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暗号館の秘宝 作者:りみ

第19回         〜   後編
「んぁー!!ゲホゲホッ、煙たいな〜〜〜!」
「仕方ないですよ、50年間誰もいなかったんですもの」
「・・・50年間・・・ずっとここにいたわけだ」
《ハイ・・・・・》
「・・・・見つかるといいね」
《ハイ・・・・!!》

そして、五人(?)は紙を見直した。

『9 36 22 14 16  4 2 33 7 11 (5) 26 44 37 36』

「でもさぁ、この数字何?後なんで数字にカッコがあるの?」
暁美が途方にくれたように言う。
「数字って事は、ひらがなに変えるんじゃないでしょうか?」
緑がさりげなく意見する。
「でもよぉ、アルファベットは26文字だし韓国文字は24字だし・・・こん中で一番大きいのは44だから、ひらがなじゃねーか?」
「アンタ・・・・授業脱線させるくせにどーしてそんな事知ってるのよ・・・」
「じーちゃんに教えてもらったんだよ!」
「アンタのおじいさん何してる人!?」

《クスクスクスッ・・・・・・・・・・面白イ・・・仲イインデスネ・・・・》
夕菜は楽しかった。
病弱でずっと外に出られ無かったから・・・・。

「・・・・ひらがな・・・・・ねぇ・・・・・・」



      ――――50年前――――



「・・・・・・・・・・・・・・夕菜ー」
《ハイ》
「“ヨタカ”って日本人?」
《アッ、ハイ。日本ニ住ム富豪様デシタ》
「・・・・日本人か・・・・で、50年前・・・・・、緑」
「あっ、はい」
「“いろは”わかる?」
「塚田君ならわかると思うんですが・・・いろははよく知らないです」
「・・・・・・・・・夕菜、“いろは”わかる」
《ワカリマス!ズット病気デヨタカニ字ヲ教ワッテマシタカラ・・・》
「・・・・・・・・・・50年前だったら、ひらがなじゃなくていろはだと思う」
「何?いろはって!!」
「あたしもよく知らないけど・・・昔は“ひらがな”じゃなくて“いろは”だってお父さん言ってたから」
「ヘー!!すごいね!」




いろはを数字に直すと。

1(い) 2(ろ) 3(は) 4(に) 5(ほ) 6(へ) 7(と)
8(ち) 9(り) 10(ぬ) 11(る) 12(を) 13(わ) 
14(か) 15(よ) 16(た) 17(れ) 18(そ) 19(つ)
20(ね) 21(な) 22(ら) 23(む) 24(う) 25(ゐ)
26(の) 27(お) 28(く) 29(や)30(ま) 31(け) 
32(ふ) 33(こ) 34(え) 35(て) 36(あ) 37(さ)
38(き) 39(ゆ) 40(め) 41(み) 42(し) 43(ゑ)
44(ひ) 45(も) 46(せ) 47(す) 48(ん)

そして、()は濁点かもしくは小文字だ。

なので、この紙に当てはめると


『り あ ら か た に ろ こ と る ぼ の ひ さ あ』


「りあ・・・らかた??何これぇ!!」
「いろはじゃないのか!?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」



“なんで逆なの?”
“昔は、右から読んだそうです”


暁美と緑のさっきの会話。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・緑」
「ハイ」
「昔は、どっちから読むんだっけ?」
「えっと、右から・・・・・・・あっ!!じゃあ、コレも右から?」
右から読むと、
『あさひのぼるところにたからあり』


「あさひ・・・朝日だ!じゃあ、昇る所に宝ありってことか!!」
明が感心したように言う。
《スゴイ・・・!朝日昇ル所・・・ナンテ・・・・・・・・・アッ!!!展望台・・・上ニ、梯子ヲ昇ッタ所ニ、鮮ヤカナ朝日ガ見エル所ガアリマス・・・・・・!!!》
「じゃあ、そこだね」
《ハイ・・・・・・・!!!》







「そこまでだ」









《!!!!!!!!!!!》
一同が振り向く。

さっきの気のよさそうな老人が、銃を四人に向けて嫌らしい笑みを浮かべていた。
「あっ、じじいさっきの!!」
「良くぞ探し当ててくれた、褒めてやろう。まさかいろはだったとはな・・・・」

