■ トップページ  ■ 目次  ■ 一覧 

礼拝堂の奇跡 作者:りみ

第15回   13 あやふやな遺書

廊下を連とつかっちゃんが歩く。
「な〜時野〜、どー思う?」
「・・・何が?」
「犯人、本当にあの中にいると思うか?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・え?」
「外部だったら?」
「・・・・外部とかはありえない。何で外部犯が郷田さんが6時にTV見るってこと知ってて、星崎さんをあんな高い所に吊るして、上野さんをあんな風に刺したんだと思う?」
「・・・だよな・・・・だとすると、片山さんと上原さんと白鳥さんは除外じゃねえか?偶然ここにきたんだし」
「・・・・・・・・・・・・・偶然をよそおってるだけかもね・・・・」
「・・・・・・・・あんまり首つっこまねーほうがいいぞ」
「?」
「お前が危ない目にあったらどーすんだよ」
「そんときはそんとき」
「オイオイ・・・・・・・・・・・まぁ、俺はお前が危ない目にあうのイヤだし」
「??なんで?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・気づけ」


そのとき連の足が止まった。
「・・・・・・電気消えてる」
「あ、ホントだ」
盛岡の部屋の電気が消えていた。
「・・・・あんなに怖がってたのに・・・・・寝てるわけ?」
そもそも、ついさっきまであんなに怯えていた人間が簡単に眠れるとは思いにくい。
もしその人間が眠っている時は――――永眠。

【ガチャガチャ・・・・】
ドアノブをまわしてみても、中から鍵がかかっていて開かなかった。
「おい、時野?」
「・・・・・・・・・さとーさん呼んで来て」
「え?」
「さとーさんだったら鍵かかってても蹴って開けれるから」


そして数分後。

【・・・・・・・・・・・・・・ドガン!!!!!】
佐藤が足でドアをかちやぶり、鍵が開いた。

「・・・・・・・イヤアアアアアアアア!!!!!!!」
桜木が叫ぶ。

―――盛岡が息絶えていた―――

そして盛岡の左手には注射器が持たれていた。
「・・・・・なぁ、時野、これって遺書か?」
「?」
盛岡の目の前には、持参してきたであろうパソコンに文字が打たれていた。

『全ての犯人は俺だ。
 前田勉の呪いに従い犯行を行った。
 先生のリモコンに毒針を仕込んだのも俺だ。状況的に考えてそうだろう。
 あの時間に電話で誘導できたのは俺だ。
 そして、星崎氏を殺すつもりなどはなから無かった。
 だが、俺が先生を殺したと知られたために口封じで殺したのだ。
 尚、星崎氏の遺体は埋めた。掘り起こせばあるでしょう。 
そして、上野を殺した。
 アイツが親友?笑わせてくれます。俺はあいつを憎んでいた。
あいつが必死に外に出たがるあの姿、笑えましたでしょう。
先生の事も憎んでいた。
 だが、いずればれてしまうだろう。そうなる前に、俺は“自分”をも殺す。 
                       盛岡圭一』



という、“遺書”が残されていた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・じゃあ、コレで終わりなん?けーっきょく、犯人は盛岡さんで、自殺しましたー、で・・・終わりなん?」
「・・・・・・・・・・・・・・ううん。だってこの遺書おかしいよ」
「え?どこが?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・全部」
「全部??・・・けど、連ちゃん、ここ・・・密室やで?」
「え?」
佐藤の言ったとおり、この部屋は“密室”だった。
ドアに鍵がかかっていて、窓も閉まっていた。
鍵はかかっていなかったが、周りが凍りついてでもいるのか開かない。
鍵は、遺体のポケットにあった。
「やろぉ?せやから・・・・無理やん。誰かが入るんは」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」


そして。
「なぁなぁ、庄治はんっ!!警察来るそうです!!」
「ずいぶん遅いんですね」
「ええ、なんでも土砂崩れ結構あったそうで。だから遅れてたんです。・・・警察、あてになりませんね・・・・・・もっと早く来てればよかったのに」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

****************************
そして数時間後に警察が来た。
結局、盛岡が3人を殺し自殺したということで片付けられようとしていた。
「寒いですね・・・」
「そうだね・・・・・・・・」
「・・・暖炉の火が消えちまうんじゃねえか?」
「・・・・・・寒いと消えるの?」
「消えるに決まってんだろ。ライターとかもしけるらしいから。冷えてたらつかねえぞ?」
「・・・・・・なー、連ちゃん・・・・これでええの?」
「全然。納得いかないから」
「そや!全然納得いかへんわ!!あの人自殺なんかせえへん!!!・・・・・・・・・あれ、今って朝の4時なん??暗いわぁ・・・・」
「・・・・・・・朝の4時?」
「暗いなぁ、空!夜みたいやん?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
冬の朝は夜のように暗い。
早朝は深夜と同じくらい深い闇に包まれるのだ。

連は空を眺め、何かに気づいたように呟いた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・フーン・・・・・・・・・・・・・・・・・」

← 前の回  次の回 → ■ 目次

Novel Editor by BS CGI Rental
Novel Collections