千鶴は手紙を開いた。 手紙にはこう書かれていた。
『ちづるへ 君は頭の良い娘だからこの手紙を読めているのだろう この宝はわが加賀見家の財宝の半分だ。 最愛の君へあげたい。 愛する君を残して死ぬ事を許してくれ。死んでも空から君を見てるから。 もっと君を愛したかったけど 君の笑顔を見たかったけど 君のそばにいたかったけど 僕は間違いなく明日死ぬだろう 君は僕の分まで生きるんだ 戦争のために命を落とす必要なんてない 最後にこれだけは言いたい。 僕は君を愛していた・・・・・・・・・・・。 一九四五年八月八日 加賀見浩之』
「・・・1945年8月8日・・・・・、浩之さんが特攻隊へ行く前日よ・・・・・・・。・・・っっ・・・浩之さんっ・・・・!!!」 「「「・・・・・・・・・」」」 ちづるは、幼い少女のように涙をこぼし泣いた。そのときにこぼした涙は雫のようにキレイだった・・・・・・・・・・・・・・。 「・・・ごめんなさいね。・・・・この財宝・・・あげるわよ?」 「「えっ!?」」 「・・・・・・・・・・・」 「規約でしょう。この宝を見つけた者にはすべてあげるの・・・・。・・・まさか、小学生に見つけられるとは思わなかったわ・・・でも、本当に感謝してるわ・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・いらないよ」 「えっ?」 「あたし興味ないんだよね、そういうの。そんな宝なんか貰っても困るだけだし。緑とつかっちゃんで分けなよ」 「れ、連ちゃん・・・・」 「・・・・・・時野・・・・」 「・・・・・・あなたって変わってるわね・・・・・お名前、なんというの?」 「・・・・・なんで?」 「気になったのよ・・・・・・」 「・・・・・・・“時野連”。・・・緑とつかっちゃんにあげなよ。あたし要らないよ」 「・・・・・・わ・・・私も要らないですっ、この宝は、浩之さんが千鶴さんにあげたものですし・・・・」
緑も言った。それは、別に連に気を使ってとかそんなのではない。本当に、千鶴へのおくりものを貰っては悪いと思ったのだ。
「・・・そうだな・・・・、ていうか、オレも元々宝には興味ない」 つかっちゃんも言った。
「その宝は、浩之って人があなたにあげたものじゃん。それを貰う権利なんかないよ。・・・・・それは千鶴さんがもらってよ」
口調はそっけないが・・・千鶴は連の言葉に、なぜか愛情を感じた。
「・・・・・・・・・・・フフフフッ・・・・・、あなた達って・・・本当におもしろいわ。・・・・良かったわ・・・・安心よ。・・・私ね・・・東京は着々と、確実に変わって行ってるわ。・・・良い意味でも、悪い意味でも。・・・文化が発達してとても便利にはなっているけれど・・・それと同時に・・・・・心が貧しくもなったわ・・・・・・・そんな世の中でも・・・あなた達のような子供が少しでもいるなら・・・・この世は平和ね。本当によかったわ。もう二度と・・・戦争なんておこさせないでね」 そういう千鶴の顔は幼い少女のような満面の笑みで、本当に嬉しそうだった。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん」
連は、フッと微笑み、嬉しそうにそう答えた。
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