「んぁー!!ゲホゲホッ、煙たいな〜〜〜!」 「仕方ないですよ、50年間誰もいなかったんですもの」 「・・・50年間・・・ずっとここにいたわけだ」 《ハイ・・・・・》 「・・・・見つかるといいね」 《ハイ・・・・!!》
そして、五人(?)は紙を見直した。
『9 36 22 14 16 4 2 33 7 11 (5) 26 44 37 36』
「でもさぁ、この数字何?後なんで数字にカッコがあるの?」 暁美が途方にくれたように言う。 「数字って事は、ひらがなに変えるんじゃないでしょうか?」 緑がさりげなく意見する。 「でもよぉ、アルファベットは26文字だし韓国文字は24字だし・・・こん中で一番大きいのは44だから、ひらがなじゃねーか?」 「アンタ・・・・授業脱線させるくせにどーしてそんな事知ってるのよ・・・」 「じーちゃんに教えてもらったんだよ!」 「アンタのおじいさん何してる人!?」
《クスクスクスッ・・・・・・・・・・面白イ・・・仲イインデスネ・・・・》 夕菜は楽しかった。 病弱でずっと外に出られ無かったから・・・・。
「・・・・ひらがな・・・・・ねぇ・・・・・・」
――――50年前――――
「・・・・・・・・・・・・・・夕菜ー」 《ハイ》 「“ヨタカ”って日本人?」 《アッ、ハイ。日本ニ住ム富豪様デシタ》 「・・・・日本人か・・・・で、50年前・・・・・、緑」 「あっ、はい」 「“いろは”わかる?」 「塚田君ならわかると思うんですが・・・いろははよく知らないです」 「・・・・・・・・・夕菜、“いろは”わかる」 《ワカリマス!ズット病気デヨタカニ字ヲ教ワッテマシタカラ・・・》 「・・・・・・・・・・50年前だったら、ひらがなじゃなくていろはだと思う」 「何?いろはって!!」 「あたしもよく知らないけど・・・昔は“ひらがな”じゃなくて“いろは”だってお父さん言ってたから」 「ヘー!!すごいね!」
いろはを数字に直すと。
1(い) 2(ろ) 3(は) 4(に) 5(ほ) 6(へ) 7(と) 8(ち) 9(り) 10(ぬ) 11(る) 12(を) 13(わ) 14(か) 15(よ) 16(た) 17(れ) 18(そ) 19(つ) 20(ね) 21(な) 22(ら) 23(む) 24(う) 25(ゐ) 26(の) 27(お) 28(く) 29(や)30(ま) 31(け) 32(ふ) 33(こ) 34(え) 35(て) 36(あ) 37(さ) 38(き) 39(ゆ) 40(め) 41(み) 42(し) 43(ゑ) 44(ひ) 45(も) 46(せ) 47(す) 48(ん)
そして、()は濁点かもしくは小文字だ。
なので、この紙に当てはめると
『り あ ら か た に ろ こ と る ぼ の ひ さ あ』
「りあ・・・らかた??何これぇ!!」 「いろはじゃないのか!?」 「・・・・・・・・・・・・・・・」
“なんで逆なの?” “昔は、右から読んだそうです”
暁美と緑のさっきの会話。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・緑」 「ハイ」 「昔は、どっちから読むんだっけ?」 「えっと、右から・・・・・・・あっ!!じゃあ、コレも右から?」 右から読むと、 『あさひのぼるところにたからあり』
「あさひ・・・朝日だ!じゃあ、昇る所に宝ありってことか!!」 明が感心したように言う。 《スゴイ・・・!朝日昇ル所・・・ナンテ・・・・・・・・・アッ!!!展望台・・・上ニ、梯子ヲ昇ッタ所ニ、鮮ヤカナ朝日ガ見エル所ガアリマス・・・・・・!!!》 「じゃあ、そこだね」 《ハイ・・・・・・・!!!》
「そこまでだ」
《!!!!!!!!!!!》 一同が振り向く。