《黒川(くろかわ)サン・・・・・・!?》
夕菜が驚いたように言う。
「黒川?」
《ヨタカト同ジデ執事ダッタ、黒川 吉之助(くろかわ きちのすけ)サンデス・・・!!!スッカリ歳ヲ取リマシタガ、泣キボクロハカワッテマセン・・・・!!!》


「何をゴチャゴチャ話しているか知らないが・・・・・・財宝は私がもらう」
黒川には、夕菜の姿は見えていない。
「さぁ、展望台まで来て貰おうか。殺すのはその後だ。心配するな、四人仲良くあの世へ送ってあげるからねぇ・・・・」

***************************
展望台へ続く梯子。
「おっと、逃げることは許されない・・・・逃げようとするならすかさず射殺だ。財宝は私のものだ・・・・・・!!!!」
狂ったように黒川は梯子を昇る。
「・・・ぅっ、死にたくないよぉ・・・・・!!!!」
「・・・・・・・・・・・・・藤森・・・・」
「・・・・ッ、ごめん、ごめんね?ごめんね!!!藤堂、時野さん、青山さん・・・・ごめんね!!!私が強引に誘ったから・・・・ごめんなさい!!!!」
暁美が泣きじゃくりながら謝る。
「何言ってんだよ!!!お前のせいじゃねーって!!!心配すんな!!」
「でっ・・・・・でも・・・・・」
「誰もお前を恨んでねーよ!!!ついてきた俺らも同罪だ!!」
「そうですよ、藤森さんだけが悪いんじゃないんです」
「・・・・・・・・・・・・死なせないから」
「えっ?」
「あんな奴に殺されていいわけないじゃん・・・・・・・死なせないよ」



「ハァッ、ハァッ、宝・・・・・宝があるのか・・・・・!!!宝ァあああぁぁぁぁあああ!!!!」



【ギイッ・・・・・・・・・・・・!!!!】




「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!???」



見えたのは、金銀や財宝などではなく













景色。

「なっ・・・!?バ、バカな!!!よたかの残した財宝は・・・・どこだぁああぁ!!??」
「・・・・・・・・・あるわけないじゃん」
「なっ!!??」
「ここから見る景色が、どんな財宝よりもキレイだから・・・夕菜に見てほしかったんだよ。家に閉じこもってばかりじゃ見えないけど、ちょっとだけ外を見れば、どんな財宝よりも大きくてキレイな財宝があるんだよ・・・・・・・・・・アンタみたいに、金に目がくらんだ亡者には一生わかんないけどね」
「クソッ、クソクソクソオオオオオオ!!!!!!!!何のために、何のためにあの一家を殺したと!!!!!」

《・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・エ?》

「・・・・やっぱりアンタだったんだ。50年前の放火事件。この屋敷焼いたの・・・あんただったんだ」
「ああ、そうさ!!!財宝、財宝、財宝だ!!!一家を殺せば財宝が一人じめ出来る!!なのにあの夫婦はよたかに財宝を預けやがった!だからよたかを殺そうとしたさ。だが、よたかがあのお嬢様に預けたと知ったから、お嬢様を殺してずっと探してたのさ!!!」
《ク・・・・・黒川サン・・・・ヒドイ・・・・》



“モット生キタカッタナァッテ・・・・・生キテ友達ヲ作リタカッタナァッテ・・・・生キテヨタカニマタ会イタカッタナッテ・・・・死ンデカラズット思ッテマシタ”


夕菜の声が連の頭の中で蘇る。


「・・・・・・・・・・・・・・・そんな理由で殺したんだ、夕菜を」
「アア!?・・・お前、何でお嬢様の名前を知ってんだ・・・」

「夕菜を・・・・アンタの欲望のために殺したんだ。金が欲しくて殺したんだ・・・夕菜は・・・・もっと生きたかったんだよ。生きて友達を作りたかったんだよ。生きて生きてヨタカって言う人に会いたかったんだよ・・・・アンタが全部壊したんだ・・・。命は、自分のために奪っていいもんじゃないんだよ」

