それから数分後。
「今日のところはこれぐらいで勘弁してあげるわ」
「うう……………」
それはもう満足げな笑みを浮かべる姉さん。それと対照的に姉さんのセクハラから解放されたボクはというと、がっくりと肩を落とし、ただただ呆然と座り込んでいた。
「こーら『もうお嫁になんか行けません』なんて顔してるんじゃないの。条件さえ整えばすぐにでも戻れるんだから」
「条件? ちょっと待って。それじゃあこれって全部、姉さんの仕業なの」
姉さんによると、ボクが寝たあとにひっそりこっそり性別を反転させる薬を飲ませたそうで、何でそんなことをしたのか理由を尋ねると、
「仕方ないじゃない。巨乳の妹を苛めるのが夢だったんだから」
何が仕方ないんですか! そんな夢、きれいさっぱり捨ててください!
「いいから早く戻してっ!」
姉さんに詰め寄るボク。こんな姿でまなみちゃんに会うわけにはいかないんだから。
「戻してあげてもいいんだけど、それにはまなみちゃんがいないとね」
「まなみちゃんが? それってどういうこと?」
なんで男に戻るのにまなみちゃんが必要なの?
「とりあえずその話は朝ご飯食べてからにしましょう。私、お腹もうペコペコで」
「こんな状態で食べられるかぁーーーっ!」
戻れるか戻れないかの瀬戸際だっていうのに、のほほーんと食事できるヤツなんて、頭のネジが何本か抜け落ちてるんだよ、きっと。
「かなちゃんはまだ揉まれ足りないのかな?」
口調はいつもの姉さんとは思えないぐらい穏やかなんだけど、目つきといったら……はっきり言って無茶苦茶怖いです。
「い、いえ、お姉様。ボクも先程からぐーぐーとお腹が鳴っていたところです」
「うんうん、やっぱり妹にするなら巨乳で苛め甲斐があって素直な子よねー。もう一回揉んであげよっか?」
「それだけは勘弁してください」
「そう? それじゃあ、朝ご飯、朝ご飯っと」
姉さんのあとについて居間へ戻るボク。さっきはああ言ったもののこんな状態でいつも通り食べられるはずもなく、かといって残そうとすると母さんに泣かれそうになるし。この歳にして中間管理職の辛さを味わうことになったボクなのでした。
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