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炎呪姫の防衛 作者:りみ

第3回   1 計画〜班分け
夏、そろそろ梅雨も終わると言うジメジメした季節のある日の事。
「ハーイ!それでは、二泊三日の修学旅行!行き先は“ネズミーディー”、そして泊まる旅館は“炎呪(えんじゅ)旅館”と決定しました!」
活発でワイルドヘアーの委員長が言う。


光山(みつやま)小学校の六年三組の教室では、たった今修学旅行の話をしていたが、ここで一人だけ寝ている少女がいた。

時野 連(ときの れん)――天才的な推理力と度胸を持つのだが、面倒くさがりでいつもボーッとしている少女だ。
「れ、連ちゃんっ・・・」
そう言ったのは、連の隣の席であり、幼稚園からの幼馴染の、青山 緑(あおやま みどり)。黒髪の三つ編にめがねと、典型的な優等生タイプの、恥ずかしがりやな少女だ。
「炎呪旅館についてはプリント配るねッ♪」

初めての修学旅行であるためその分生徒達にも気合が入っていた。
そして、プリントが配られた。
(………眠い………)

『炎呪旅館
 この旅館は、古びた村の近くに位置する。
 近くのテーマパークとは裏腹に、この村は廃村化も進んでいる。
 尚、“炎呪”は、江戸時代初期に西洋人である“炎呪姫”に由来する。
 炎呪姫財宝を狙う者たちも続出する』

と言う説明が書いていた。
「・・・緑、炎呪財宝ってなに?」
「えっ?…うーん、本で読みましたが、昔に、アメリカとかフランス系の国のお姫様が、日本人の男性と結婚して子供も産んだんです。それで、炎呪姫の目はキレイな青色で、子供の目もみんな青色だったそうです。そんな目を見て、お奉行様は外人だと見ぬき、死刑にしようとしたんです」
「・・・・外人だからってなんで死刑なの?」
「そのときは、鎖国と言うものがあって…外人は日本にいちゃいけなかったんです」
「フーン・・・・おかしーね」
「ハーイ・・・・・・・それで、炎呪姫は死んだのですが、その後で、洪水とかも起きなくなって、それに、“財宝”が降りてきたそうなんです」
「・・・・・財宝?」
『財宝が降りてきた』と言うことに疑問を持った連が聞いた。それに緑が静かに答える。
「ハイ」
「・・・・・財宝って何?」
「わかりません。一部では、莫大なお金とも言われています。そして・・・、そのお金を狙って昔からいろんな人たちが奪いに来るそうなのですが・・・・絶対に失敗しています」
「?なんで?」
「わかりませんが・・・その財宝を狙おうとすると、絶対に何か悪い事が起きて・・・泥坊たちが死にかけた事もあったそうです。なので・・・最近は狙う人もいないそうです」
「フーン・・・・・・・・」
そう言った後連は気だるげに机に突っ伏した。
「れっ、連ちゃん?」
「・・・・・眠い」
「寝ちゃダメですよ、今から班分けです!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・めんどくさい・・・」

*****************************
そして、班分けに入った。
「全部で四班ねっ!亜里抄(ありさ)〜一緒しよっ♪」
「いーよ!」
「じゃーあたしはここがいい!ねっ、青山さんと時野さんは一緒でいーい?」
「いいよ」
「あっ、私もそれでいいです」
「オーケー〜〜〜!!!ここに男子3人入れて、で沢田(さわだ)さん入れればいっか!」
「・・・沢田?」
「沢田 理沙(さわだ りさ)!時野さんの隣じゃん!!」

連の右隣には、無言で何か絵を書いている少女がいた。髪は連と同じ長さだが、色が異なる。連は少し茶色が混ざった黒で、理沙は漆黒。それが“沢田理沙”だ。
基本的に無口で何も喋らないがネコのような仕草がたまに可愛い。
だが連は理沙の存在を知らなかった。
「フーン・・・・いたんだ」
「いましたよっ!もー連ちゃん・・・」
緑が言うが、そんな連のことを緑は好きだった。

