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炎呪姫の防衛 作者:りみ

第5回   3 一日目〜到着
着いた場所は、“ネズミーディー”。
老若男女を問わず大人気で都市を代表するテーマパーク。
「じゃあ最初に記念写真を撮って、班ごとに自由行動とします。四時までには戻ることです。では、行ってきてください」
と言う教頭の声。
現在午後十一時。つまり、後五時間。が、この広いテーマパークで五時間は短いだろう。
全長何mもあるジェットコースター、雲に届きそうなほど高くまであがる観覧車、賑やかな音が鳴るゲームセンター、コーヒーカップや、ミニサーカスなどをやるホール、ミラーハウス等。
夜に始まるパレードが見られないのは生徒達にとって残念だった。
「じゃーさー、先に昼飯くおーぜー」
と、連達の班の男が言う。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・あそこで買えばいいじゃん」
連が言う。
“あそこ”とは、フランクフルトやら焼きそばやら、何でも売っている屋台だ。
「じゃー・・・・鈴木、一緒にいこーぜー」
「うん、鈴木、おごってやるよ」
「あー!?俺がおごるよ」
と、男子の人気は、クラス一の美人、菜摘に集中…だが。


「・・・・・・・・・・・・・・興味ない」



その一言を言った後、菜摘は一人でどこかへ行ってしまった。
「・・・・・・・・・・・・鈴木さん、連ちゃんに似てますね」
「?なんで?」
連はわかっていなかったが、緑は、菜摘と連と理沙が非常に似ていることに気づいた。
そして、何だか可笑しくてクスリと笑ってしまった。

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昼食後、会議(?)の結果まず乗り物は全員で乗って、その後お土産等は男女別にするということになった。
が、菜摘は居なかった。

先に乗ったのが“クワドアクセルフォーム”と言うジェットコースター。
“四回転(クワド)”をし、ものすごい速さで走っていく、ここの名物だ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・フア〜ア・・・・乗る?」
「わ、わ、わ、私・・・絶叫系ダメなんです・・・」
緑はもう真っ青になっていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・じゃあ一緒にいようか?」
「・・・いえっ、連ちゃん乗ってきてください。・・・塚田君と一緒に・・・」
「?・・・そりゃ一緒でしょ?他の男とも一緒じゃん」
「う〜ん、そういう意味じゃなくて(汗)」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・乗る?」
理沙が初めて連に話しかけた。
「うん」
「じゃあ、行くか」



後姿を見送りながら、緑は呟いた。
「沢田さん、要点しか言わない人だから・・・・・でも、連ちゃんに似てますね」
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その後。
一通り楽しんだ後、お土産を買いに行く。
と言う事で男女別行動。


「連ちゃん、何買います?」
「・・・んー・・・・・何買えばいいかわかんないし」
「あのお父さんだったら何でも喜ぶと思います」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・緑は?」
「私は、“絶対チョコチップクッキー買ってこい”って頼まれてて・・・後は、喜びそうなものを買います」
「フーン・・・理沙は?」
「あの意地悪姉達と妹にやる。何やるかは向こう行って決める」
「フーン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ」

お土産店には、菜摘が先に居た。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・一人でいーの?」
「っ!!!!!!」
菜摘は、逃げるように一人でどこかへ行った。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「どうしたんでしょう?鈴木さん・・・」



「・・・・・・・アレは、寂しい」
理沙が呟いた。



そしてお土産を買い終わった。
「緑、今何時?」
「午後四時二十分です」
「後四十分?それまで何してる?」
「う〜ん・・・・私乗り物あんまり乗ってませんし・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・じゃああれとか?」
連が示したのは観覧車。
「観覧車?」
「絶叫系ダメなら・・・・あれしかないじゃん」
「うーん・・・・連ちゃんが良いのなら!」
「じゃあ、乗ろう。何も乗らないんじゃつまんないよ」

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そして観覧車内。
「わっ、高い・・・」
「高いの苦手だっけ?」
「いえ!ゆっくりなら大丈夫です!」
「よかった」
「・・・・・・・・・・あの、連ちゃん」
「ん?」
「塚田君のこと・・・どう思ってますか?」
「つかっちゃん?なんで?」
「えっと、それは・・・塚田君が連ちゃんの・・・・えっと・・・・・」
「?」
「ぶっちゃけた話、好きですか?」

緑は大胆な質問をした。
「・・・・え?好きだよ?」


「エェエエェェエッ!!??」
「?なんで?・・・緑もだよ?」
「えっ?」
「?嫌いじゃないよ?友達だし」
「あ・・・・そういう意味ですか・・・・」



「鈍感」
またしても理沙が呟いた。
「・・・・・何が?」
「気づけ」
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そして、午後五時になった。生徒達は皆バスに乗り込む。
鮮やかに染まる夕焼けがキレイだった。
「じゃあ、これから旅館に行きます!忘れ物はないですか?」

そして、バスは生徒達を乗せ、旅館へと走った。

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その頃。
“炎呪旅館”では、ダム建設を進める社長――大野宮 義孝(おうのみや よしたか)と、断固反対する炎呪村の村長――丸山 吾朗(まるやま ごろう)が話していた。
「ダム建設の件・・・判を押してください」
「ダメじゃ。この地は誰にも譲らん」
「まぁ・・・・そうおっしゃらず。・・・・・ま、反対されてもダムは建設しますよ」
「この村には、ダム建設賛成派など一人もおらん!!!」
「・・・そうでしょうか?世論の意見も聞くべきですね。・・・こんな村、あっても仕方ないでしょう。ダムを建設した方がよっぽど国のためです」
「!!!!!姫が守った村を侮辱するか!!!」
「“姫”?・・・・あぁ、“炎呪姫”の事ですね。わかっていますよ、“炎呪財宝”がある事は。・・・・教えてくださいよ。何故災いが起きるのか。生憎(あいにく)、私は呪いなど信じていません」
「・・・・・・・・・フン・・・・・・」
村長は憤慨し、顔を真っ赤にし去る。
「・・・・フゥ・・・まったく」
大野宮は煙草を咥え、やれやれというようにため息をついた。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・村長」
「!裕人(ゆうと)くん」
炎呪旅館の板前――小鹿野 裕人(おがの ゆうと)。新人でまだ板前になったばかりだ。
「・・・・・・・・・・あんな奴ら・・・・死んでしまえばいい!!」
「ああ・・・・。・・・・・この村は、絶対に譲らん。たとえわしが死んでも・・・きっと、“炎呪姫”の子孫が居るだろう」
「・・・・・・・・・・村長は・・・・・・知って?」
「ん?」
「炎呪姫の子孫の存在を知って?」
「・・・・・・・・・・・・・・・フッ・・・・・・・・・・」
裕人の問いに、村長は意味深に微笑んだ。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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