さっきの気のよさそうな老人が、銃を四人に向けて嫌らしい笑みを浮かべていた。 「あっ、じじいさっきの!!」 「良くぞ探し当ててくれた、褒めてやろう。まさかいろはだったとはな・・・・」
《黒川(くろかわ)サン・・・・・・!?》 夕菜が驚いたように言う。 「黒川?」 《ヨタカト同ジデ執事ダッタ、黒川 吉之助(くろかわ きちのすけ)サンデス・・・!!!スッカリ歳ヲ取リマシタガ、泣キボクロハカワッテマセン・・・・!!!》
「何をゴチャゴチャ話しているか知らないが・・・・・・財宝は私がもらう」 黒川には、夕菜の姿は見えていない。 「さぁ、展望台まで来て貰おうか。殺すのはその後だ。心配するな、四人仲良くあの世へ送ってあげるからねぇ・・・・」
*************************** 展望台へ続く梯子。 「おっと、逃げることは許されない・・・・逃げようとするならすかさず射殺だ。財宝は私のものだ・・・・・・!!!!」 狂ったように黒川は梯子を昇る。 「・・・ぅっ、死にたくないよぉ・・・・・!!!!」 「・・・・・・・・・・・・・藤森・・・・」 「・・・・ッ、ごめん、ごめんね?ごめんね!!!藤堂、時野さん、青山さん・・・・ごめんね!!!私が強引に誘ったから・・・・ごめんなさい!!!!」 暁美が泣きじゃくりながら謝る。 「何言ってんだよ!!!お前のせいじゃねーって!!!心配すんな!!」 「でっ・・・・・でも・・・・・」 「誰もお前を恨んでねーよ!!!ついてきた俺らも同罪だ!!」 「そうですよ、藤森さんだけが悪いんじゃないんです」 「・・・・・・・・・・・・死なせないから」 「えっ?」 「あんな奴に殺されていいわけないじゃん・・・・・・・死なせないよ」
「ハァッ、ハァッ、宝・・・・・宝があるのか・・・・・!!!宝ァあああぁぁぁぁあああ!!!!」
【ギイッ・・・・・・・・・・・・!!!!】
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!???」
見えたのは、金銀や財宝などではなく
景色。
「なっ・・・!?バ、バカな!!!よたかの残した財宝は・・・・どこだぁああぁ!!??」 「・・・・・・・・・あるわけないじゃん」 「なっ!!??」 「ここから見る景色が、どんな財宝よりもキレイだから・・・夕菜に見てほしかったんだよ。家に閉じこもってばかりじゃ見えないけど、ちょっとだけ外を見れば、どんな財宝よりも大きくてキレイな財宝があるんだよ・・・・・・・・・・アンタみたいに、金に目がくらんだ亡者には一生わかんないけどね」 「クソッ、クソクソクソオオオオオオ!!!!!!!!何のために、何のためにあの一家を殺したと!!!!!」
《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・エ?》
「・・・・やっぱりアンタだったんだ。50年前の放火事件。この屋敷焼いたの・・・あんただったんだ」 「ああ、そうさ!!!財宝、財宝、財宝だ!!!一家を殺せば財宝が一人じめ出来る!!なのにあの夫婦はよたかに財宝を預けやがった!だからよたかを殺そうとしたさ。だが、よたかがあのお嬢様に預けたと知ったから、お嬢様を殺してずっと探してたのさ!!!」 《ク・・・・・黒川サン・・・・ヒドイ・・・・》
“モット生キタカッタナァッテ・・・・・生キテ友達ヲ作リタカッタナァッテ・・・・生キテヨタカニマタ会イタカッタナッテ・・・・死ンデカラズット思ッテマシタ”
夕菜の声が連の頭の中で蘇る。
「・・・・・・・・・・・・・・・そんな理由で殺したんだ、夕菜を」 「アア!?・・・お前、何でお嬢様の名前を知ってんだ・・・」
「夕菜を・・・・アンタの欲望のために殺したんだ。金が欲しくて殺したんだ・・・夕菜は・・・・もっと生きたかったんだよ。生きて友達を作りたかったんだよ。生きて生きてヨタカって言う人に会いたかったんだよ・・・・アンタが全部壊したんだ・・・。命は、自分のために奪っていいもんじゃないんだよ」
