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暗号館の秘宝 作者:りみ

第18回         〜   中編
「おーい、こっちでいいのかー?」
「知らない」
「知らないって・・・・時野どこ向かってんだ?」
「さぁ・・・立ってても仕方ないじゃん。どっかから降りれるかもだし」
「お前マジで何考えてるかわかんねぇ」
「・・・・・本?」
懐中電灯が照らしたのは、古びてボロボロになった本。

『うろたもも』『りたがのもりとけた』と書いてある。
「これ、桃太郎と竹取物語でしょうか?」
「何で逆なの?」
「昔は、右から読んだそうです」
「へー!!青山さん詳しいんだね!」


【キィッ・・・・・・】

連が、ある部屋の扉を開ける。
別に理由があってこの部屋を選んだわけではない。テキトウに、どこかに入ろうと考えたのだ。





《・・・・・・アナタ達・・・・・・・ダレ・・・・・・・・?》






「!!!!!!!イヤアアアア!!!」
「キャッ、キャアア!!??」
「でっ、で、出た!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・誰?」



少女が四人の前に現れる。
その少女は、青白く透けていた。



霊だ。



《・・・・私ハ・・・・・夕菜(ゆうな)・・・・・・デス・・・・・・・・》
「フーン・・・・死んだの?」
《ハイ・・・・50年前ニ・・・・・火事デ・・・苦シミナガラ・・・死ニマシタ・・・・》
「何で成仏できてないの?・・・未練があるんだ・・・?」
《ハイ・・・・・・・・・・未練・・・アリマス・・・・・・私・・・・探シ物・・・探シテル・・・・・》
「探し物?」
《遠イ所ヘ行ッチャッタ・・・・執事ノ・・・・“ヨタカ”ガクレタ地図・・・コノ屋敷ノ・・・ドコカニ・・・・・・・宝ヲ隠シタ・・・・・・・・・・・ダカラ・・・・・》


霊と、生身の人間。
普通じゃありえないことだが、このシリーズでは成立する。
すなわち、50年前に死んだ少女と今生きている少女が会話していても何の問題もないのだ。
「宝・・・・か・・・・。・・・どーする?」
「どーするも何もっ!!時野さん怖くないの!!??」
「何にもしないよ。むやみに怖がるから向こうも警戒するんだよ。・・・・向こうを信じればいいんだよ」
「・・・・・わかった」
「えっと、夕菜さん?」
「わ、結構可愛い!!」
「バカッ!!!」
その少女の霊はかわいらしい容姿をしていて、確かに昔話に出てくるお姫様のような感じだ。
《皆サンノ・・・・名前・・・・教エテ・・・・クダサイ》
「OK〜アタシは藤森暁美だよぉ!!」
「青山緑です」
「おれ、藤堂明!!光山小学校5年3組!!」
「・・・・・・・時野連」
《アリガトウ・・・・・・・・・“ヨタカ”ハ・・・・一番大好キナ・・・執事デシタ・・・体大キクテ・・・・・優シクテ・・・父ヤ母ガ仕事デ居ナイ時・・・イツモ側ニイタノハ、ヨタカデシタ・・・・・デモ、ヨタカハ外国ニ行ッテシマッテ・・・・・・・ソノ時ニ、ヨタカハ地図ヲクレタンデス。『大事ナ宝物ヲ夕菜様ニ預ケマス。ドウカ探シダシテクダサイ』と・・・・・ダカラ、探シテタンデス。ソウシタラ・・・・・急ニ火ガ回リダシテ・・・扉ガ燃エテ・・・黒イ煙ガ出テ・・・逃ゲヨウトシテモ・・・・逃ゲタクナカッタ・・・・・ヨタカガクレタ宝ダケハ・・・・・・・探シダシタカッタ・・・デモ、途中デ意識ガ消エテ・・・・気ガ付イタラ・・・・死ンデタ・・・・・・・・・・》
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ふーん・・・・・」
「“ヨタカ”って言う人からの地図は?」
《アリマス・・・・・・・・》

夕菜が差し出したのは、古びて四隅が焦げボロボロになった白い紙。

『9 36 22 14 16  4 2 33 7 11 (5) 26 44 37 36』

「数字・・・?」
「しかも5のところにカッコがついてるぞ!」
「何これ・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・」


《私・・・・・・ワカラナクテ・・・ダカラ、ヨタカハドコカヘ隠シタンダト思ッテ探シタンデス・・・・・私コレ解ケナカッタカラ・・・・・・・・・・・・・・探シテ・・・
逃ゲラレナクテ・・・・・・》
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あのさぁ」
《ハイ?》
「この屋敷・・・誰かが出入りしてるの?」
《ソレガ・・・・・・・・・・・誰カイルミタイデ・・・・デモ私、ココカラ離レラレナイ・・・・ココニ縛ラレテル・・・・・・・・・・・》
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・行こう」
《エ?》
「その“ヨタカ”って人が夕菜に探して欲しかったんなら・・・夕菜が歩かなきゃダメじゃん」
《デモ・・・・ココニ・・・縛ラレテテ・・・・・・・・・・・・》
「・・・・歩こうって思えば歩けるんだよ。歩いて、探し出して、ゴールまで行こうって思ったら・・・歩けるから。・・・一人じゃ無理でも支えてあげるから」
《・・・・・・・・!》
「そーそー!!!ホラッ、夕菜ちゃん!!手ぇひいてってやるから!!」
「カチンッ!!藤堂、可愛い子には目がないんだから!!!第一霊の手なんかひけるの!!??」
「あ、そっか。夕菜ちゃん60年前に死んでたっけ」
「んもう!!!」
《クスクスクスッ・・・・・》
哀しい表情だった夕菜が笑った。
《面白イ・・・・私ハ・・・病弱デ、外ニデラレナカッタカラ・・・・・同年代ノ・・・子タチト話シタ事ガナクテ・・・・・・・・ダカラ今ハ楽シイ・・・・・・》
「・・・・・・うん。じゃあ友達って言うことでいいじゃん」
《友達・・・・・・・・・・・?アリガトウ・・・・・!!!アリガトウ・・・・!!!ッ・・・・・》
夕菜の目から、水が流れた。


涙。

「・・・・?夕菜?」
《ゴメンナサイ、涙ガ・・・・・モット生キタカッタナァッテ・・・・・生キテ友達ヲ作リタカッタナァッテ・・・・生キテヨタカニマタ会イタカッタナッテ・・・・死ンデカラズット思ッテマシタ。デモ・・・・・・・・・・アナタ達ノ様ナ友達ガモテタカラ・・・初メテ、ヨカッタト思イマシタ・・・》
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

こうして、夕菜と共に連達は暗号を解読することになった。
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【ガサッ、ゴソッ、ゴソ・・・・】
「ったく、50年間探しててどうしてないんだ・・・・・!!!よたかが隠した宝!!調べはついている。よたかは御曹司で財宝を持っている。そしてソレをあの小娘に預けたこと・・・・!!!・・・・ったく、50年は長い長い!!・・・オ?」
その人物は、四人の少年少女が歩いていくのを見た。


いや、正確には夕菜と言う霊がいるが、この人物には見えない。


「・・・・・・ホゥ・・・・・・・・・・逃してなるか・・・・・・・・・・・ヒェッヒェッヒェ・・・・・」


この特徴的な笑い方。
そして、左目の下に―――――泣きボクロ。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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