“カオル”は準備をする。 (急ぐのだ。私は、この女を縛り上げる必要があるのだ。 この女の息の根を止める必要があるのだ。 この女をギリギリまで縛りあげろ。そして発見者を待つのだ。 教えてやる、コレは余興などではない事を・・・・・・・・・・・)
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連と緑、つかっちゃん、そして佐藤は居間にいた。 「なぁ、連ちゃん?あんた、鋭いな〜〜〜!ウチ、全然気づかへんかったわぁ!!」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「連ちゃん〜?」 「あの、佐藤さん、連ちゃんをそっとしておいたほうがいいですよ。何か考えてますから」 緑が言う。幼稚園に入園した歳の夏に連と友達になって8年なので、よくわかるらしい。 「・・・・・・・・あのさぁ、“謎解ききこー”ってどーすんの?」 「ああ、もう、それどころやないやん!あっ、そや!!庄治はんに言うてこよ!!人魂どころやないやん、こんなん!!むしろこっち解決した方がおもしろいやん!!よし、言うてくるわ〜〜〜!!!」 そして、佐藤はスタタタと去っていった。
「・・・・・・・・・・・・・・・元気な方ですね」 「・・・まーね」 *************************** 夜。 「連ちゃん・・・たいへんな事になりましたね」 「んー・・・・・・どっかいくと必ずなんかあるんだよね」 「そうですね・・・・・。でも、連ちゃんならすぐにわかりますよ♪」 「・・・・・・・・・あのさ、緑」 「え?」 「・・・緑だったら、すごく慌ててるとき、なんかを忘れたりする?・・・電話切るの忘れたりとか」 「えーっ・・・・うーん、きっと、やってることを途中でおいておきちゃいますね・・・、そんなに慌てる事ってないですけど」 「んー・・・・・・・・、居間にいく?」 「えっ?」 「さとーさんが通ったみたいだし。ヒマだし」
*************************** 居間。 佐藤と星崎と有美子と片山がいた。 「あら、連ちゃんに緑ちゃん」 「あれ、連ちゃん。どないしたん?」 「ヒマ」 「ヒマ、かぁ〜〜〜・・・・・、警察、来ようにも来れへんやろ?雪山やし・・・まぁ一応呼んだけどな」 「お茶、飲む?私念のため持ってきたのよ」 「ウン、飲む」 「あ、いただきます」 「星崎はん、用意ええな〜〜〜!」 「フフフ、こう寒いところだと、たまに水が出ないときがあるのよ」 「ヘー!!!」 「あら、おいしいわねぇ、このお茶!」 「フフフ、ありがとう片山さん」 「ア〜ア!日帰りのスキーだったのに、たまたま泊まった別荘でこんなことが起こるなんて!上原君に申し訳ないわ!・・・・・あ・・・・」
片山が有美子に気づき口を手で覆う。
「ごめんなさい、有美子さん・・・・・」 「いえいえ、気にしないで」 「有美子、自分の夫が死んだって言うのに元気ね?」 「・・・・・・・・元々愛なんてなかったもの・・・・・・」 「そうだったの・・・・・・」 「・・・・・・・・片山さん日帰りだったの?」 「え?ええ」 「・・・遺体ってあのまま?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ、そうやで」 かなり気持ち悪そうな表情で佐藤が言った。 「あのままだと・・・・・・・・・腐敗してしまうんじゃない?」 「ああ、それは大丈夫ですよ・・・多分・・・・・・・・・オエッ・・・・、けど、あんなん置いとく場所ないでしょ?まさか外に置くわけにも・・・・・・・置きましょか?」 「えっ・・・」 「じょーだんやて、じょーだん。・・・・あのまま置いたらやばいですか・・・?」 「・・・・・・・・・・・見に行って来て良い?」 《・・・・・・・・・!!》 緑以外は驚いた。 まさか、小学生がまた現場を見たいなんて、それも遺体がそのままにしてある場所なんて、たとえ興味本位でも見たいなんて口に出せるはずがない。 緑は、特に驚いた様子も無く、“コレが連ちゃんなんです”と言う風だった。
************************** 現場。 遺体はそのままだった。 連達は遺体を無視して現場に入った。 「・・・・・・・・・・・・・・・あれ?連ちゃん、これなんやろ?」 「?」 佐藤が、郷田のカバンから注射器のようなものを出した。 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・なん?これ・・・・・注射器?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あー、それでか」 「え?」 「・・・・・・・・・・・・・・それ多分・・・・・・・・・・・・――――――」
【ボウッ・・・・・・・・・・・・・・・】 「!!?れ、連ちゃん!あれ・・・・?!」 「?」 緑が指さした先には―――――人魂らしき、陽炎のような光があった。
「・・・・・・・・・・あ、あれ!?人魂ちゃうん!?」 「・・・あるわけないでしょ」 「でもっ、現におきてるで!?よしっ、連ちゃん、行くで〜〜!あっ、緑ちゃん、庄治はん起こしてきてくれん?」 そういい終わらないうちに佐藤は連の手を引っ張って強制的に連れて行った。 連は、だるそうな表情で引きずられていた。
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「・・・・・ここやね・・・?こんな近くやったんやね、礼拝堂」 人魂は礼拝堂から出ていた灯りだった。 「・・・・誰かいったんだね。足跡が一人分ある」 礼拝堂には、足跡が一人分――しかも、行きだけの足跡があり帰った様子はなかった。 「これ、帰っとらんね?ほな、会えるやん?誰が灯りともしとったか!入ろか!」 **************************
礼拝堂の中。 なぜか鍵が開いていたのだ。 「鍵あいとるね・・・?どーやってあけたんやろね?ウチらの前に入ってった人」 「さー・・・・・」 「にしても、誰もおらへんね・・・・・・・?」
「・・・・・・あれ?」 連は、紙コップの中に水が溜まっているのを見つけた。 その水は、直接入れたのではなく、どこかから漏れているものだった。 「・・・・・・・・後でおとーさんに舐めさせるか」(←ひどい)
「・・・・・・・れ・・・・・・・・・連ちゃん?」 「ん?」 「・・・人って、空飛べると思う?」 「・・・・・・・・・・・え?」 「・・・・・・・・・・無理やろ?・・・・だったら・・・・・人があんなトコにつるされるのは・・・・・・無理やろ?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・、あ・・・・・・そーいうこと」 「な?・・・・・あ、ありえへんやろ・・・・・・・・・・・・・・・?」
佐藤が指さした先には、とても高い場所につるされている死体――――星崎美千代の姿があった。
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