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暗号館の秘宝 作者:りみ

第15回   14 宝のゆくえ
千鶴は手紙を開いた。
手紙にはこう書かれていた。

『ちづるへ
君は頭の良い娘だからこの手紙を読めているのだろう
この宝はわが加賀見家の財宝の半分だ。
最愛の君へあげたい。
愛する君を残して死ぬ事を許してくれ。死んでも空から君を見てるから。
もっと君を愛したかったけど 君の笑顔を見たかったけど 君のそばにいたかったけど 僕は間違いなく明日死ぬだろう
君は僕の分まで生きるんだ 戦争のために命を落とす必要なんてない
最後にこれだけは言いたい。
僕は君を愛していた・・・・・・・・・・・。
              一九四五年八月八日  加賀見浩之』



「・・・1945年8月8日・・・・・、浩之さんが特攻隊へ行く前日よ・・・・・・・。・・・っっ・・・浩之さんっ・・・・!!!」
「「「・・・・・・・・・」」」
ちづるは、幼い少女のように涙をこぼし泣いた。そのときにこぼした涙は雫のようにキレイだった・・・・・・・・・・・・・・。
「・・・ごめんなさいね。・・・・この財宝・・・あげるわよ?」
「「えっ!?」」
「・・・・・・・・・・・」
「規約でしょう。この宝を見つけた者にはすべてあげるの・・・・。・・・まさか、小学生に見つけられるとは思わなかったわ・・・でも、本当に感謝してるわ・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いらないよ」
「えっ?」
「あたし興味ないんだよね、そういうの。そんな宝なんか貰っても困るだけだし。緑とつかっちゃんで分けなよ」
「れ、連ちゃん・・・・」
「・・・・・・時野・・・・」
「・・・・・・あなたって変わってるわね・・・・・お名前、なんというの?」
「・・・・・なんで?」
「気になったのよ・・・・・・」
「・・・・・・・“時野連”。・・・緑とつかっちゃんにあげなよ。あたし要らないよ」
「・・・・・・わ・・・私も要らないですっ、この宝は、浩之さんが千鶴さんにあげたものですし・・・・」

緑も言った。それは、別に連に気を使ってとかそんなのではない。本当に、千鶴へのおくりものを貰っては悪いと思ったのだ。

「・・・そうだな・・・・、ていうか、オレも元々宝には興味ない」
つかっちゃんも言った。



「その宝は、浩之って人があなたにあげたものじゃん。それを貰う権利なんかないよ。・・・・・それは千鶴さんがもらってよ」

口調はそっけないが・・・千鶴は連の言葉に、なぜか愛情を感じた。

「・・・・・・・・・・・フフフフッ・・・・・、あなた達って・・・本当におもしろいわ。・・・・良かったわ・・・・安心よ。・・・私ね・・・東京は着々と、確実に変わって行ってるわ。・・・良い意味でも、悪い意味でも。・・・文化が発達してとても便利にはなっているけれど・・・それと同時に・・・・・心が貧しくもなったわ・・・・・・・そんな世の中でも・・・あなた達のような子供が少しでもいるなら・・・・この世は平和ね。本当によかったわ。もう二度と・・・戦争なんておこさせないでね」
そういう千鶴の顔は幼い少女のような満面の笑みで、本当に嬉しそうだった。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん」


連は、フッと微笑み、嬉しそうにそう答えた。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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