「・・・やっぱアンタだったんだ・・・・“一宮沙耶香”さん」 「・・!・・・フフッ・・・・!おもしろいのね、あなた・・・。・・・私が犯人?無理よ。私・・・人なんて殺せないわ・・・・」
“期待の星”と呼ばれる一宮沙耶香。 彼女は、容疑を否認している。 そして、少しオドオドしている美少女系の顔で連を見る。
「じゃあ何で逃げたわけ?」 「・・・・・っ・・・・、それはいいでしょう?別に。・・・あのね・・・連ちゃんだっけ?あなた・・・人を犯人呼ばわりしたら、刑法231条の侮辱罪になるのよ?例え小学生でもね・・・」
今の状況は、ビルの屋上で、フェンスを背にして立っているのが沙耶香。そしてそれと対立するように立ってるのが連と庄治。
「・・・弁慶って知ってる?・・・知ってるよね。あんた頭いいんだし。・・・お父さんに聞いたんだ・・・。激しい運動をしてる時にそのまま死んだ場合、死亡推定時刻が本当のよりも延びちゃうんだよね」 「!・・・フゥン・・・だから何かしら?フフッ?」 「あんたはそれを利用したんでしょ?」 「・・・・・・何が?」 「神社から学校まで、目で見れば近いけど、遠回りする道とかあってそこ行けば結構な距離だよね。陸上部はそこ毎日走ってるからそんなに苦にならないでしょ。けど、普通の人が走ったら・・・・マラソン並だから“激しい運動”ってことになるよね。・・・一旦神社に呼び出しておいて、なんか挑発的な事でも言ったんじゃないの?で、追いかけてくる3人を誘導して学校で撃ち殺した・・・・。・・・あの3人にしてみればすごい運動量だから、撃ち殺されて死んだときには、実際死んだのは6時でも死亡推定時刻は2時ぐらいになっちゃったんでしょ」 「フフフッ・・!おもしろい事言うのね?でもね、連ちゃん・・・?銃の音ってすごいでしょう?運動会とかで撃たれる銃・・・アレは空だけど、実際弾があったらすごい音なのよ?近所には家もあるし・・・」
「鐘の音」
「!!っっ・・・・・」
連の一言で、笑顔だった沙耶香が黙りこくった。
「あの鐘って、毎時鳴るんだよね。だったら、6時ぐらいに殺したら、ちょー度その瞬間に鐘が3階鳴る・・・だからその間に殺せば銃声はならないよ。それに・・・警察が調べたら足跡があったって。4人分のが。しかも、歩いたんじゃなくて走ったような感じのがあったらしいから」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だったら逆を言ってもいいんじゃないの?あの2人だって・・・できるでしょう?」
「・・・・あんたって、勉強できても頭悪いんだね。2回ボロ出したよ?一つ目はあのマネージャーのことを、“リボンをコーヒーで汚してしまうくらいおっちょこちょいだけど”って。・・・なんでアンタが知ってんの?リボンが汚れててしかもコーヒーのせいだって」 「!!・・・そ、それは、聞いたから・・・」 「それはないんじゃない?生徒みんなが帰った後にこぼしたから洗って干しといた。その後は誰も触ってないんだし。朝になると消えてた・・・だからあんた達が知ってるわけないんだよ。それに、わざわざリボンにコーヒーこぼしたなんていわないでしょ。・・・アンタが見たからじゃない?あの人に罪を着せるために落とそうとして・・そのときに染みを見たんじゃない?」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
沈黙する沙耶香。 「2つ目だけどさ・・・なんで万引きスポット知ってんの?“駅前のゲーム店は万引きスポットだけど”って。・・・なんで知ってんの?いくら友達でも誰かに“自分は万引きした”って言うやついないでしょ?あんな進学校だったら。ましてどこでやったかなんて言いっこないじゃん。・・・あんたも万引きやってたからでしょ?あんたが常習犯だから・・・知ってたんでしょ?・・・それと、あのゲーム店で万引きしてるのはあんただけじゃない?あたしが捕まえた男は駄菓子屋でやったし。」
「・・・・・・・・・・・フゥ―――ッ!!!・・・ア―――・・・ウゼェ・・・ウゼェんだよ!!」
今の沙耶香は・・・学校にいた時の、オドオドとした美少女の面影は無かった。気の強そうな犯罪者の面影の方が強かった。 さっきまでの笑顔の沙耶香とはまるっきり別人――狼の目をしていた。 「あ〜〜〜ああっ!!あたしのゲームが、あんたみたいなガキに見破られるなんてさ!!!」 「・・・やっぱあんたじゃん」
「ああ、ええ、そーですよっ!!あたしがやりました!!!・・・やってらんねーんだよ!!あんたにはわかんねぇよ・・・、毎日毎日本音を溜め込んで、友達でもなんでもない“その他の奴ら”とつるんでる毎日がどんだけ辛いか!!親からも学校からも期待されてどんだけプレッシャーか!!あんたらにわかるわけないんだよ!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
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