12月24日。
《残念ですが、ホワイトクリスマスは期待できませんね。地球温暖化により暖冬が進んでいます。―――》
こんなニュースが街中で流れる中、一つの車が『時野探偵事務所』の前に止まった。 日延家の車だった。
「・・・・・・・・・ダッ!!ダー、ダ」 「藍っ・・・・・・!!!」 「ダー!!キャッキャッキャッ」
藍ちゃんは両親との再会を喜んでいるようだった。
「・・・あ・・・・・・時野庄治さん。藍を・・・・有難うございました」 「いえ。藍ちゃんは、人見知りもしない良い子でしたよ」 「そうですか・・・・・。・・・・・あの人に追われていたとき、藁にもすがる思いでベビーカーをここに置いたんです。必死の賭けでした。探偵さんなら、藍を助けてくれるかもしれない・・・そう思ったんです。 その勘は、当たっていたようですね」 「ええ、いや、まぁ・・・・・・」 「あの、コレ・・・お礼なんですが・・・・・」 そう言い、藍ちゃんの母親の日延麻紀は、札束を差し出した。 「えっ、いっ、いえ!いただけませんよ」 「でも・・・・・」 「いいよ、別に。いらないから」 連が言う。 「・・・・・・・・・・本当に・・・?でも・・・・・・」 「いいんですよ、日延さん」 「・・・ありがとうございます、時野庄治さん。それと・・・娘さんも」 「ううん」 「・・・じゃあ・・・・藍、行きましょう」 「・・・・ダッ?ウェェッ・・・・・」 藍ちゃんは不意に泣き出した。 「・・・・・・・・・・・・・藍ちゃん。お父さんとお母さんの家で、ちゃんと暮らすんだよ?」 「・・・・・れーん・・・・・・」
そのとき。
【ハラ、ハラ、ハラ、ハラ、ハラ・・・・・】
《!》 白くて丸い雪がゆっくりと降り始めた。 雪なのになぜか暖かかった。 (今年は降らないって言ってたのに・・・・・。天使が降らせたのかな?) 暖冬には珍しい雪だった。キレイなキレイな雪・・・・・・・・・。
「・・・・では・・・・・・・・。・・・本当にありがとうございました。」 日延吉夜と日延麻紀は、深々とお礼をいって、藍ちゃんを連れて帰っていった。 **************************** 「・・・・フゥ・・・・・・・・雪・・・・・ふってるねぇ・・・・」 「ああ・・・。・・・・藍ちゃんが降らせたのかもな?」 「・・・・かもね」 「ようし!!連、パーティーでもするか?」 「ハ?なんで?」 「何でって、今日はクリスマスイヴだぞ?」 「ふーん?」 「それに、今日はお前の誕生日だろ?11歳の。」 「そうだっけ?」(←3回目) 「・・・まぁ・・・お前がしたくないんならいいぞ」 「・・・・・・・・・・・・・んー・・・・めんどい」 「モンブラン買ってきたけどな〜。」 「やる」 「切り替え早いな・・・・・」 「まぁ、いいんじゃん?」 「まぁ、そうだな。じゃあ、食うか」 「うん」
ふと、連は後ろを振り返った。 そして、フッと笑ってこう呟いた。
「・・・・・・・・・・メリークリスマス、藍ちゃん」
<《時野探偵事務所シリーズ》第四作目『黒い瞳の天使』 終わり>
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