2ヶ月前の出来事、動機を淡々と悪びれる様子も無く沙耶香は話した。 「・・・フゥッ・・・!・・・・あいつらが悪いのよ・・・・!!あいつらが!!!」 「・・・・フーン・・・・」 「クスクスクス・・・・!!あんたなんかにわからないわよ!!親からも学校からも縛り付けられて周りは違う目であたしを見る!!もう耐えられない!!!何よ!!あいつらが死んで誰かが泣く!?誰かが悲しむ!?・・・あんなやつら生きる価値なんて無いんだから!!・・・何よぉ!!この世は“ゲーム”じゃない!!悪いキャラがいて、主人公がそれを倒す!!何が悪いの!?・・・誰もあたしの気持ちなんてわからない!!誰も―――」
「わかるわけないじゃん」
「―――・・・え?」 沙耶香の悲鳴にも似た叫びをさえぎるように連は言った。 そのときの連の目は、犯罪者や悪人だけに見せる“人を見下した目”で、沙耶香を睨んでて、怒りをこめたように言った。 「あんたの気持ちなんかあたしがわかるわけ無いじゃん。あたしはあんたじゃないし、みんなあんたじゃない。あんたの気持ちは口に出さない限りあんたしかわからない。自分の本音をずっと我慢してたくせに、わかってほしい?誰もわからない?・・・何甘えてんの?人の気持ちは口に出さないとわからないって、まだわからないの?」 「っっ・・・」 「じゃああんたは殺された3人の気持ちがわかる?親や先生の気持ちがわかる?・・・・・もっと簡単に言うと、あたしが何考えてるかわかる?・・・わかんないでしょ」 「・・・何よ・・・・!何よ!アンタみたいなガキ・・・・・!!」
「“ゲーム”ねぇ・・・・・、つかっちゃんの家で緑とやったことあるけど・・・・、ゲームはそんなに身勝手じゃないよ。ゲームは、理由があるからこそ主人公が悪キャラを倒すんじゃん。アンタの場合身勝手じゃん。・・それに・・・・、命はゲームじゃないから。ゲームはリセットボタンが押せるけど、命はリセットしたってできないんだから・・・・・。そんなこともわからないの?命は・・・・ゲームじゃ無いんだよ」
「・・・っ・・・・!!・・・フフフ・・・・!!ハハハ・・・・!!・・・なんか嬉しいなぁ・・・・」 そういった沙耶香の顔は、フッ・・・と、悲しくもどこか嬉しそうな顔だった。 「今までそんな風に言われた事ないよぉ・・・・・、お父さんやお母さんは、私を医者にさせるためにうるさいしさぁ・・・・説教なんてされたこと無いよぉ・・・・・・学校の皆も、私が勉強できて生徒会長だからこそ寄ってくるんだし・・・“トモダチ”なんていないし・・・・・・・ハハッ・・・・もっと早くにあんたと出会っていたかったよ・・・全て終わりだよ・・・!ハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!!」
【グラァッ・・・・・・】
沙耶香はフェンスから身を乗り出した。 「・・・・・・・・・・・・!」
【・・・・・・・・・パシッ!!!!】
「・・・なんで?何で助けたのさ・・・・」 「・・・・・・死なれたら困るんだけど。」 宙吊り状態の沙耶香の腕を連がつかんでた。今連が手を離せば沙耶香は落ちる――そんな状況だ。 中学生を小学生が持ち上げるのには無理があった。 後ろにいた庄治が引き上げた。 【ファンファンファンファンファンファンファン・・・・・】 パトカーのサイレンの音が聞こえる。
「・・・命はゲームじゃないから。・・でも“やり直し”はできるんだよ。死んだらやり直しは出来ないけど、生きてたらやり直しはできるから」
「・・・・あんたって、本当に小学生?」 「うん」 「・・・・・・・・、そっかぁ・・・・・・・ありがと。なんか・・・叱られたかったみたい。ヘヘ・・・・・」 そして沙耶香は警察に連れて行かれた。
************************** 大きな夕焼けが見える。
連は屋上で紙切れ一枚を見つけた。
(・・・?)
拾って広げると、答案用紙――沙耶香の満点のテスト用紙だった。 「・・・・・・・・・・・・、ねぇ、お父さん」 「んー?」 「・・・こんな紙切れ一枚で、人の人生って決まっちゃうんだね」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ああ」 「バカみたいだね・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
そういい、連は答案用紙をバッ・・・と手から放した。
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