薬品の臭いがプンプンする部屋を出た。
そして一旦外へ出た。 「・・・フー・・・・。・・・藍ちゃん寝てるよ?」 「ああ。・・・・・・・んー・・・・・・」 「なに?」 「いや、クリスマスに雪降らねえのかな、と」 「雪?」 「ああ。天気予報で言ってたからな。今年は雪が降らない、って」 「フーン・・・・・・・・・・・」
そのとき。 【ファンファンファンファンファンファンファンファンファン・・・】 パトカーのサイレンが鳴り響いていた。 「なんだ?」 「?」 どうやらひったくり犯を捕まえたようだ。 そこには、偶然か否か、例の意外なところに接点がある三人の刑事――三浦、吉田、村井がいた。 「・・・・・よし、連。行くぞ。 「ハ?」 「聞いてみるんだよ、あの三人に!」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・何を?」 「さぁな!!」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・またあんたらか」 相変わらずの仏頂面の三浦。 「・・・用はないんで」 「あ、でも、ちょ・・・・」 「・・・・・・・・・・・・奥さん亡くして心も亡くしたんだ?」 「「!!!!」」 小声で、でも聞こえるように言った連の一言に三浦は動揺した。 「・・・・なんだよ、ガキ」 「・・・まぁ死んだのは悲しいだろうけど・・・いつまでもそんな風にいたら喜ばないんじゃない?」 「るせぇ・・・・・・テメェみたいなガキにわかるか」 「・・・・まぁね。お母さん死んだときもあたし小さかったからわかんなかったし」 「!・・・・・・」 「お父さん、何聞くの?この人に」 「えっ、あ、ああ・・・・・。・・・・日延さんとの接点があるかどうかを聞きたくて。」 「・・・・フゥ・・・・・。・・・わかってたんですよ、優華が死んだのは誰のせいでもないって」 「え?」 「けど、誰かを怨まずにいられず、そして自分を怨みましたよ・・・。・・・あの日延医師は、俺の妻の優華を担当しましたが・・・別に怨んでなんてないですよ」 「そうですか・・・・」 心なしか、三浦の言い方が少しやわらかくなった気がした。
「あ、時野さん達。どうも」 続いては、いつも陽気そうな吉田。 「・・・カルテを見せてもらったんですが・・・9月2日に・・・息子さんが亡くなったと・・・・」 「!・・・・・・・・・・・・・・・・」 「あっ!すみません・・・」 「いえ、いいんですよ。・・・・あの時・・・手術で・・・・・、・・・手遅れだったんですよ・・・でも、手術を何とかすれば助かる・・・・!そういう時だったんですが・・・・、魁人の手術を担当したのは若い医師ばっかりで・・・・・・・・死んでしまったんです、魁人は」 「そうだったんですか・・・・・・・・・・・・・・」 「あ、いいですよ、しんみりしないでくださいよ」
「・・・・・あっ・・・・・・・・・・・」 いつもオドオドしてて挙動不審の村井刑事にも会った。 「・・・と、と、時野さん。どう、も、おつ、かれ、さまです・・・」 「ハァ・・・・。・・・あの、“村井晶子”さんって・・・?」 「!・・・・・・・姉ですよ、僕の。優しくていい人だったのに・・・死んでしまったんですよ」 「そうだったのですか・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・“医療ミス”のせいでね」 「!?」 (医療ミス?) 「・・・もみ消されてしまいましたけど・・・・・クッ・・・・!!!」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 これ以上聞くのは困難かと思い、庄治は連と共に引き上げる事にした。 「では、これで・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ニヤッ」 “犯人”は笑った。ニヤリと。 “あの赤ん坊”をいずれ殺すと誓った、不敵な笑みだった―――。
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