12月の初めの日曜日。
「・・・ファア〜〜・・・ねむっ・・・・さむっ・・・・・・雪、降ってたんだ・・・・・」 朝10時、外にでてみた少女――時野 連(ときの れん)。 いまどき珍しいくらい面倒くさがりでマイペースな小学5年生。普段はずっとボーッとしてて、誰が見てもトロくさそうで、なるようになると考えてる少女だ。 だがこの少女はいざとなるととても頼りになる。友達思いで正義感も強くて、自分の損得を考えずに、相手が誰であろうと違うことは違うといい間違ってることは簡単なやり方で正す。いじめや不正、うるさい事や面倒くさいことが大嫌い。 何より“推理力”“観察力”“洞察力”は天才的で、数々の事件や暗号を見抜いた。
「・・・ギャッ、フギャッ、オギャッ・・・・・」
「・・・・・?」 事務所(兼家)の隣の路地裏から赤ん坊の声。 「・・・・・・・・・・・・・・・赤ん坊?」 連が覗くと―――ピンクのベビーカーに、赤ちゃんがいた。 「・・・・・・・・・・捨てられたの?ふぅーん・・・・・」 「・・・あ、あー?ぎゃっ、ぎゃっ・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・ここにおいておいたら死ぬよね・・・それに、よく死ななかったね、この寒さで」 「あー?」 「・・・・・フフッ・・・・じゃあ、連れて行こうか」 連は赤ん坊を抱き、事務所内(兼家の中)へ入っていった。
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【ガチャ・・・】
「・・・ねー、お父さん」 「あー?なんだー?」
連の父――時野 庄治(ときの しょうじ)。この探偵事務所の所長だが推理力はゼロ。ゆえに連に頭が上がらないときがある。
「・・・・・赤ん坊拾ったんだけど」 「ブッ!!!!・・・・あ、赤ちゃん?」 「うん、捨てられてたみたい」
そして、この赤ちゃんの黄色の服には、赤い刺繍で『ひのべ あい』と縫ってあった。 「ひのべ・・・あい?じゃあこの子“あいちゃん”か」 「ヘー、しっかしわかんねぇな・・・こんなかわいい子を捨てるなんて」 「・・・・・・この子泣かないね。人見知り激しくないんだ」 「あー、なるほどな!お前も赤ん坊の頃泣かなかったから違和感が無かったよ」 「ふーん」 庄治がTVのスイッチをつけると・・・・・・・・・ニュースが流れた。
《えー、次のニュースです。昨夜未明、日延 吉夜(ひのべ よしや)さんと日延 麻紀(ひのべ まき)さんが、後頭部を石で殴られていました。二人とも今のところ意識不明です。尚、行方不明になった赤ちゃん、“日延 藍(ひのべ あい)”ちゃん、一歳三ヶ月を探しております―――》
「・・・・・日延藍?・・・・この子のことじゃない?」 「・・・・・らしいな。どうやらこの子は捨て子じゃないらしいな」 「そうらしいね・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 連と庄治は藍ちゃんを見た。何も知らない藍ちゃんは天使のように笑っていた。
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