「女子が後一人・・・・・・・・・・・ねぇ、誰か鈴木(すずき)さんと一緒する?」
「えーっ、やだー!」
「やだ〜〜〜キモイよ〜〜!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」

クラスの女子達がこんなにも毛嫌いする女子――鈴木 菜摘(すずき なつみ)。
一番左の後ろの席に座る、黒髪のロングヘアーの美少女。
男子からはモテるのに、女子からはとても毛嫌いされる。それは決して嫉妬という物ではなかった。
何故嫌われるのか――基本的に、この時期の女子と言う物は、つるまない女を嫌う。
事実、群れるのを嫌うのか菜摘は一人で、口下手なのか話しかけられてもツンとしている。それにどこか合わない所から、菜摘は『ごく一部の人間』を除いて嫌われていた。

「・・・・・別にいーんじゃないの?趣味違っても」
『ごく一部の人間』(と言うより周りに興味が無い)の連が言う。
「そうだけどさぁ・・・だってさ、時野さんはそう思わない?気持ち悪いんだよ〜?」
「・・・さぁ・・・思わないけど?て言うか嫌う方が変でしょ。全部一緒の方が気持ち悪いし」
「じゃあ、時野さん鈴木と一緒でいい?」
「別に」

****************************
下校途中の商店街――ひまわり通りを歩く二人。
家が近い連と緑は、いつも商店街を一緒に並んで歩いていた。
「・・・・ねー、緑」
「ハーイ?」
「・・・なんで人とちょっと違うだけであんな嫌われるのかな?あの人。・・・あわせなきゃダメなわけ?」
「わかりません・・・・」
「“鎖国”ってやつもそうだったんじゃない?見た目だけで外人を判断して、すぐ殺したんだろうね」
「そうですね・・・戦争もきっとそうだったんでしょうね・・・でも、鈴木さん良い人ですよ」
哀しげに緑が言う。
「連ちゃん、覚えていませんか?私と連ちゃんは一年生の頃からずっと同じクラスで、それで鈴木さんは三年生のときにも一度同じクラスになったんです」
「覚えてない」
「やっぱり・・・。鈴木さんその頃から人と趣味が違っていましたけど、前にお金落として困っていたら鈴木さんが貸してくれたんです」
「フーン・・・・・いい奴だね。つまり、『人と違うから』嫌われてるわけだ」
「あっ、鈴木さん・・・・」
緑の視線の先には、書店でジッと並んである本を見つめる菜摘がいた。
「!」
菜摘は連達に気づいたが、ツンとそっぽを向いた。
「・・・・・・・・・・・・・・信じられなくなってるね」
「え?」
連が呟くのを緑は聞いた。
「皆が嫌うから、だんだんと人を信じられなくなってるのかもね・・・―――で・・・アレは・・・・誰だっけ?」
「えっ??あ、沢田さんですよ」

理沙が、商店街の肉屋の肉まんをおいしそうにほおばっていた。
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次の日、学校。
班はこうなった。
四班には、女子は連、緑、菜摘。男子は、話したことも無いような脇役男子が二人と、連と緑の幼馴染――塚田 真(つかた まこと)だった。
この男子の事を、連だけは“つかっちゃん”と呼ぶ。そしてそのつかっちゃんは、やはりメガネをかけた優等生だった。
「オッ、鈴木と一緒だ」
「ヤッリ〜♪鈴木マジ美人だしな〜」
「ああ!告っちゃおうかな〜」

と言う声がする。

「ねぇっ!!!修学旅行といったら、枕投げに肝試し!!!」
と委員長が提案。
「よしっ、女子だけでやっちゃおう♪」



そして、修学旅行まで後五日。
皆が期待し、テーマパークではしゃげる事を楽しみにしている。



そして、炎呪姫の防衛も見られることになる。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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