犯罪者にのみ見せる鋭い目で黒川を睨む連。


「わ、わっ、訳のわからねぇ事言いやがって、ガキがぁ!!!!」




【ドギュン!!!ドギュン!!!!ドギュン!!!!!!】



黒川が発砲した。

「キャアアアアアア!!!」
「連ちゃん!!」
「オイ!!!!!!」

逃げることなく連が睨んでいると―――――



【スゥッ・・・・・・・・・・・・・パチン!!パチン!!!】





弾が、消えた。
いや―――夕菜の霊が、消したのだ。
「な・・・・・・!?」
《・・・・・・・・・黒川サン・・・・・・・・》
「!!!!お、お嬢様!?」
やっと、黒川にも夕菜の姿が見えるようになった。
《黒川サン・・・・アナタダッタンデスネ・・・・・・・・私・・・モット生キタカッタ・・・ヨタカハ、私ニ生キル喜ビヲクレマシタ・・・・・・・ヨタカハ欲張リナンカジャナク、オ金ヨリモ大切ナ物ヲ知ッテイテ・・・・・・・・・アナタニハ、ワカラナイデショウネ・・・》
「あ、あ、アアアア・・・!!お、お嬢様!!!許してくれ、許してくれぇ!!!」
流石に、霊を見ておじげづいたのだろう。
《黒川サン・・・・罪ヲ償ッテ・・・・・・・オ願イ、罪ヲ償ッテ・・・》


「・・・・・・フゥ・・・・・・・・・・」
ふと、景色を見る。
「・・・・夕菜」
《ハイ》
「景色・・・すごいキレイだよ。朝日じゃないけど・・・・・・夏の夜の景色って、こんなにもキレイだったんだ・・・・」
《ソウデスネ、連チャン・・・・・・・・・・・・・イツノ時代モ、人ハ明ルイ事ヲ望ミマスカラ・・・・・誰モ、誰モ住ミニクイ環境ナンテ望ンデマセンモノ・・・・・ソウデショウ?ヨタカ・・・・・・》

*************************

その後、黒川は逮捕された。
放火についてはもう時効だが、発砲したという件と住居不法侵入罪に問われたのだ。


《アリガトウ・・・・・コレデ、成仏デキマス・・・・・・・》
「・・・・・・・・・うん。・・・夕菜」
《ハイ》
「あたし達・・・・・・友達だから」
《ハイッ!!!アリガトウ・・・・アリガトウ・・・・!!》
「そうだ、夕菜ちゃん!!!俺達友達だからな!!!」
「夕菜ちゃんの、初めての友達だよ!!!」
「夕菜さん、生まれ変わったら、また友達になりましょう!!!」
「・・・・・・・・・じゃあね」

《アリガトウ・・・・・アリガトウ》
夕菜の目から再び涙。
フフッと微笑んで流した涙は、とてもキレイだった。


【スゥッ・・・・・・】
夕菜の姿は消えた。成仏したのだろう。




【ストン!!!】
「あ・・・あははっ、腰が抜けて立てないやァ・・・・あたし達、よく考えたらすごい事してたんだね・・・・・霊と話してたんだもんね・・・・ハハハッ、今頃になって立てなくなっちゃった・・・・」
「ったく、しょーがねーな!!!じゃあおぶってってやるよ!」
「ハァ!?」
「もう夜明けだし、コッソリ部屋に入ればいいだろ」
「でも・・・・・、えぇええぇ!!??」

【ヒョイ!!!】
驚く暁美を尻目に、明は暁美をおぶった。
「・・・・・・・・・・・・ありがと」
「・・・・あのさー、藤森」
「何?」
「お前・・・・・・・・・・・重い」
「バカァッ!!!!!!」




「・・・・・・じゃあ、帰りましょう」
「うん」
「あっ・・・・・・」
夜明けの朝日が昇る。
「・・・・・・朝日、キレイだね」
「ハイ・・・・」
「んー・・・・・じゃあ、帰ろうか」
「ハイッ!!!」



ふと、夕菜の声が聞こえた気がした。

《アリガトウ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・》




            番外編その1【一夏の友情】終わり

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Novel Editor by BS CGI Rental
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