犯罪者にのみ見せる鋭い目で黒川を睨む連。
「わ、わっ、訳のわからねぇ事言いやがって、ガキがぁ!!!!」
【ドギュン!!!ドギュン!!!!ドギュン!!!!!!】
黒川が発砲した。
「キャアアアアアア!!!」 「連ちゃん!!」 「オイ!!!!!!」
逃げることなく連が睨んでいると―――――
【スゥッ・・・・・・・・・・・・・パチン!!パチン!!!】
弾が、消えた。 いや―――夕菜の霊が、消したのだ。 「な・・・・・・!?」 《・・・・・・・・・黒川サン・・・・・・・・》 「!!!!お、お嬢様!?」 やっと、黒川にも夕菜の姿が見えるようになった。 《黒川サン・・・・アナタダッタンデスネ・・・・・・・・私・・・モット生キタカッタ・・・ヨタカハ、私ニ生キル喜ビヲクレマシタ・・・・・・・ヨタカハ欲張リナンカジャナク、オ金ヨリモ大切ナ物ヲ知ッテイテ・・・・・・・・・アナタニハ、ワカラナイデショウネ・・・》 「あ、あ、アアアア・・・!!お、お嬢様!!!許してくれ、許してくれぇ!!!」 流石に、霊を見ておじげづいたのだろう。 《黒川サン・・・・罪ヲ償ッテ・・・・・・・オ願イ、罪ヲ償ッテ・・・》
「・・・・・・フゥ・・・・・・・・・・」 ふと、景色を見る。 「・・・・夕菜」 《ハイ》 「景色・・・すごいキレイだよ。朝日じゃないけど・・・・・・夏の夜の景色って、こんなにもキレイだったんだ・・・・」 《ソウデスネ、連チャン・・・・・・・・・・・・・イツノ時代モ、人ハ明ルイ事ヲ望ミマスカラ・・・・・誰モ、誰モ住ミニクイ環境ナンテ望ンデマセンモノ・・・・・ソウデショウ?ヨタカ・・・・・・》
*************************
その後、黒川は逮捕された。 放火についてはもう時効だが、発砲したという件と住居不法侵入罪に問われたのだ。
《アリガトウ・・・・・コレデ、成仏デキマス・・・・・・・》 「・・・・・・・・・うん。・・・夕菜」 《ハイ》 「あたし達・・・・・・友達だから」 《ハイッ!!!アリガトウ・・・・アリガトウ・・・・!!》 「そうだ、夕菜ちゃん!!!俺達友達だからな!!!」 「夕菜ちゃんの、初めての友達だよ!!!」 「夕菜さん、生まれ変わったら、また友達になりましょう!!!」 「・・・・・・・・・じゃあね」
《アリガトウ・・・・・アリガトウ》 夕菜の目から再び涙。 フフッと微笑んで流した涙は、とてもキレイだった。
【スゥッ・・・・・・】 夕菜の姿は消えた。成仏したのだろう。
【ストン!!!】 「あ・・・あははっ、腰が抜けて立てないやァ・・・・あたし達、よく考えたらすごい事してたんだね・・・・・霊と話してたんだもんね・・・・ハハハッ、今頃になって立てなくなっちゃった・・・・」 「ったく、しょーがねーな!!!じゃあおぶってってやるよ!」 「ハァ!?」 「もう夜明けだし、コッソリ部屋に入ればいいだろ」 「でも・・・・・、えぇええぇ!!??」
【ヒョイ!!!】 驚く暁美を尻目に、明は暁美をおぶった。 「・・・・・・・・・・・・ありがと」 「・・・・あのさー、藤森」 「何?」 「お前・・・・・・・・・・・重い」 「バカァッ!!!!!!」
「・・・・・・じゃあ、帰りましょう」 「うん」 「あっ・・・・・・」 夜明けの朝日が昇る。 「・・・・・・朝日、キレイだね」 「ハイ・・・・」 「んー・・・・・じゃあ、帰ろうか」 「ハイッ!!!」
ふと、夕菜の声が聞こえた気がした。
《アリガトウ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》
番外編その1【一夏の友情】終わり
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