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暗号館の秘宝 作者:りみ

第11回   10 水の中から出た財宝
【ミ―――ン、ミンミンミ―――ン・・・・】

暑い太陽の下、蝉達の合唱が鳴り止まない。
ここは、暗号館の入口。真夏の暑さの中、一人の老婆がベンチに腰掛けている。


(あなたの望み通りに建てたわ・・・けど、誰も、3つめ以降を解けないわ・・・。やっぱりあの謎を解ける人はいないのかしら・・・ねぇ、浩之さん)



その時。
「・・・ねぇ、“最愛の人”の謎が解きたくてこの館を建てたんでしょ?」





「・・・・!」
老婆が驚いて顔を上げた。
立っていたのは、一見ボーッとしてて、それでいてしっかりした目をした少女――連。
「解けたよ。だから一緒に来てよ」
「・・・!!信じられないわ。あなた、まだ子供でしょう…」
「・・・だから何?あんな簡単な暗号が解けない大人達よりはできたんだよ」
「・・・・」

連は、老婆――創立者の千鶴をつれて、さっきの地下まで行った。
「どうでもいいけどさぁ・・・・なんでこんな面倒くさい造りにしたわけ?一回4階まで行ってからまた下まで行くなんて・・・」
「・・・そうしなければならない理由があったのよ」

***************************
さっきの地下。
「あっ、連ちゃん」
「おい、時野〜、何やってたんだ?」
「アレッ、その人は・・・・?」
「ごめん。この人が解けなかった謎を・・・教えたかったし。呼んだ方が早いじゃん」
「オイッ、時野!!オレさ・・・なんとなく分かった気がするんだ」
「ヘェ――、でも、つかっちゃんなら解けてもいい問題だよ」
「なんかの本で読んだんだ。昔は、十二支で時間を表したって。『ね(ねずみ)』は0時。『うし(丑)』は2時、『とら(寅)』は4時・・・と、2時間おきに、十二支であらわしたんだ」
「ウン、知ってる。この暗号も、その通りだと思うよ?・・・この暗号を考えた人も・・・昔の人だし。ま、昔っていっても昭和の前半だけど」
「あっ!じゃあ、『ひつじ(未)』は、14。『う(卯)』は6。『たつ(辰)』は8。・・・あっ、8+6は14・・・・ちょうどピッタリ平等になります」
「・・・あなた達、本当に解けたの?本当にそれで合っているの?」
ちづるはビックリしてる。まさか、小学生に解けるなんて思ってもいなかっただろう。
「あってるかどうかはやれば分かるでしょ。・・・右に、14個。左にも14個の石を置く・・・・」
台座にそれぞれ14個の石を置いた。
「これで・・・、空気の逃げ場はなくなったわけじゃん。石で圧迫したんだから。そんで・・・・・蓋を閉める・・・・」
空気は逃げ場を失い・・・・そして・・・・・・。

【・・・・・・フィン・・・・】

「!火が消えた・・・・!?」
「フフッ、合ってたじゃん。すごいね、つかっちゃん」
「すごいっていうか・・・時野、おまえもわかってたんだろ?」
「まぁね」

そのとき。火が消えた瞬間、水が引きあげられ始め・・・・・・・・・・・。


【サァ―――――ッ・・・・・・・・・】
「・・・なんか、ファンタジーっぽい」
その通り。火が消えた瞬間水が引き始め、そこからでてきたのは・・・。

「・・・・・!!・・・・・・これって・・・・、浩之さんっ・・・!!」
千鶴がビックリしている。水のそこから財宝がたくさん出てきたのだ。
光り輝くお金たち。それも、紙幣などではなく昔の硬貨だ。濡れてはいたがなぜかさびていなくて、輝きを失っていなかった。
「・・・・なんか手紙も出てきたけど」
当時――昭和前半には珍しかったビニール袋に入れられた手紙。
「・・・これだけは濡れてないね」
「・・・ありがとう・・・・まさか子供に解けるなんて思ってもいなかったわ・・・・・。・・・・その手紙を読む前に・・・あなた達に聞いてほしいの・・・・。・・・」
「・・・あたしも聞きたいんだけど。・・・なんでこんな館を創立したか・・・・まぁ、大体分かるけど」
「・・・・・・・・・・・・ええ。・・・聞いてほしいわ・・・あなた達には。・・・60年前・・・戦争があったのは、あなたたちだってわかるでしょう?・・・意味も無い戦争は、多くのものを奪ったわ・・・・。・・・“家族”、“友達”、“家”、“食べ物”、そして・・・・・“最愛の人”を」
「「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」」

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Novel Editor by BS CGI Rental
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