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暗号館の秘宝 作者:りみ

第17回   番外編その1【一夏の友情】前編
《無いよぉ、無いよぉ・・・・・・・・・・・無いよぉ・・・・・・》
燃え盛る炎。その中で少女は一人、逃げることも無く廊下をウロウロしている。
《無いよぉ、無いよぉ、無いよぉ・・・・・ケホッ・・・・ゲホゲホッ・・・・》
少女は必死に探す。周りは炎の海で煙もたくさん吸っている。もう酸素は無い。それでも少女は何かを探す。
《無い・・・無い・・・・・・・な・・・・・・・・・・い・・・・・ゴホッ・・・・・・・・》


【ドサッ・・・・・・】


少女はそのまま絶命した。

*************************

ここはとある神社。
今は夏休みの半ば。
光山小学校の5年3組達が集まりアイスを食べながら怪談話をしている。
「トイレの花子さんはね、お母さんの虐待から逃れるために、学校の3番目のトイレに逃げ込んだの・・・・・・で、そこで変質者に殺されて・・・それ以来、夜中になるとずっとずっとトイレの中で泣いているんだって・・・・・」
委員長の藤森 暁美(ふじもり あけみ)がいかにもと言う声で話す。
「じゃあ・・・・次、俺か?」
いつも授業を脱線させる男子――藤堂 明(とうどう あきら)が真剣な様子で話す。
「・・・・じゃあ、じいちゃんから聞いた話な。ある男の子が友達と校庭で遊んでたんだ。そしたら、屋上に女の子がいたんだって。で、次の日もまた次の日も、女の子は屋上にいたんだって。で、男の子は気になったから、屋上へ行って女の子に声かけようとしたんだ。それで・・・・屋上行って気が付いたんだ。女の子には足がなかったんだ・・・・・!!!で、怖くなって男の子は逃げたんだ。そしたら、腕の力ではいずるように女の子は追ってきたんだ。怖くて怖くて男の子はトイレに逃げ込んだんだ。それで、追う様な音は聞こえなくなったから、ホッとして上を見たら・・・・・・・女の子の顔が・・・・ワアアアアアアア!!!」
《キャアアアア〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!!!!!》
真剣な明が急に叫んだため女子達が悲鳴をあげる。
「んもぅっ、おどかさないでよぉっ!!」
「ヘヘヘッ♪怖かっただろ?」
「怖いよ!!でもさ、トイレネタって多いよね?」
「うん!!例えば、ある女性がストーカーから逃げるために公衆トイレに入ったら、上に顔があったって話も聞いたし!!」
「あるある!!!後はさ、ある老人からもらったランドセルを粗末に使っていたら、ある日そのランドセルがその子を食べちゃうの!!!」
「こっわ〜〜〜!!!」
「“物は大切にしろ”ってことかな?」
「心霊写真でもさ、後ろに顔が写るってことあるよね〜!」
「足が消えてたりとかさ!怖いよね〜〜〜!」


「怖いですねっ、連ちゃん・・・連ちゃん?」
「・・・・・・・・・スー・・・・スー・・・・」
「静かだと思ったら・・・・やっぱり寝てました」
怪談に人一倍弱い緑と、全然怖がらない連。
「・・・あ、じゃあコレは!?お姉ちゃんから聞いたんだけど・・・」
再び暁美が喋りだす。


「あのね、50年前、すっごい綺麗なお屋敷があったの。森の中にあって、いかにもお姫様が住んでるって感じの!!で、両親と一人娘がいたの。後は執事とメイドさんがチラホラ!で、ある日そのお屋敷が火事になって、執事やメイドは逃げ出したの。でも、両親や一人娘は死んじゃって・・・でも、その女の子は何かを探したようで、でも見つからなかったみたいなの。で、それ以来ずっとずっと、夏の夜になると何かを探し回ってその女の子の霊が動くんだって・・・・!コレ本当の話だよ!!お姉ちゃんが、誰もいないはずの部屋に明かりが付いてるのを見たって言ってたもん!!!」


50年前の火事。
それは確かに実際にあった事件なのだ。
その火事で、火は少なかったため焦げてボロボロになっても屋敷そのものは残っていて、子供達の肝試しの場所ともなっていた。
「何それ怖い!!!」
「・・・・・ね、肝試しに行かない?」
「肝試し!!??」
「うん、そこでさ!!!肝試しの場所にはうってつけじゃん!!!」
「え〜パス・・・・行きたくないよ〜」
「うん、呪われたら困るじゃん!!暁美一人で行ってよ〜〜〜!!」
「えー・・・・」


そして、この日は解散となった。
「チェー、何で誰も行かないの?・・・・・・・・・ん?」
残ったのは、暁美・明・緑・そして寝ている連。
「連ちゃん、連ちゃん!」
「・・・・・・・・・ん・・・・・・・・・・」
「まだ寝てたんですね・・・帰りましょう」
「うん・・・・・・・」


「あっ、待ってぇ!!!時野さん、青山さん!それと、藤堂!!!」
「?」
「え?」
「何で俺!?」
「ね!お願い、付いてきて!!!その屋敷に行きたいの、でも一人じゃ怖くて・・・お願い!」
「だからって何で俺だよ!!時野と青山でいーじゃんか!」
「ダメだって!!!・・・・だって・・・・」
「?」
暁美の言葉が詰まる。
「・・・緑、何?肝試しって」
「あ、寝てたから聞いてなかったんですね。えっと・・・――――」
緑が一部始終を説明する。
「フーン・・・・・」
「どうします?」
「緑は?」
「怖いですけど・・・・でも頼まれたら断れません・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・」

