達も何も」 ララ「馬鹿・・・ガイの馬鹿・・・」 ガイ「ごめんね・・・嘘つきで・・・」 その場に倒れこんで、泣き出したララの頭をくしゃくしゃと、いつものように撫でてやります。そして、それでもとまらない涙を拭ってあげようとして、ガイは苦笑しました。 ガイ「もう・・・お別れだよ・・・」 もうお互いに触れ合うことが出来なくなっていました。ガイは最後に想いを伝えました。ララと会えて本当に良かったと思っていること。そして大好きだということを。 やがて徐々に、ララの体が光に溶けていきます。 ララ「ガイ・・・私・・・怖い」 ガイ「ぐっ・・・大丈夫・・・信じて・・・」 ララ「でも・・・」 ガイ「嘘つきは・・・信じられないかな」 ララ「そんなことないよ!!」 ガイ「じゃあ信じて・・・大丈夫だよ、僕もすぐに追いつく。君の傍にいるよ」 ララ「・・・ほんと?」 ガイはゆっくりと頷きました。 ガイ「本当だよ・・・だから・・・」 ララが放つ光がどんどん強くなっていきます。 ガイ「ララ・・・僕の小悪魔さん・・・ひとつお願いがあるんだ・・・」 もう一度会える確証はどこにもありません。だから最後にガイはお願いしました。 ガイ「笑って・・・僕のために」 ララ「えっ・・・」 ガイ「君の笑顔を・・・見せて・・・」 ララは涙を拭き、それから、自分の最高の笑顔を、ガイにあげました。それからララも、ガイにお願いをしました。 ララ「お願い・・・約束して・・・もう私に嘘はつかないって。ずっと傍にいる、って」 ガイは約束は出来ない、と思いました。でも、もう2度と嘘をつこうとは思いません。 もう大分消えかかっているララの背中に、傷ついた自分の腕を回します。触れられた腕に温かさが伝わります。そっとララを抱き寄せ、そして・・・ ララ「ん・・・」 ガイ「・・・」 僅か一瞬、約束の出来ないガイは、ララに本当の想いを込めてキスをしました。 抱きしめる腕が空を掴んで、ララの姿が消えていきます。 ララ「また・・・また会おうね」 ガイ「・・・ああ」 『大好きだよ!』 遠くで声が聞こえます。辺りを包んでいた光が消え、ガイの命もまた、消えようとしていました。 ガイ(次は・・・嘘をつかなくてもいいように・・・) 消えていく意識の中で、そんなことを思います。 ガイ「傍に・・・いる」 最後にその言葉を呟き、ガイは息絶えました。
その次の日、海岸で幾つもの死体が見つかったので、街の人々は大騒ぎしました。 そしてその中には、腕利きの人殺しとして知られていた青年、ガイアードの姿もありました。 人々は口々に、「人殺しがいなくなってよかった」とか、「不幸だなぁ」とか、「天罰が下ったんだ」と、好き勝手なことを言いました。 しかし、街の誰にも分からないことがあったのです。青年は体に幾つもの傷を負っていました。しかし、その青年だけ、他の男たちと違い、安らかな、幸せそうな表情を浮かべていたのです。 なぜそんな表情だったのか、これも街の人々は口々に好き勝手なことを言いました。でも結局は誰にも分からなかったのです。
あなたのいない場所。あなたのいない時。 嘘つきで優しい青年と、小さくて可愛らしい小悪魔の少女が出会いました。 そんな2人の、誰も知らない物語・・・
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