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人形達の叫び 作者:りみ

第20回   17 紙切れ一枚で
2ヶ月前の出来事、動機を淡々と悪びれる様子も無く沙耶香は話した。
「・・・フゥッ・・・!・・・・あいつらが悪いのよ・・・・!!あいつらが!!!」
「・・・・フーン・・・・」
「クスクスクス・・・・!!あんたなんかにわからないわよ!!親からも学校からも縛り付けられて周りは違う目であたしを見る!!もう耐えられない!!!何よ!!あいつらが死んで誰かが泣く!?誰かが悲しむ!?・・・あんなやつら生きる価値なんて無いんだから!!・・・何よぉ!!この世は“ゲーム”じゃない!!悪いキャラがいて、主人公がそれを倒す!!何が悪いの!?・・・誰もあたしの気持ちなんてわからない!!誰も―――」










「わかるわけないじゃん」









「―――・・・え?」
沙耶香の悲鳴にも似た叫びをさえぎるように連は言った。
そのときの連の目は、犯罪者や悪人だけに見せる“人を見下した目”で、沙耶香を睨んでて、怒りをこめたように言った。
「あんたの気持ちなんかあたしがわかるわけ無いじゃん。あたしはあんたじゃないし、みんなあんたじゃない。あんたの気持ちは口に出さない限りあんたしかわからない。自分の本音をずっと我慢してたくせに、わかってほしい?誰もわからない?・・・何甘えてんの?人の気持ちは口に出さないとわからないって、まだわからないの?」
「っっ・・・」
「じゃああんたは殺された3人の気持ちがわかる?親や先生の気持ちがわかる?・・・・・もっと簡単に言うと、あたしが何考えてるかわかる?・・・わかんないでしょ」
「・・・何よ・・・・!何よ!アンタみたいなガキ・・・・・!!」




「“ゲーム”ねぇ・・・・・、つかっちゃんの家で緑とやったことあるけど・・・・、ゲームはそんなに身勝手じゃないよ。ゲームは、理由があるからこそ主人公が悪キャラを倒すんじゃん。アンタの場合身勝手じゃん。・・それに・・・・、命はゲームじゃないから。ゲームはリセットボタンが押せるけど、命はリセットしたってできないんだから・・・・・。そんなこともわからないの?命は・・・・ゲームじゃ無いんだよ」






「・・・っ・・・・!!・・・フフフ・・・・!!ハハハ・・・・!!・・・なんか嬉しいなぁ・・・・」
そういった沙耶香の顔は、フッ・・・と、悲しくもどこか嬉しそうな顔だった。
「今までそんな風に言われた事ないよぉ・・・・・、お父さんやお母さんは、私を医者にさせるためにうるさいしさぁ・・・・説教なんてされたこと無いよぉ・・・・・・学校の皆も、私が勉強できて生徒会長だからこそ寄ってくるんだし・・・“トモダチ”なんていないし・・・・・・・ハハッ・・・・もっと早くにあんたと出会っていたかったよ・・・全て終わりだよ・・・!ハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」


【グラァッ・・・・・・】

沙耶香はフェンスから身を乗り出した。
「・・・・・・・・・・・・!」













【・・・・・・・・・パシッ!!!!】





「・・・なんで?何で助けたのさ・・・・」
「・・・・・・死なれたら困るんだけど。」
宙吊り状態の沙耶香の腕を連がつかんでた。今連が手を離せば沙耶香は落ちる――そんな状況だ。
中学生を小学生が持ち上げるのには無理があった。
後ろにいた庄治が引き上げた。
【ファンファンファンファンファンファンファン・・・・・】
パトカーのサイレンの音が聞こえる。



「・・・命はゲームじゃないから。・・でも“やり直し”はできるんだよ。死んだらやり直しは出来ないけど、生きてたらやり直しはできるから」




「・・・・あんたって、本当に小学生?」
「うん」
「・・・・・・・・、そっかぁ・・・・・・・ありがと。なんか・・・叱られたかったみたい。ヘヘ・・・・・」
そして沙耶香は警察に連れて行かれた。




**************************
大きな夕焼けが見える。

連は屋上で紙切れ一枚を見つけた。

(・・・?)

拾って広げると、答案用紙――沙耶香の満点のテスト用紙だった。
「・・・・・・・・・・・・、ねぇ、お父さん」
「んー?」
「・・・こんな紙切れ一枚で、人の人生って決まっちゃうんだね」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ」
「バカみたいだね・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」








そういい、連は答案用紙をバッ・・・と手から放した。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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