【ミ―――ン、ミンミンミ―――ン・・・・】
「・・・・暑い」 「そうですねっ!・・・なんで夏はこんなに暑いんでしょうね」 「・・・・もうすぐ電車来るよ?」 “あおうみ線”の2番乗り場で待っていた三人。 そして、三人は電車に乗った。 車内は、外の暑い気温をも忘れるような涼しい冷房がかかっていた。
「・・・時野、オマエ優しいんだな」 「何が?」 「あの宝もらえるって言われたときは正直ゴクッと来たよ。今すぐに全部ほしいと思った・・・けどさ・・・・、なんか、目覚めたっつーか・・・」 「つかっちゃんが優しいんじゃん、それ」 「連ちゃんも塚田君も、昔から優しいですよ♪・・・・あ」 “小山駅”。この駅の近くには、東京一大きい図書館がある。 「忘れてましたっ!この本、返すの今日まででした・・・・・、ごめんなさい、降りさせてもらいます」 「うん、じゃね」 緑は小山駅で降り、電車の中はそれほど満員ではなく、右側の長い椅子には連とつかっちゃんしか座ってない。 「・・・・う〜〜・・・・」 「何イライラしてんの?」 「早く帰って宿題を終わらせたいんだよ。なのにこの電車スピードが落ちたから」 「まだ10日なのに・・・・フア〜〜〜ァ・・・・・・・・」
そのときだった。
【・・・キキキ―――――ッ!!!ガタンッ!!】 「!?」
電車が大きく揺れ、急ブレーキをかけた。車掌からのアナウンスが流れる。
《エ〜〜〜・・・ご乗車中の皆様、まことに申し訳ございません。この先の駅で人身事故が起きた模様です。しばらくそのままお待ちください。ご迷惑をおかけします》
「事故っ!?・・・・うぁ〜もう!早く帰りたかった・・・・・え?」
つかっちゃんはふと気づいた。 さっきゆれたときに、熟睡しきってる連の体がつかっちゃんにもたれかかっている事を。 自分の肩で寝息がすることに気づいた―――連の寝息だった。 背の関係から、ちょうど連の頭がつかっちゃんの肩に乗っている。
(ええぇぇぇ〜〜〜!!時野・・・・!!なんでもたれてんだよ・・・!)
別に連にはつかっちゃんにもたれようなんて思いはないし、それ以前に寝てるから、自分がつかっちゃんにもたれかかってる事なんてわからない。 けどつかっちゃんは・・・・・、人一倍几帳面で神経質!な、つかっちゃんは・・・・・、ドキドキしてしまう。
(ヒェェェ〜〜〜!!!ちょっ・・・・!!向こういけよっ・・・・!!)
心ではそう思っても、なぜだか向こうへ押す気になれなかった。 このままのほうがいいかも・・・・と、どんどん思ってしまう。 「・・・・・・スー・・・・スー・・・」 (気楽に寝てるよ・・・・・・・・時野は。こっちは寝るどころじゃねえぞっ・・・・!!・・・ひぇぇ・・・!寝てる時の時野、かわいいんだ・・・・!!!・・・・ひょっとして“恋”?いやっ、まさかっ、なんでだっ!!オレが恋なんかするはずっ!・・・恋と言えば、千鶴さんも恋したときこんな気持ちか・・・?いつになっても人は恋するよな・・・・・、・・・・・・・・・・・・電車、止まっててもいいかも)
さっきまでは、早く帰りたくてイライラしていたつかっちゃん。 でも・・・・今は、動いてほしくない。一秒でも、このままでいいと思ってる。 電車がこのまま止まればいいのに・・・と思ってしまう自分のことを理解できなかった。
《・・・・え〜、今しばらく動きません、ご了承ください・・・・・》
<《時野探偵事務所シリーズ》第二作目『暗号館の秘宝』 終わり>
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