“カオル”は歯軋りした。 (くそっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!すんなりとこの別荘へくるまでは良かった。それまでは想定内だった。 なのに、こんなにも関係のない人物がいるとは! ・・・・よし、早く“第一の殺人”をしようではないか。そろそろ時間なのだな。 忘れてはならない。私は復讐者。私はいかなる情も持ってはならないのだ。 忘れてはならない。我が名はカオル。私は復讐者。 もうずっと前から、ずっとずっと前からこの名は封印してきたのだ。 だが、今こそ本名の自分で犯罪を犯そうではないか。 今まで、流されるだけだった私を忘れるのだ。 初めて、本当の私がやることなのだ・・・・・・・・・・・・・・・・)
************************* そして、午後5時。 別荘の食事室に全員のメンツが集まった。 有美子と星崎が全員分のコーヒーを入れて、テーブルに置いた。
郷田良三、郷田有美子、星崎美千代、上野雄樹、盛岡圭一、桜木美帆、片山麗香、上原光太郎、白鳥麗十、時野庄治、佐藤恵利、時野連、青山緑、塚田真。
時計回りから言ってこの順に座っている。 「先生、本当、変わりませんね」 「ああ、お前らも全然変わらんな。ああ、桜木は、美人になりすぎてわからなかったよ」 「ありがとうございます♪」 「・・・・あの、同窓会にしては、人少なくありませんか?ウチらがこんかったら、生徒が3人しかおらへんでしょう?」 「あ、それは・・・、連絡が取れなかったんです。元から、他の学校と合同する予定だったんです・・・それで、私達の中学校、全体的に人が少なくて・・・1クラス20人ぐらいでした。それで・・・、連絡がつかない人、連絡は取れてもいけない人などで・・・結局この3人しかこれなかったんです」 桜木が律儀に言う。
「・・・・・ああ、もうそろそろだな・・・・・・・・私は部屋へ行くよ。」 「あ、寒いからコーヒーでも持って行ったらどうですか?」 「ああ、そうですな」 星崎のすすめにより、郷田はコーヒーを持って自分の部屋へ行った。
「・・・・・あの、部屋でなにかするんですか?」 「ああ、主人は、毎日午後6時から始まるTVにハマってて・・・・・毎日、午後6時には自分の部屋へ行ってるのよ。いろんな行事のときも、6時までには帰ろうとするの。何もこんなトコに来てまで・・・・・・・・・・・・・・・・」 「あの、オレ、席外してもいいですか?」 「あ・・・・・・オレも・・・・・・・・・」 上野と盛岡が席をはずしたいと言った。
食事の時間。 それまでの間、片山、上原、白鳥は各自の部屋へ行っていた。 上野と盛岡は帰ってきた。 そして、桜木はトイレへ行ってほんの数分で帰ってきた。
「あの、あの人は?」 「ああ、先生・・・・寝たようです。いびきが聞こえてきて・・・・」 「あら・・・・・困った人!いいわ、あの人の分まで食べちゃいましょう!」
そして。 「うっわ、もう暗いですね〜〜〜!」 「ええ、そうね。冬だし、雪山は日が沈むのが早いものね」 「・・・・・・・外、寒いでしょうね〜」 「あら、そうでもないかもよ?今日は風が穏やかだし」 「そうですね〜〜〜〜〜〜・・・・・・・・・・・・・・・あああっ!!!」 佐藤が叫んだ。
「ちょっと、ちょっとちょっと、時野はん!!!“謎解き紀行”、忘れてましたやん!!」 「あの、元はと言えば、佐藤さんがはしゃぎすぎて・・・・・・・・・・・・」 「もう、しょうがないっ!!明日取材いきましょか!!!」 「は、はあ・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・取材?」 星崎が聞いてきた。 「ええ、取材ですっ!!礼拝堂の近くに、人魂が出るらしいんですよぉ!!だから、取材にいこかな〜、と!」 「えっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
星崎の顔が歪んだ。 「そ、それは・・・・・やめておいたほうがいいわ」 「えっ?」 「本当・・・・・・・・・・・・・・・・・“出る”らしいのよ」 「ええええっ!!??」 「えっ、出るんですか!?」 「でんのかよ!」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・でる?なにが?」 「時野、だから、霊に決まってんだろ!出るんだってよ!」 「ヘー・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・んなわけないじゃん」
―――連と緑の部屋。 ここは、奇跡的にとても大きな別荘のため部屋がたくさんあった。なので急な来客にも余裕で対応できた。 「フウッ・・・・・・・・・・・・・・・・疲れた」 「本当ですね〜!・・・・ねえ、連ちゃん?」 「ん?」 「さっき佐藤さんが何か怒ってましたよね?何か言われたんですか?」 「あー・・・・・・・・・、あの白鳥って人が変な事言ったら佐藤さんが怒った。ただそれだけ。・・・“連続殺人”がどーとかいってたし」 「えっ・・・・・・・・・・・・・・!!!怖いですね、それ・・・・・」 「まーねー・・・・・フア〜〜〜〜ア・・・・・・・・・」 「れ、連ちゃん、全然怖がってないじゃないですか・・・」 「いちいち怖がってたら、こんなのにも来てられないよ・・・・・・・・・・」 ふと、連は外に目をやりながらこう呟いた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・本当に、連続殺人が起きたりしてね・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
それは当たるのだ。
*********************** その少し前のこと。 “カオル”は、いよいよ殺人を実行することにした。 (フハハハハハハ・・・・!死ね、死ね、死ね、死ぬがいい。 苦しい毒にもだえ、苦しむがいい。どれだけ吸っても何も入ってこない・・・・・その苦しみを味わうが良い。“少年”が受けた苦しみの倍の分を味わうが良い。フハハハハハハハハ・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!死ね、しね、シネ!!!)
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