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人形達の叫び 作者:りみ

第19回   16 身勝手なゲーム
話は2ヶ月前にさかのぼる。
9月。
夏休み明けのことだった。
夏休み明け早々テストがあり、沙耶香はいつもどおり満点だった。
だが・・・プレッシャーはそれ以上に大きかった。
プレッシャーは、中学に入学したときからそうだった。
沙耶香は、小6の冬に名門私立中学校を受験したが失敗し、いっそうプレッシャーがかかってた。

「沙耶香、今度こそ合格してくれ。そして、私のあとをついで医者になりなさい。」

これが、父の口癖だった。そして、沙耶香の答えも決まってた。

「ハイ・・・・・・・・オトウサン・・・・・」
これ以外に言うことはなかった。反論したくても出来なかった。
学校からも期待され、親からも期待され、本音をずっと隠してきた。
本当の自分をずーっと隠してきた。
そう、まさに、涙も流せず騒げず笑うことも出来ない“人形”と化した・・・。
見えない鎖で縛られ溜まっていた沙耶香は、ゲーム店で万引きをした。
初めてした時はドキドキしたが・・・終わってみると快感だった。


(ハハハハッ・・・!おもしろい・・・・!何でもっと早く気づかなかったんだろう!!)


そしてまた、”ゲーム”のおもしろさにもはまった。小さい頃にゲームなんてしたことが無かったがやりたくてしかたがなかった・・・・そんな願望が、現実世界をゲームへと変えた。
そう、全てゲーム。
自分が主人公なら、周りの人間は脇役、農民、悪人、動物。万引き店がショップで、万引きするゲーム等は武器。



・・・そんなある日。いつものように万引きをしていたら。


【・・・・カシャッ!】


「!?」

夕紀達に、ゲームをカバンに入れるところを撮られた。
「やっ・・・な・・・」
「みーちゃった、みーちゃった♪生徒会長でもそんなことするんだぁ〜!」
「やめてッ・・・!消して!!」
「フフフンッ・・・・・!あたしらの言う通りにするんならね!」
「え・・・・・?」

まさに地獄だった。
2ヶ月間、生きた心地がしなかった。
何かを買いに行かされ、金を立て替えられるのはまだマシな方だった。そのうち、他の生徒のサイフを盗めだの、あの店で万引きして来いだの、しまいにはアイツから金を奪え、と恐喝してきた。
「やっ・・・・!もうやめて!!・・・・もう貯金無いのよ・・・!それに・・・もう盗みなんて出来ない!!」
「こーんだけサイフ盗んだ子のいうセリフかな〜?」
「・・・っっ・・・その財布だってもう返す!!!私はもう嫌!!言ってやるわよ!あんた達が指示したって!」
「別にいいよぉ〜♪あたしらどーなったっていいもん!困るのはあんたでしょ?」
「そー、そー!一宮沙耶香!成績万年トップのあんたが“万引き”してただなんてバレたら・・・・おっそろしぃ〜♪」
「困るのはあんたでしょぉ〜?あたしら黙ってやってんだから、感謝しなさいよ♪」



「!!!!!」



その瞬間、沙耶香の思考回路は止まった。




――ワタシハコイツラニイッショウユスラレルンダ
ソツギョウシテコウコウニイッテモ、ダイガクニイッテモ、オトナニナッテモ・・・・イッショウオドサレル・・・モウイヤ・・・・・―――




そしてふと思った。
(!・・・な〜〜んだっ!!あいつらがなんだ!!このゲームの主役は私!!あいつらが主人公に勝てるとでも思うの?・・・ゲームはね・・・最初は主人公は負けるけど・・・・絶対に悪のボスは消えるのよ!あいつらだって・・・・主人公に消されるの・・・!ハハハハハハ!!!)




そして死亡推定時刻のトリックを思いついた。
家が病院で、かつ医者の勉強をしていた沙耶香はなりゆきで死亡推定時刻や体内のタンパク質のことも知っていた。
銃はオークションで手に入れた。偽名を使って・・・・。
(これでいい・・・・!準備は整ったわ・・・・!!ハハハ!!)
そして、“お金をあげるから許して”と言って神社に呼び出した。
「一宮〜いくらくれんのぉ〜?」
「ま、いくらでもウチラはダメだけどぉ〜」
そのとき沙耶香は暴言を吐いた。自分を追ってくるように・・・。



「あんた達って・・・サイッテー!そうやって人の事脅すしか出来ないんだもんね!!あんた達なんて生きてる価値無いんじゃない?頭も悪いし、ルックスもよくないじゃない!!バーカ!死んじまえ!!」



キョトン顔の夕紀たちはみるみるうちに怒った。
「んだとぉ、一宮ぁ!!!まてやこら!!」
そして計画通りに追ってきた。
そして学校までおびき寄せて・・・・・・・・



【ゴォ―――ン!!ゴォ―――ン!!ゴォ―――ン!!!】

鐘の音に合わせて3回撃った。練習していたため頭を見事に撃ち抜いた。
「ハァッ、ハァッ、ハァ・・・・!これでいい・・・!これでいいの・・!・・・あと1時間で塾かぁ・・・!早くしなきゃ・・・!」
そして、偶然発見したリボンを落とした。
フッフフフッ・・・・!!ハハハハハ!!!これでいいのよ!!これでいいの!!!私は悪くないわ!!!“主人公”が“ボスキャラ”を倒しただけよ!何が悪いの!!??ハハハハハッハハハハハッハハッハハ!!!」




沙耶香―――犯人は狂ったように哄笑した。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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