そしてその後。 一宮総合病院では父でもある院長が責任に問われ、ニュースや新聞で大々的に取り上げられることになった。 屋上から降りてきた連と庄治の前に、剣淵がいた。 「けっ、剣淵警視総監!!」 「・・・時野庄治か。変わりねえなぁ・・・。・・・・・、お前か?」 「何が?」 「お前が、一宮沙耶香が犯人だとわかったんだろ。」 「・・・・ンー・・・・まーね。なんとなく。初めて見たときから、なんか目が泣いてたし」 「・・・お前、勘いいな。父親とは大違いだぞ」 「剣淵警視総監、それってどういう・・・・・」 「・・・・・ありがとな」 「?なんで?」 「イヤ、別に・・・」 「????」 「あ、それと・・・・、東城美希と和田和正のそれぞれの秘密も明らかになった」 「?誰それ?」 「・・・覚えてないのか」
連は記憶力はいいほうだが、今後必要ないと脳が判断したものはすぐ忘れてしまうのだ。
「・・・東城美希。あの気の弱そうな中学生だ」 「・・・あー、あの人か」 「・・・一宮沙耶香が万引きしているのを偶然見たらしいんだ・・・、それで、一宮沙耶香に脅されたらしい。“これからテストの度に答えを教えるから黙ってなさい”と。ちょうど内申点にも響くテストの時期で、成績も伸び悩んでいたから、その契約を飲んだんだとさ」 「ふーん・・・、“ナイシンテン”って何?成績ってそんなに重要なの?・・・悪い事見逃すぐらい重要なのかなぁ・・・・・」 「さぁな・・・・・。・・・和田和正は・・・・・・・・、お前には言いたくない」 「?」
和正は、“少女買春”が趣味だった。そして、少女とホテルに入る所を夕紀達に見られ、脅されてたと言う。
剣淵が連にそういわなかった理由――言わなくてもわかると思う。 まだ小5の連にそんな事言いたくなかったからだ。そもそもまだその言葉の意味もわからない連に下手に意味を追求されても困るから。
「まー、いいけどさー。・・・本音隠して底で叫んでる“人形”ってたくさんいるんだね。親の言いなりとか理解できないけど」 「連、お前はもう少し親に気を使え」 「やだ」
*************************** そして、警察やパトカーは帰り、連と庄治も歩いて帰ることにした。 「ひゃー、夕焼けがキレイだなー」 「んー・・・お父さんは何で探偵になったの?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「・・・言いたくないんだ」 「・・・・ま、まぁな」 「ふーん」 「・・・ヒマだなー、しかし。・・じゃー将棋するか?」 「なんで?」 「ヒマだから。頭の中に板と駒を思い浮かべて言葉でやろうぜ」 「いいよ」 「じゃー、“本音”賭けないか?」 「・・・何それ?」 「簡単に言えば・・・秘密にしてることを、負けた方は勝った方に言うってやつだな」 「別にいいよ」
そして10分後。 「・・・詰み」 「!!・・・負けた・・・・」 「じゃー、何で探偵になったか教えてよ。あたし勝ったんだし」 「・・・・・・・・・・・・・・」 「・・・じゃーモンブラン買ってくれる?」 「ハ!?」 「5個でいいよ。お父さん2個であたしが3個だから。・・・あたし勝ったんだし良いでしょ?」 「オイ、誰も買うなんて・・・・―――」 「じゃーなんで探偵になったの?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」 「ハイ、決まりね」
【・・・・ダッ!!】
「オイッ、連!!」 庄治の抗議も気にせずに連は走り出した。父親から逃げるように。
(フゥッ・・・・・・、・・・お父さんに3個あげようかな?・・・にしてもなんで探偵になったんだろ・・・・・)
<《時野探偵事務所シリーズ》第三作目『人形達の叫び』 終わり>
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