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暗号館の秘宝 作者:りみ

第16回   ENDING いつの時代も人は恋する
【ミ―――ン、ミンミンミ―――ン・・・・】

「・・・・暑い」
「そうですねっ!・・・なんで夏はこんなに暑いんでしょうね」
「・・・・もうすぐ電車来るよ?」
“あおうみ線”の2番乗り場で待っていた三人。
そして、三人は電車に乗った。
車内は、外の暑い気温をも忘れるような涼しい冷房がかかっていた。


「・・・時野、オマエ優しいんだな」
「何が?」
「あの宝もらえるって言われたときは正直ゴクッと来たよ。今すぐに全部ほしいと思った・・・けどさ・・・・、なんか、目覚めたっつーか・・・」
「つかっちゃんが優しいんじゃん、それ」
「連ちゃんも塚田君も、昔から優しいですよ♪・・・・あ」
“小山駅”。この駅の近くには、東京一大きい図書館がある。
「忘れてましたっ!この本、返すの今日まででした・・・・・、ごめんなさい、降りさせてもらいます」
「うん、じゃね」
緑は小山駅で降り、電車の中はそれほど満員ではなく、右側の長い椅子には連とつかっちゃんしか座ってない。
「・・・・う〜〜・・・・」
「何イライラしてんの?」
「早く帰って宿題を終わらせたいんだよ。なのにこの電車スピードが落ちたから」
「まだ10日なのに・・・・フア〜〜〜ァ・・・・・・・・」



そのときだった。

【・・・キキキ―――――ッ!!!ガタンッ!!】
「!?」

電車が大きく揺れ、急ブレーキをかけた。車掌からのアナウンスが流れる。


《エ〜〜〜・・・ご乗車中の皆様、まことに申し訳ございません。この先の駅で人身事故が起きた模様です。しばらくそのままお待ちください。ご迷惑をおかけします》



「事故っ!?・・・・うぁ〜もう!早く帰りたかった・・・・・え?」



つかっちゃんはふと気づいた。
さっきゆれたときに、熟睡しきってる連の体がつかっちゃんにもたれかかっている事を。
自分の肩で寝息がすることに気づいた―――連の寝息だった。
背の関係から、ちょうど連の頭がつかっちゃんの肩に乗っている。

(ええぇぇぇ〜〜〜!!時野・・・・!!なんでもたれてんだよ・・・!)

別に連にはつかっちゃんにもたれようなんて思いはないし、それ以前に寝てるから、自分がつかっちゃんにもたれかかってる事なんてわからない。
けどつかっちゃんは・・・・・、人一倍几帳面で神経質!な、つかっちゃんは・・・・・、ドキドキしてしまう。

(ヒェェェ〜〜〜!!!ちょっ・・・・!!向こういけよっ・・・・!!)

心ではそう思っても、なぜだか向こうへ押す気になれなかった。
このままのほうがいいかも・・・・と、どんどん思ってしまう。
「・・・・・・スー・・・・スー・・・」
(気楽に寝てるよ・・・・・・・・時野は。こっちは寝るどころじゃねえぞっ・・・・!!・・・ひぇぇ・・・!寝てる時の時野、かわいいんだ・・・・!!!・・・・ひょっとして“恋”?いやっ、まさかっ、なんでだっ!!オレが恋なんかするはずっ!・・・恋と言えば、千鶴さんも恋したときこんな気持ちか・・・?いつになっても人は恋するよな・・・・・、・・・・・・・・・・・・電車、止まっててもいいかも)


さっきまでは、早く帰りたくてイライラしていたつかっちゃん。
でも・・・・今は、動いてほしくない。一秒でも、このままでいいと思ってる。
電車がこのまま止まればいいのに・・・と思ってしまう自分のことを理解できなかった。


《・・・・え〜、今しばらく動きません、ご了承ください・・・・・》




<《時野探偵事務所シリーズ》第二作目『暗号館の秘宝』  終わり>

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Novel Editor by BS CGI Rental
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