【ミ―――ン、ミンミンミ―――ン・・・・】
暑い太陽の下、蝉達の合唱が鳴り止まない。 ここは、暗号館の入口。真夏の暑さの中、一人の老婆がベンチに腰掛けている。
(あなたの望み通りに建てたわ・・・けど、誰も、3つめ以降を解けないわ・・・。やっぱりあの謎を解ける人はいないのかしら・・・ねぇ、浩之さん)
その時。 「・・・ねぇ、“最愛の人”の謎が解きたくてこの館を建てたんでしょ?」
「・・・・!」 老婆が驚いて顔を上げた。 立っていたのは、一見ボーッとしてて、それでいてしっかりした目をした少女――連。 「解けたよ。だから一緒に来てよ」 「・・・!!信じられないわ。あなた、まだ子供でしょう…」 「・・・だから何?あんな簡単な暗号が解けない大人達よりはできたんだよ」 「・・・・」
連は、老婆――創立者の千鶴をつれて、さっきの地下まで行った。 「どうでもいいけどさぁ・・・・なんでこんな面倒くさい造りにしたわけ?一回4階まで行ってからまた下まで行くなんて・・・」 「・・・そうしなければならない理由があったのよ」
*************************** さっきの地下。 「あっ、連ちゃん」 「おい、時野〜、何やってたんだ?」 「アレッ、その人は・・・・?」 「ごめん。この人が解けなかった謎を・・・教えたかったし。呼んだ方が早いじゃん」 「オイッ、時野!!オレさ・・・なんとなく分かった気がするんだ」 「ヘェ――、でも、つかっちゃんなら解けてもいい問題だよ」 「なんかの本で読んだんだ。昔は、十二支で時間を表したって。『ね(ねずみ)』は0時。『うし(丑)』は2時、『とら(寅)』は4時・・・と、2時間おきに、十二支であらわしたんだ」 「ウン、知ってる。この暗号も、その通りだと思うよ?・・・この暗号を考えた人も・・・昔の人だし。ま、昔っていっても昭和の前半だけど」 「あっ!じゃあ、『ひつじ(未)』は、14。『う(卯)』は6。『たつ(辰)』は8。・・・あっ、8+6は14・・・・ちょうどピッタリ平等になります」 「・・・あなた達、本当に解けたの?本当にそれで合っているの?」 ちづるはビックリしてる。まさか、小学生に解けるなんて思ってもいなかっただろう。 「あってるかどうかはやれば分かるでしょ。・・・右に、14個。左にも14個の石を置く・・・・」 台座にそれぞれ14個の石を置いた。 「これで・・・、空気の逃げ場はなくなったわけじゃん。石で圧迫したんだから。そんで・・・・・蓋を閉める・・・・」 空気は逃げ場を失い・・・・そして・・・・・・。
【・・・・・・フィン・・・・】
「!火が消えた・・・・!?」 「フフッ、合ってたじゃん。すごいね、つかっちゃん」 「すごいっていうか・・・時野、おまえもわかってたんだろ?」 「まぁね」
そのとき。火が消えた瞬間、水が引きあげられ始め・・・・・・・・・・・。
【サァ―――――ッ・・・・・・・・・】 「・・・なんか、ファンタジーっぽい」 その通り。火が消えた瞬間水が引き始め、そこからでてきたのは・・・。
「・・・・・!!・・・・・・これって・・・・、浩之さんっ・・・!!」 千鶴がビックリしている。水のそこから財宝がたくさん出てきたのだ。 光り輝くお金たち。それも、紙幣などではなく昔の硬貨だ。濡れてはいたがなぜかさびていなくて、輝きを失っていなかった。 「・・・・なんか手紙も出てきたけど」 当時――昭和前半には珍しかったビニール袋に入れられた手紙。 「・・・これだけは濡れてないね」 「・・・ありがとう・・・・まさか子供に解けるなんて思ってもいなかったわ・・・・・。・・・・その手紙を読む前に・・・あなた達に聞いてほしいの・・・・。・・・」 「・・・あたしも聞きたいんだけど。・・・なんでこんな館を創立したか・・・・まぁ、大体分かるけど」 「・・・・・・・・・・・・ええ。・・・聞いてほしいわ・・・あなた達には。・・・60年前・・・戦争があったのは、あなたたちだってわかるでしょう?・・・意味も無い戦争は、多くのものを奪ったわ・・・・。・・・“家族”、“友達”、“家”、“食べ物”、そして・・・・・“最愛の人”を」 「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」
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