みんな、吉田の告白を黙って聞いていた。 同情する気にもなれず、激するわけにも行かなかった。
その時。
【ピピッ・・・・ピピッ・・・・・】
この部屋と隣の部屋から同時に、同じ音が鳴った。 「!!・・・意識が・・・戻った・・・・?」 大岩が呟く。 「オイ!すぐに集中治療室に運べ!!」 《ハイ!!》 ナースたちが動く。
部屋に現在いるのは、三浦、吉田、村井、庄治、連。 「・・・・・・・・・・あのさぁ」 ふいに連が吉田に言う。 「・・・・・・・・・・・・・・藍ちゃんに罪はないでしょ?下手したら、藍ちゃんは親のない子になってたんだよ?確かに手術すっぽかしたのも悪いけど・・・子供を思うためだったんだし。別に味方するわけじゃないけど。・・・・何も悪くない人を苦しめるのって・・・あたし大嫌いなんだけど」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・かもね・・・・・自分を見失っていたのか・・・・・きっと。人を救いたくて警察になったのに・・・・・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 吉田はその後無言だった。 罪を反省しているのか、それとも尚自分の罪を肯定しているのか。 我が子を思うが為の事件。 今回の事件は誰が一番悪いのだろうか。 手術日に、娘の誕生日だからこそ抜け出した、被害者の日延吉夜? 逆恨みして、日延家を襲った、犯人の吉田?
今となっては何もわからない。
ただ、コレだけは言える。
一番悪いのは、“人の命を奪うこと”だ。 一番悪いのは、“無罪の人を苦しめる事”だ。 一番悪いのは・・・・・・・・・・・・・・・・・・・――――― *****************************
藍ちゃんの両親の意識が回復した。 「・・・・・・・よかったねー、藍ちゃん」 「ダー?」 「・・・さぶっ」 「オーイ、連。藍ちゃんの両親から電話があった」 「電話ー?」 「・・・・・・・・・退院できるのがもうすぐだってさ。それで・・・藍ちゃんを引き取りに来るって」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・フーン」 「で・・・・12月24日・・・・クリスマスイヴの日に、迎えに来るってさ」 「イヴねぇ・・・・・・・」 「イヴといえばお前の誕生日だろ?」 「そうだっけ?」(←自分の誕生日を二度忘れる) 「・・・・・・・・・・・・・・・・。・・・藍ちゃんともお別れだな」 「・・・・いいんじゃないの?だって、親の元に帰れるんだし」 「まぁなー・・・・・・」 別れを感じ取ったのか、藍ちゃんは不意に寂しそうな顔をした。 「・・・・藍ちゃん、本当の親の元へ帰れるんだよ?藍ちゃんには、ちゃんと両親がいるんだから」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・れ、れーん」
「!」 難語だった藍ちゃんが、初めて言葉を口にした。 それも“れん”と。 「ほー、“れん”が初めての言葉か!藍ちゃんは!」 「れ、れーん、れん、れーん」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん」 クリスマスイヴ――藍ちゃんとのお別れまで、後数日。
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