数週間後の3月。
もう春が近付き、そして花粉症の季節・・・・・・・・・・・・・ 「ヘックションッ!!!」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・8回目」 「数えるな・・・・・・・・ヘックション!!!」 「9回目」 「・・・・ヴァ〜〜〜〜・・・・つらい」 「花粉症か・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 庄治は花粉症に悩まされていた。
【コン、コン・・・・・・】 「バイ(ハイ)???」 「・・・・・・・・・・・・・・・・」
【ガチャッ!!】 「お久しぶりで〜〜〜すっ!!!」 「・・・・・・・佐藤さん」 以前よりもさらにパワフルになった、ショートヘアーの美女――佐藤恵利が立っていた。 「先日はどうもですっ♪時野はんの謎解き紀行、結構好評でしたよ♪」 「ハァ、どうも・・・」 「それでな、灯り・・・実はたまに自分でつくらしいんですよ、灯り」 「ヘッ?」 「?」 「よく仕組みがわかりまへん。ただ、昔あの辺山やなくて、周りにも女子校とかあったらしいんですよ。それで、礼拝堂を買った人が、灯りがつくように仕組んだらしくて。で、売る時に灯り消そうとしても、消えへんかったらしいんです。そんで、そのままにしとかーみたいな感じやったそうです!まぁ、死んだ人が集まってキレイな灯りをともしたとも言われとったらしーです。・・・まぁ、あの状況でともったのも奇跡でしたね・・・・・・哀しい事件でしたね。15年もの歳月が復讐を募らせた・・・っちゅう話ですね。・・・・・・あんな優しい人が・・・復讐のために15年も自分殺したんかって思うと・・・・やりきれんわ」 「・・・・・・まー誰でも鬼になるよ・・・・・・・・“復讐”が心を黒くしちゃうんだから」 「そやなぁ・・・・連ちゃん、あんたはんほんまに小学生なん?」 「・・・・・・・・その質問何回かされた」 「だってあんたはん小5に見えへんて!・・・あ、そや!これ、『古畑』のビデオ!見てみ?」 「・・・・・・・・・いーよ」 「えーなんでーなん!!!おもろいから!!持ってきたし、置いといてや!」 「・・・・・・くれるの?」 「やらへんっ!貸すだけやで♪・・・・いつかまた取りに来る!そんときは・・・次の“謎解き紀行”打ち合わせのときやで♪」 「まだばるんでずか(まだやるんですか)・・・・」 「あったりまえやん!!楽しいもん♪」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・フフッ」
「あ〜!なんなん!?連ちゃん今笑ったぁ〜〜〜!!しかもそっけなくやぁ!なんなん?」 「・・・・・・別に」 「え〜〜教えてやぁ!」
連は思った。 “復讐”という名の殺人鬼はどこにでもいるしどこにでも現れる。 それでも、楽観的に楽しめることを無くし復讐のためだけに自分を殺すのは絶対イヤだと思った。 自分が死んで、誰かを憎んでくれる人がいるのは嬉しい。でも、憎み続けていても死んだ方は何も報われない。 自殺されても死んだ方は報われないし哀しい。 自分の分まで笑ってほしい、そういう人の心が“復讐”と戦ってるのかな、と。 ・・・・だからこそ思った。 (・・・お父さんと佐藤さんは・・・・・ぜーったい“復讐”の鬼にはならないんだろうな・・・・・・・・・・・・楽観的だし・・・・・・・・・まぁ、誰かが死んだら憎むんだろうけど・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・“復讐”に負けないね、この二人)
油断するとまた、復讐という名の殺人鬼が目覚める。 自制心と復讐がいつも戦っている。
でも忘れないで。 死者は、大好きな人が復讐という名の殺人鬼になることを望んでなどいないことを・・・
<《時野探偵事務所シリーズ》第五作目『礼拝堂の奇跡』 終わり>
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