別々の道を歩むために。決して相容れることなどないのだから。 紫炎はそう思っていた。そして、振り返らずに立ち去った。紫炎は、シェドルトのいう、人間のせいで死ぬ動物を少しでも減らそうと、心に誓っていた。 それから、日が傾きかけたころ、紫炎は小さな門をくぐった。「流影村」。孤児の集まる施設だ。白い扉を引いて、中にはいる。小さな明るい声が響いている。 夕ご飯の用意が始まりだし、子どもたちがバタバタと駆け回る。 「ほら、早く片づけて」 元気な声を張り上げている少女が、小さな子どもたちを急かしている。 「紫炎も、ぼーっとしてないで手伝って」 不意をつかれた紫炎は、びっくりして振り向き、 「う、うん」 慌てて、少女のあとをついていった。 彼女の名前は玲凪(れいな)といった。紫炎と同い年。いつもいつも、こうしてお姉さん役をこなしている。 食事が始まってからも、紫炎はずっと考え事をしていた。シェドルトのことがきになって、食事にも手つかずになってしまっていた。その様子を玲凪だけが不思議に思い、見つめていた。 食事が終わって、片づけが終わり、紫炎は二階へ上がろうとした。その時、玲凪が紫炎に声をかけた。 「ねえ、紫炎?何かんがえごとをしてるの?」 「別に……何も」 紫炎は上の空で、一言いうだけだった。玲凪はどうにもならないというように、ため息をつき、そして先に二階へ駆け上がっていった。 紫炎はしばらく突っ立ったままでいた。それから、早足に二階に向かっていった。 二階の奥には小さな書庫があった。紫炎はたくさんの棚に向かい、本を探した。戦争に関する本。いったい何を手に取ればいいのか分からないくらい、たくさんの本が並べてあった。核爆弾について。戦車や毒ガスについて。 ひとつひとつ題名を見て、探していく。奥にいくにつれて、誇りをかぶった物が増えていく。そこで、さいごに、見つけた。 埃をたっぷりかぶった本。手にとって、少し埃を落としてみる。「戦争の中の動物たち」。そして、もう一度きれいに埃を落とした。「作:東光作」。 紫炎は本を片手に、自分の部屋駆け込んだ。
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