「ねー藤堂お願い!!と言うか男子で集まったのアンタとその他じゃん!」
「その他って・・・・可哀そうだろ」
「ねー!!頼れるのは藤堂だけ!!!・・・・・怖いの?」
「ピクッ!」
「怖いんだ〜!いつも威張ってる藤堂も、本当は怖いんだー!」
「怖くなんかねぇよっ!!!いーよ、いってやろーじゃん!!!」
「あ、マジでぇ♪ありがと★・・・ね、時野さん青山さん・・・・」
恋系に鈍い連はわからなかったが緑はわかった。
(藤森さん・・・・・藤堂さんのこと・・・・)

***************************
成り行きで連と緑も肝試しに参加することになった。
「面倒くさ・・・・」


時野探偵事務所。
「あ〜〜〜暑い〜〜〜〜〜〜」
団扇(うちわ)をバタつかせている庄治。
「お?どこ行く?」
「知らない、肝試しだって」
「ハ〜〜〜肝試しか!・・・絶対にオマエは怖がらない自信がある」
「何それ・・・と言うかどう怖がったらいいのかわかんない・・・けど、その怖さが強さになるってお父さん言ってたじゃん」
「ああ!怖さを乗り越えて強さになる!」
「フーン・・・・・・・」

***************************
「お待たせ!!!」
少し遅れて暁美が来る。
「おせーぞー?」
「ごめん!!親ごまかすのに必死でさ!!だって夜中に子供だけでっていうのもねー」
「で、何て言い訳したんだよ」
「『勉強でわかんないところを友達に教えてもらうから泊まる』って!!藤堂とか時野さんとか青山さんは?」
「オレんちはじーちゃんだけだし!遊びに行くつったら喜んで行って来いってさ!」
「・・・・肝試しって言ったら止めなかった」
「『連ちゃんの家に泊まります』って言っておきました」
「・・・本当に泊まる?」
「出来れば・・・・・・・」
「いいよ」
「ここからずっとまっすぐだね!!!」


「オマエさんたち、どこへ行く?」


《!》
前から現れたのは、人のよさそうな老人。左目の泣きボクロが印象的だ。
「エッ、えっと・・・・・その・・・・・た、探検に!!」
暁美がとっさに嘘をつく。いや、あながち嘘ではないのかもしれない。
「・・・・そうかい・・・・この先にはあの古びた屋敷しかないからな。気をつけな・・・・」
「あ、は、ハイ!!」
そして四人は向かう。



老人は、不気味な笑みを浮かべた。
「・・・・・・・・“アレ”を・・・探してくれるかい・・・・?ヒェッヒェッヒェ・・・・・」




一方連も思っていた。
(・・・この先・・・・屋敷しかないなら・・・あの人・・・・屋敷から来たの?)

****************************

屋敷内。
この屋敷は外見は火事で焼けているが広いためか中はまだマシなようだ。だから、焼死ではなく酸素不足で昔住んでいた家族は死んだのだ。
「わっ、暗い〜・・・って、当然だよね。ずっと誰も住んでないんだし」
「つか気味悪いな〜ここで何すんだよ」
「決まってんでしょ!!夜な夜な光る部屋の解明!」
「ハァ!?」
「・・・・怖いですっ、連ちゃん・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」



【ドガン!!!】
《!!??》
いきなり置物が落ちてきた。
【ドゴッ!!!!!ドガン!!!!!!】
次々と、四人目掛けて家具が落ちてくる。
「キャッ、キャアアアア!!!」
「いっ、一旦戻ろうよぉ!!!」
「!・・・・・・・・・・・・・・・・・」
ピチャン、ピチャンと言う水の音が聞こえた。


【ガシャコン!!!!】

「・・・・・・・・・・え・・・・・・・・・?」
青ざめて半ば笑っている暁美が、ドアを指さして震えている。
「・・・何・・・・?今の音・・・・ね・・・・・鍵・・・?」
【ガッ!!ガッ!!】
「おい、開かねーぞ!!!」
明が扉を開けようとするが開かない。
「嘘っ!!??嘘でしょ!?ドア、閉めたっけ!!??」
「・・・・・・これ、外から鍵かけられたんだよ」
「えっ!?」
「あんなの簡単にかかるもんじゃないし・・・それに・・・この屋敷を荒らされたくないのも本当みたいだし」
「どういうこと!?」
「・・・・・・50年間誰も住んでないはずなのに蜘蛛の巣が一つもない・・・絶対誰かが歩き回ったんだよ」
「嘘ぉっ・・・・じゃあ・・・・閉じ込められたまんま・・・・!?いやだ・・・・!!!」
暁美が半泣き状態になる。
「・・・・っ、泣くな!」
「!」
明が暁美の手をつかむ。
「怖いなら、ついててやるよ・・・・」
「!!・・・・うん・・・・ありがと!!!」







*************************
《・・・・・・・・ダレ・・・・・・・・?》
ここはとある部屋。髪の長さは肩まで、白いワンピースを着た少女が立っていた。
いや、正確には―――少女の霊だ。
少女はもうこの世にはいない。50年前に・・・絶命した。
《・・・・・・・・・オネガイ・・・・・・・イッショニ・・・・・探シテ・・・・・荒ラシヲ・・・・止メテ・・・》

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Novel Editor by BS CGI Rental
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