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短詩小文 作者:紅羽

第1回   1
生まれてきては いけなかったのです
存在しては ならなかったのです
そんな命が、確かにあった

誰からも愛されることなく生まれ
誰にも声をかけられなかった人形
ただ座って窓辺を見つめる
壊れたネジ巻きフランスドーター人形

彼女を見つめてわら嘲笑うモノたち
カラスに 蝶に そしてピープル人間
彼らは決まって彼女に言った
「存在するだけ意味が無い」と

それでも彼女は信じ続けた
すべてのしがらみ柵から救い出し
自分を守ってくれるプランス王子がいると
いつか訪れるはずのしあわせ幸福だけを
窓辺に座って見つめ続けた

それでも願えば願うほど
祈りかけるほど景色は色を消して
灰に黒ずむ自身に気付き
とうとう彼女は身を投げ出した

真っ赤な炎に包まれながら
心が無いのに涙を流し
居るかも解らぬ 誰かに問う

「生まれてきては いけなかったのですか
存在しては ならなかったのですか
そんな命があったのですか ―――あったのですか」

それが私なのだとしたら
どうして私なのですか……? と、
壊れたネジ巻きフランスドーター人形
灰になるまで唄い続けた

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