■ トップページ  ■ 目次  ■ 一覧 

暗号館の秘宝 作者:りみ

第14回   13 何のために人は
――何のために戦争をするのだろう
 何のために人は争うのだろう
 何のために人は競い合うのだろう
 何のために人は人を苦しめるのだろう
 何のために人は人の国を奪うのだろう
 何のために人は人の権利と喜びを奪うのだろう
・・・・・・何のために・・・・・・・・・・・・・・?



1945年8月15日。
戦争は終わった。
何十万・・・いや、何百万もの犠牲を生んだ戦争はようやく終わった。
もう二度と・・・・・戦争なんてやらないでほしい。やる必要などない。


**************************
終戦から数ヶ月後。
千鶴は、田舎へ疎開していたがあの原っぱへ行くために戻ってきた。
「・・・・浩之・・・さんっ・・・!!!・・・きっと・・・死んでしまったのでしょうね・・・・そうよね・・・・・・・せめてもう一度・・・もう一度だけ・・・会いたかったわ・・・・・!!!」

そう。浩之は死んだ。戦死したのだ。
千鶴がフラフラと歩いていると、ある場所へたどり着いた。
浩之の家だ。

「・・・・私の家と比べると・・・・大きくて立派だわ・・・・」
そのとき、井戸のところにいた女――浩之の母が、千鶴に気づいた。
「・・・あんた、もしかして千鶴さん?」
「え?・・・はい、そうです」
「・・・・浩之がね・・・・特攻隊へ行く前日に・・・手紙を書いていたの。あなた宛にね」
「手紙・・・・・・・・・・・・・・・・・?」

千鶴の母が出したものは、達筆で『ちづるへ』と書かれた手紙だった。



『ちづるへ
ちづる 僕は明日間違いなく死ぬだろう
お国のために死ねるなら本望だよ
でも、一つだけ心残りがある
もっと君といたかったし、できることなら君と一つになりたかった
君と一緒になりたかったけど・・・できなかった
でも君は僕の愛する人だ だから、僕の財宝を君にあげたい
暗号館を建てたかったけど、その夢は君の言ったとおり叶わなかったね。
でも、いいんだ。来世では必ず叶えるよ。
ちづる 君にあげる財宝だけど、僕の性格を知ってる君なら分かるだろう
僕は簡単に渡したくない 君が頭のいい娘だからこそこういう方法にしてるのだ
兄妹像をあわせよ 台座にあわせよ そうすれば秘密の抜け穴が開く』


と言う手紙。

ちづるはこの手紙の謎を解読し、秘密の抜け穴まではいけた。
そして、灯台と、水がたくさんある場所に着いた。
そこへ、石で紙が止めてあった。


『ひつじの数の石=右の台座
 うとたつの数の石=左の台座
  これで全て平等になる。
すると、これをするがいい。
 鍋蓋で灯りを閉じ込めよ
これで火が消えるだろう。そうすれば、隠された財宝が手に入れられるだろう。
愛する君にあげるよ。加賀見家の財宝を愛する君にあげたい。それが僕の最後の願いだから。僕は間違いなく死ぬだろう。でも、君にだけは生きていてほしい。     葉月のときにこれを記す   加賀見浩之』


という文が書かれた紙がおいてあった。
が・・・・この謎だけはどうしても解けなかった。
けれど、どうしても解きたい。
そんなときに、暗号館を思いついた。
(・・・・館を建てれば、きっとたくさんの人が来てくれるわ・・・・、誰か、誰かきっとといてくれる・・・・・・)
そう思い、ちづるは浩之の遺志である『暗号館の設立』を自分の夢にした。

・・・そして、60年が経った。
ここまで60年の歳月を経て、やっと今年設立することが出来た。


***************************
2005年8月10日。
今日まで誰も解いてくれなかった謎を、連達三人が解いたのだった・・・。

「・・・ふーん。戦争か・・・・」
連が呟く。
「なんで戦争するんだろーね」
「・・・・ホントだな・・・・」
「何のために・・・・・・人は戦争をしたのでしょうね・・・・・」
「・・・・手紙読んでみたら?」
「えっ?」
「宝と一緒に出てきた手紙。・・・これにも、思いが書いてんじゃない?」
「・・・・そうね・・・・」



そして千鶴は、60年間眠り続けていた手紙の封を開けた・・・・。

← 前の回  次の回 → ■ 目次

Novel Editor by BS CGI Rental
Novel Collections