着いた場所は、“ネズミーディー”。 老若男女を問わず大人気で都市を代表するテーマパーク。 「じゃあ最初に記念写真を撮って、班ごとに自由行動とします。四時までには戻ることです。では、行ってきてください」 と言う教頭の声。 現在午後十一時。つまり、後五時間。が、この広いテーマパークで五時間は短いだろう。 全長何mもあるジェットコースター、雲に届きそうなほど高くまであがる観覧車、賑やかな音が鳴るゲームセンター、コーヒーカップや、ミニサーカスなどをやるホール、ミラーハウス等。 夜に始まるパレードが見られないのは生徒達にとって残念だった。 「じゃーさー、先に昼飯くおーぜー」 と、連達の班の男が言う。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・あそこで買えばいいじゃん」 連が言う。 “あそこ”とは、フランクフルトやら焼きそばやら、何でも売っている屋台だ。 「じゃー・・・・鈴木、一緒にいこーぜー」 「うん、鈴木、おごってやるよ」 「あー!?俺がおごるよ」 と、男子の人気は、クラス一の美人、菜摘に集中…だが。
「・・・・・・・・・・・・・・興味ない」
その一言を言った後、菜摘は一人でどこかへ行ってしまった。 「・・・・・・・・・・・・鈴木さん、連ちゃんに似てますね」 「?なんで?」 連はわかっていなかったが、緑は、菜摘と連と理沙が非常に似ていることに気づいた。 そして、何だか可笑しくてクスリと笑ってしまった。
**************************** 昼食後、会議(?)の結果まず乗り物は全員で乗って、その後お土産等は男女別にするということになった。 が、菜摘は居なかった。
先に乗ったのが“クワドアクセルフォーム”と言うジェットコースター。 “四回転(クワド)”をし、ものすごい速さで走っていく、ここの名物だ。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・フア〜ア・・・・乗る?」 「わ、わ、わ、私・・・絶叫系ダメなんです・・・」 緑はもう真っ青になっていた。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・じゃあ一緒にいようか?」 「・・・いえっ、連ちゃん乗ってきてください。・・・塚田君と一緒に・・・」 「?・・・そりゃ一緒でしょ?他の男とも一緒じゃん」 「う〜ん、そういう意味じゃなくて(汗)」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・乗る?」 理沙が初めて連に話しかけた。 「うん」 「じゃあ、行くか」
後姿を見送りながら、緑は呟いた。 「沢田さん、要点しか言わない人だから・・・・・でも、連ちゃんに似てますね」 ************************ その後。 一通り楽しんだ後、お土産を買いに行く。 と言う事で男女別行動。
「連ちゃん、何買います?」 「・・・んー・・・・・何買えばいいかわかんないし」 「あのお父さんだったら何でも喜ぶと思います」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・緑は?」 「私は、“絶対チョコチップクッキー買ってこい”って頼まれてて・・・後は、喜びそうなものを買います」 「フーン・・・理沙は?」 「あの意地悪姉達と妹にやる。何やるかは向こう行って決める」 「フーン・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ」
お土産店には、菜摘が先に居た。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・一人でいーの?」 「っ!!!!!!」 菜摘は、逃げるように一人でどこかへ行った。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「どうしたんでしょう?鈴木さん・・・」
「・・・・・・・アレは、寂しい」 理沙が呟いた。
そしてお土産を買い終わった。 「緑、今何時?」 「午後四時二十分です」 「後四十分?それまで何してる?」 「う〜ん・・・・私乗り物あんまり乗ってませんし・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・じゃああれとか?」 連が示したのは観覧車。 「観覧車?」 「絶叫系ダメなら・・・・あれしかないじゃん」 「うーん・・・・連ちゃんが良いのなら!」 「じゃあ、乗ろう。何も乗らないんじゃつまんないよ」
************************ そして観覧車内。 「わっ、高い・・・」 「高いの苦手だっけ?」 「いえ!ゆっくりなら大丈夫です!」 「よかった」 「・・・・・・・・・・あの、連ちゃん」 「ん?」 「塚田君のこと・・・どう思ってますか?」 「つかっちゃん?なんで?」 「えっと、それは・・・塚田君が連ちゃんの・・・・えっと・・・・・」 「?」 「ぶっちゃけた話、好きですか?」
緑は大胆な質問をした。 「・・・・え?好きだよ?」
「エェエエェェエッ!!??」 「?なんで?・・・緑もだよ?」 「えっ?」 「?嫌いじゃないよ?友達だし」 「あ・・・・そういう意味ですか・・・・」
「鈍感」 またしても理沙が呟いた。 「・・・・・何が?」 「気づけ」 ************************* そして、午後五時になった。生徒達は皆バスに乗り込む。 鮮やかに染まる夕焼けがキレイだった。 「じゃあ、これから旅館に行きます!忘れ物はないですか?」
そして、バスは生徒達を乗せ、旅館へと走った。
*************************** その頃。 “炎呪旅館”では、ダム建設を進める社長――大野宮 義孝(おうのみや よしたか)と、断固反対する炎呪村の村長――丸山 吾朗(まるやま ごろう)が話していた。 「ダム建設の件・・・判を押してください」 「ダメじゃ。この地は誰にも譲らん」 「まぁ・・・・そうおっしゃらず。・・・・・ま、反対されてもダムは建設しますよ」 「この村には、ダム建設賛成派など一人もおらん!!!」 「・・・そうでしょうか?世論の意見も聞くべきですね。・・・こんな村、あっても仕方ないでしょう。ダムを建設した方がよっぽど国のためです」 「!!!!!姫が守った村を侮辱するか!!!」 「“姫”?・・・・あぁ、“炎呪姫”の事ですね。わかっていますよ、“炎呪財宝”がある事は。・・・・教えてくださいよ。何故災いが起きるのか。生憎(あいにく)、私は呪いなど信じていません」 「・・・・・・・・・フン・・・・・・」 村長は憤慨し、顔を真っ赤にし去る。 「・・・・フゥ・・・まったく」 大野宮は煙草を咥え、やれやれというようにため息をついた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・村長」 「!裕人(ゆうと)くん」 炎呪旅館の板前――小鹿野 裕人(おがの ゆうと)。新人でまだ板前になったばかりだ。 「・・・・・・・・・・あんな奴ら・・・・死んでしまえばいい!!」 「ああ・・・・。・・・・・この村は、絶対に譲らん。たとえわしが死んでも・・・きっと、“炎呪姫”の子孫が居るだろう」 「・・・・・・・・・・村長は・・・・・・知って?」 「ん?」 「炎呪姫の子孫の存在を知って?」 「・・・・・・・・・・・・・・・フッ・・・・・・・・・・」 裕人の問いに、村長は意味深に微笑んだ。
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