「・・・・星崎・・・・はん?・・・・灯りビミョーな暗さやからようみえんけど・・・・あれは・・・・・・・やっぱ、星崎さんやよね?」 星崎がつるされていたのだ。 首には縄が食い込んでいるように見えてて、あんな高い所で自殺なんて出来ない。 きっと、杭を絡めて、力任せに引っ張って浮かせたのだろう。 しばらく締めていたのか、星崎の顔はひどく蒼白かった。
しばらくして、皆が集まってきた。 「!!!みっ・・・・・美千代・・・・・美千代!!!」 有美子が叫ぶ。 「・・・・・・・・・・・・・・にしても何で?何でなん・・・・?・・・何の関係もないやろ・・・・?星崎さんには・・・・・・・・・・・・・なんで・・・・?」 佐藤が混乱している。 「・・・・あんな高い所、梯子(はしご)もないんだし・・・・・・・・」・ 「あら・・・・・・・・・で、でも、梯子がないなんて・・・・?普通置いてあるものじゃ・・・?」 片山と上原が戸惑う。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、なにこれ?」 「え?」 連が発見したものは、青い粉のようなものだった。 「・・・・これ・・・・・・ファンデーションやんね?」 「ファンデーション?」 「ウチはあんま使わへんけど、女性やったらたいがい使うんちゃう?ほんでも、青いファンデーションやっとる人なんか今日おらんかったけどな・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
*************************** それぞれ別荘に戻った。 やはり遺体はそのままだ。 梯子でもない限り、あんなに高い所につるされた遺体を降ろすことなどできない。
そもそもあの礼拝堂は広く、元は私立の女子校で使う教会のようだった。シスターがそこで住んでいたこともあり、部屋がたくさん残っている。なので犯人が隠れている可能性だってあった。なので皆即座に離れたがった。
「・・・・・なんでなん・・・?あのキザ男の言うとおりになったな・・・・・・“連続殺人”やん・・・・・・・・・なんでやのん・・・・?郷田さんと星崎さん・・・・接点なんかなんもないやんかぁ・・・・・」 「・・・・・・・・星崎さんの部屋行ってみる?」 「え?」 「・・・なんかあるかもしんないじゃん。あの足跡は・・・星崎さんのものでしょ?だったら、何で礼拝堂行ったかわかるかも、じゃん」 「せやな・・・!・・・にしても、何で足跡が一人分で、それも行きの分しかなかったんやろ?犯人・・・どうやって帰ったん?やっぱり礼拝堂の部屋に隠れとったんかな・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
************************** 星崎の部屋。
星崎の部屋には、隅っこに大きなカバンがあるだけで、めだったものはなかった。 「・・・・ええんかな?勝手にあけたりして・・・・・・・・って、わー!連ちゃん、何あけとん!?」 「いーじゃん別に。誰もおこんないよ」 「そ、そやけどなぁ・・・・・・・・ええい!!ウチもふっきれるわ!星崎さん、失礼しますよ!!」
星崎のカバンからは、特におかしなものは見つからなかった。 しいていうなら、スキー用品、そしてお茶するために持ってきたというステンレスポットが二つ。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」 連は、星崎のカバンからライターを見つけた。 (ライター・・・・・・?)
「・・・・連ちゃーん、なにやっとんのー?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「おーい、連ちゃーん?」 「・・・・・・・・・・タバコが無い」 「え?」 「ライターあるのにタバコが無い。おかしーんじゃないの?これ」 「えっ、別にタバコ吸わん人でもライターはもっとるんちゃう?」 「なんで?この辺は別に火にふじゆー(不自由)してないし、ライターなんか余分だと思うんだけど・・・・・・」 「犯人がタバコ持ってったとか?」 「箱ごと?」 「ん〜〜〜〜〜・・・・・わっからへんッ!!!ウチ無理やわ〜こういうの!!あかん、頭いたなってきた!!」
(・・・・・・・・・・・・・・・・・これ、もしかして・・・・・・・・・・・・)
*************************** 「あ・・・どうも」 「あ!どーも♪」 連と佐藤が上原とすれ違った。 「上原さんっ!片山さんがアンタに謝ってましたよ!『日帰りだったのに上原君に申し訳ない』って」 「日帰り?・・・・・きっと違いますよ」 「え?」 「コースを勝手に決めたんです、片山さんは。・・・日帰りで帰るつもりだったら絶対あんなムチャクチャに決めていません!おかげで外泊の用意もしていなかったから・・・」 「あ〜〜・・・・・確かに少しハチャメチャやね、あの人。でも楽しい人やん!」 「楽しくても・・・・・」 上原は、ゴーヤとヨモギを一気に飲んだような顔をした。
*************************** 「あ〜〜〜〜〜〜疲れたなぁ・・・・・・・・・なんでこんなんになったんやろね?」 「さぁ・・・」 「・・・話でも聞いてみる?例えば・・・桜木さんとか」 「え?」 「ほら、桜木さん丁寧やん!・・・それにな、ウチ、な〜んかにおうんよ!あの2人!!」 「あの2人?」 「盛岡さんと上野さんやっ!な〜〜〜んかありそうやねん、二人・・・」
【コン、コン・・・・】 「あ、ハイ・・・」 連と佐藤は桜木の部屋へ来た。 「あの、桜木さん、ちょっとい〜ですか?」 「え、ええ・・・・」
************************** 桜木の部屋。 「あの、何か?」 「え〜っと・・・・・・、連ちゃん、パスッ!!!」 「え〜?」 「何聞けばいいん?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんでそんな怖がってるの?」 「えっ!?え・・・・、え、なんで?」
「・・・・・・・・・・・・・・あんたさっきから目が泣いてるし」
「!!!!!!」 連の一言で桜木の表情が凍りつく。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・やっぱね」 「えっ、ええ!れ、連ちゃんっ、それどーゆーこと?」 「・・・・さぁ・・・、おとーさんが言ってたから。“相手の目を見れば言いたい事がわかるし、知られたくなかったら相手の目を見るな”って。・・・目見たら泣いてた」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 しばらく間をおいて、桜木は言った。
「・・・・・お二人は知るはずありませんよね・・・・・・・・・・・・、中3の冬に・・・・・・、前田 勉(まえだ つとむ)君と言う生徒が亡くなって・・・・・・その生徒の死因が、麻薬による中毒死兼、事故にあったからで・・・・・・・・・・・・・・・・・・・怖いんです、私。勉君の呪いなんじゃないかって・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・その、前田勉って言う生徒について教えてくれません?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ハイ・・・・・」
こうして、桜木の、15年も前に死んだ前田勉と言う生徒に対する話が始まった。
|
|