■ トップページ  ■ 目次  ■ 一覧 

礼拝堂の奇跡 作者:りみ

第7回   5 別荘での一時
“カオル”は歯軋りした。
(くそっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!すんなりとこの別荘へくるまでは良かった。それまでは想定内だった。
なのに、こんなにも関係のない人物がいるとは!
・・・・よし、早く“第一の殺人”をしようではないか。そろそろ時間なのだな。
忘れてはならない。私は復讐者。私はいかなる情も持ってはならないのだ。
忘れてはならない。我が名はカオル。私は復讐者。
もうずっと前から、ずっとずっと前からこの名は封印してきたのだ。
だが、今こそ本名の自分で犯罪を犯そうではないか。
今まで、流されるだけだった私を忘れるのだ。
初めて、本当の私がやることなのだ・・・・・・・・・・・・・・・・)

*************************
そして、午後5時。
別荘の食事室に全員のメンツが集まった。
有美子と星崎が全員分のコーヒーを入れて、テーブルに置いた。

郷田良三、郷田有美子、星崎美千代、上野雄樹、盛岡圭一、桜木美帆、片山麗香、上原光太郎、白鳥麗十、時野庄治、佐藤恵利、時野連、青山緑、塚田真。

時計回りから言ってこの順に座っている。
「先生、本当、変わりませんね」
「ああ、お前らも全然変わらんな。ああ、桜木は、美人になりすぎてわからなかったよ」
「ありがとうございます♪」
「・・・・あの、同窓会にしては、人少なくありませんか?ウチらがこんかったら、生徒が3人しかおらへんでしょう?」
「あ、それは・・・、連絡が取れなかったんです。元から、他の学校と合同する予定だったんです・・・それで、私達の中学校、全体的に人が少なくて・・・1クラス20人ぐらいでした。それで・・・、連絡がつかない人、連絡は取れてもいけない人などで・・・結局この3人しかこれなかったんです」
桜木が律儀に言う。

「・・・・・ああ、もうそろそろだな・・・・・・・・私は部屋へ行くよ。」
「あ、寒いからコーヒーでも持って行ったらどうですか?」
「ああ、そうですな」
星崎のすすめにより、郷田はコーヒーを持って自分の部屋へ行った。

「・・・・・あの、部屋でなにかするんですか?」
「ああ、主人は、毎日午後6時から始まるTVにハマってて・・・・・毎日、午後6時には自分の部屋へ行ってるのよ。いろんな行事のときも、6時までには帰ろうとするの。何もこんなトコに来てまで・・・・・・・・・・・・・・・・」
「あの、オレ、席外してもいいですか?」
「あ・・・・・・オレも・・・・・・・・・」
上野と盛岡が席をはずしたいと言った。

食事の時間。
それまでの間、片山、上原、白鳥は各自の部屋へ行っていた。
上野と盛岡は帰ってきた。
そして、桜木はトイレへ行ってほんの数分で帰ってきた。

「あの、あの人は?」
「ああ、先生・・・・寝たようです。いびきが聞こえてきて・・・・」
「あら・・・・・困った人!いいわ、あの人の分まで食べちゃいましょう!」

そして。
「うっわ、もう暗いですね〜〜〜!」
「ええ、そうね。冬だし、雪山は日が沈むのが早いものね」
「・・・・・・・外、寒いでしょうね〜」
「あら、そうでもないかもよ?今日は風が穏やかだし」
「そうですね〜〜〜〜〜〜・・・・・・・・・・・・・・・あああっ!!!」
佐藤が叫んだ。

「ちょっと、ちょっとちょっと、時野はん!!!“謎解き紀行”、忘れてましたやん!!」
「あの、元はと言えば、佐藤さんがはしゃぎすぎて・・・・・・・・・・・・」
「もう、しょうがないっ!!明日取材いきましょか!!!」
「は、はあ・・・・・」

「・・・・・・・・・・・・・・・取材?」
星崎が聞いてきた。
「ええ、取材ですっ!!礼拝堂の近くに、人魂が出るらしいんですよぉ!!だから、取材にいこかな〜、と!」
「えっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

星崎の顔が歪んだ。
「そ、それは・・・・・やめておいたほうがいいわ」
「えっ?」
「本当・・・・・・・・・・・・・・・・・“出る”らしいのよ」
「ええええっ!!??」
「えっ、出るんですか!?」
「でんのかよ!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・でる?なにが?」
「時野、だから、霊に決まってんだろ!出るんだってよ!」
「ヘー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・んなわけないじゃん」


―――連と緑の部屋。
ここは、奇跡的にとても大きな別荘のため部屋がたくさんあった。なので急な来客にも余裕で対応できた。
「フウッ・・・・・・・・・・・・・・・・疲れた」
「本当ですね〜!・・・・ねえ、連ちゃん?」
「ん?」
「さっき佐藤さんが何か怒ってましたよね?何か言われたんですか?」
「あー・・・・・・・・・、あの白鳥って人が変な事言ったら佐藤さんが怒った。ただそれだけ。・・・“連続殺人”がどーとかいってたし」
「えっ・・・・・・・・・・・・・・!!!怖いですね、それ・・・・・」
「まーねー・・・・・フア〜〜〜〜ア・・・・・・・・・」
「れ、連ちゃん、全然怖がってないじゃないですか・・・」
「いちいち怖がってたら、こんなのにも来てられないよ・・・・・・・・・・」
ふと、連は外に目をやりながらこう呟いた。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・本当に、連続殺人が起きたりしてね・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


それは当たるのだ。

***********************
その少し前のこと。
“カオル”は、いよいよ殺人を実行することにした。
(フハハハハハハ・・・・!死ね、死ね、死ね、死ぬがいい。
苦しい毒にもだえ、苦しむがいい。どれだけ吸っても何も入ってこない・・・・・その苦しみを味わうが良い。“少年”が受けた苦しみの倍の分を味わうが良い。フハハハハハハハハ・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!死ね、しね、シネ!!!)

← 前の回  次の回 → ■ 目次

Novel Editor by BS CGI Rental
Novel Collections