東京都内の“光山(みつやま)小学校”。 5年3組の教室ではいつもどおり生徒達がわいわいザワザワ騒いでいた。 その中で机につっぷして熟睡している少女――時野 連(ときの れん)。 連は常にボーっとしててマイペースで面倒くさがり。 だから騒いだりはしゃいだりするのがキライで、いつも寝てる。(そんな小学5年生、他にいるだろうか?) でも、自己中とかそんなのではない。むしろ逆で、優しくて友達思い。正義感も強くて、相手がどれだけ偉い人であろうと、違うことは違うとハッキリ言う。 そして何より、連には天才的な推理力がある。前回起きた『おくりもの事件』のトリックを見抜いたのも連一人。 「連ちゃん!もうすぐ授業始まるよ?」 「・・・・・ン〜〜〜・・・・・・」 連を慕い、クラスメイトなのに敬語を使う少女――青山 緑(あおやま みどり)。連と同じく5年3組の生徒。 黒髪を三つ編にして眼鏡をかけてる。根っからの優等生タイプ。 堂々と教室で寝れる連とは反対に、緑はまじめで几帳面で、連のような度胸がない。 内気で恥ずかしがりや。だからこそ、幼馴染の連にも敬語を使う。 そんな緑を連は友達だと思ってる。だから、緑がいじめられてたら連が守るタイプ。(幼稚園児のときに緑はいじめられてて、連が助けた)
「連ちゃん、お昼買いに行きません?」 「うん」 この小学校は変わってて、地下があってそこに売店がある。普通の小学校は給食だが、連たちの学校は弁当を持参するか、売店で買うか。 そして、そこで買った食べ物をどこで食べてもよい。教室で食べてもいいし運動場の木陰で食べても良い。自由なのだ。 ほかにも、この小学校は、部活をしたい生徒はすればいいししたくなければ帰ってもいい。いろいろな行事があったり、とにかくこの小学校は自由だ。
*************************** 「エ〜〜〜ンっ、わっかんなぁ〜〜〜〜〜ぃ!!」 甘えた声で、半泣き状態で叫ぶ少女――奈美(なみ)。連のクラスメイトだが、連と親しくない――というよりも話したことがない。 「どうしたぁ?奈美」 「悦子(えつこ)ぉ!これわかるぅ?この雑誌の暗号!正解すると賞品がもらえるの!『GNFWYXEQ゛』って」 「『GNFWYXEQ゛』〜〜?えぇ〜〜?わっかんなぁ〜〜〜い!」 売店のところで奈美と悦子が話し合っていた。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 連はその様子をじっと見てた。 (フゥ・・・・) 「・・・・緑、買った?」 「あ、はいっ!またあそこで食べましょう♪」 「うん」 そして、連と緑が奈美と悦子とすれ違うとき・・・・――――。
「キーボード」
「・・・・・・・・・・・・・え・・・・・・・・・・・・?キーボード?」 奈美は驚いて目を見開く。 「・・・・??・・・・・・・・あっ!」 悦子は何かを思い出した。 「キーボードのひらがな!!!!」 「あたし、家帰ったら毎日パソコンやってるからキーボードとか全部わかって・・・、キーボードにはひらがなも書いてるんだよ!」 「確かに・・・・・!あっ!!『G』は『き』。『N』は『み』!!あっ、そういうことぉ!!『きみはてんさいだ』かぁ!!!」 「すごい!!奈美よくわかったね!」 「えっ、いや、違うの!あっ、ありが・・・・・・・・・あれ?」 奈美が後ろを振り返っても誰もいなかった。
声の主は連。すれ違うときに、奈美に聞こえるようにつぶやいた。 連は毎日パソコンをやってるからキーボードに何がか書かれてるか覚えてた。 たとえ覚えていなくても、こういう暗号は基本中の基本だから、連にとっては簡単なものだった。
「・・・・・ヘェ・・・時野・・・腕上げたじゃんか」 そうつぶやく少年。 「よしっ!決めた!」 そういい、少年は連のほうへ走った・・・・・。
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