雪窓
「雪だ」
その声に、僕は驚いた。
「ほら、雪」
その声に、僕は立ち上がった。
「きれいだね」
その声に、僕は頷く。
嗚呼。この死に掛けた星に、幾千もの結晶が降る。
嗚呼。このぼやけた窓に、流れる白球が映る。
「きれいだね」
君は、もう一度僕に言った。
「そうだね」
僕は、窓の外を眺めながらそう答えた。
本当は外など見ていなくて、見ていたのは君の横顔だったのだけれど。
君の横顔は雪窓に映えて、とても、きれいだった。
―――心の中に降り積もった雪は。 いつか、春が来ることを待っている。
1たす1
「1たす1はいくつでしょう」
唐突に、君は僕に問い掛けてきた。
君が唐突なのはいつものことなので、僕は、少し考えてから静かに答えた。
「……に」
「ぶっぶー、違いまぁす!」
僕から少し離れて、君は無邪気に笑う。
「1たす1に、答えなんか無いよ」
いっぱいに両手を広げて、君は微笑んで言う。
僕はその意味が分からず、ただ、太陽の光を浴びて輝く君を、見る。
君は、僕にまた笑った。
「1たす1は、無限大だよ。例えば、私は君に出会えて数え切れないシアワセを貰っ
た」
君は、笑う。
「ねぇ、1たす1はいくつだと思う?」
君は僕の手を握って、もう一度問い掛けた。
僕は君に答える代わりに、
無限大の気持ちのこもったキスを返した。
―――君がいる。 僕がいる。
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