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短詩小文 作者:紅羽

第4回   4
雪窓


「雪だ」

その声に、僕は驚いた。

「ほら、雪」

その声に、僕は立ち上がった。

「きれいだね」

その声に、僕は頷く。


嗚呼。この死に掛けた星に、幾千もの結晶が降る。

嗚呼。このぼやけた窓に、流れる白球が映る。


「きれいだね」

君は、もう一度僕に言った。

「そうだね」

僕は、窓の外を眺めながらそう答えた。

本当は外など見ていなくて、見ていたのは君の横顔だったのだけれど。

君の横顔は雪窓に映えて、とても、きれいだった。



























―――心の中に降り積もった雪は。
いつか、春が来ることを待っている。






















1たす1


「1たす1はいくつでしょう」

唐突に、君は僕に問い掛けてきた。

君が唐突なのはいつものことなので、僕は、少し考えてから静かに答えた。

「……に」

「ぶっぶー、違いまぁす!」

僕から少し離れて、君は無邪気に笑う。

「1たす1に、答えなんか無いよ」

いっぱいに両手を広げて、君は微笑んで言う。

僕はその意味が分からず、ただ、太陽の光を浴びて輝く君を、見る。

君は、僕にまた笑った。

「1たす1は、無限大だよ。例えば、私は君に出会えて数え切れないシアワセを貰っ

た」

君は、笑う。

「ねぇ、1たす1はいくつだと思う?」

君は僕の手を握って、もう一度問い掛けた。


僕は君に答える代わりに、

無限大の気持ちのこもったキスを返した。





























―――君がいる。
僕がいる。


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