そして、あの大きな樹に一同は集まった。 「つかっちゃん、今何時?」 「今?」 つかっちゃんが左腕のアナログ時計を見て言う。 「一応、後三十分」 「・・・・・・・・んー・・・・・・・・・・・・・」
「掘って!」 「んだよ、今度は女共がやれよ」 「え!か弱い乙女達にさせる気!!??」
「・・・・・・・・・6人でやったら?6人の物が埋まってるんでしょ?だったら・・・皆で掘った方が喜ぶんじゃない?」
鶴の一声なのか、連が呟くと女陣もその気になったようだ。 「ん〜・・・・佳織、茉莉花、杏菜っ、掘る?」 「面倒くさいけど・・・・」 「いーよっ、掘ろうじゃん」 「じゃー決まりだね」
***************************** そして数分後。 さっきの箱より一回り大きい白い箱が出てきた。
【パカッ・・・・・・・・・・・・】
現れたのは、6つの、ビー玉の3倍ほど大きくキレイな輝きを放つ玉だった。 「あっ、これぇ!!!」 「“友情玉”だぁ!!!」
「・・・・・・・・・・・友情玉?」 「あっ、あのねぇ・・・・」
***************************** 25年前の春の日。 桜木坂の学校には、6人の生徒が入学した。 入学生徒、6人。全校生徒、彼らを含め6人。 そう、この6人しか生徒は居ない状況だ。 「入学、おめでとう」 「はいっ♪」 「・・・はい・・・」 「生徒数は君たちだけなんだ。・・・もう、この先入学生徒もいないだろう。教師も私のみだしな・・・・・・・・だからこそ、今の、君たちで友情を大切にして欲しい」 「ゆーじょー?」 「そう。こうして同じ年に同じ地域で産まれ同じ学校に通うこと自体が奇跡なのだから・・・だからこそ、永遠(とわ)の仲間達を大事にして欲しい」 《はーいっ!!!》 「そう・・・・じゃあ、先生がある物をあげよう・・・」
そういって沢溝が差し出したのは、6つのキレイな玉。 「なーに?これ」 「“友情玉”だよ。コレを持っていて欲しい。先生は古い人間だから、古臭いのかもしれないが・・・コレを持っていて欲しい。永遠の友情を忘れないでいてほしいからな」 《ハ〜〜イ!!!》
そして、6年経って。 6人の友情は変わっていなかった。 だが、卒業してからは離れ離れになり、忘れてしまっていた。
沢溝はそれを見抜いていた。 だからこそ、いつか友情玉を捨ててしまう日がくるであろう。だが、友情を大切にして欲しかった。 だからこそ・・・・・・・・・・・・・埋めてタイムカプセルにした。 いつか懐かしんでくれる日を待っていたから。いつか友情をよみがえらせてほしかったから。
***************************** そして、箱の中には手紙が入っていた。
『友情と言う物は難しい。手を伸ばしすぎればすぐにくずれる。かといって恐れてはなにも建たない。まったく、難しい物だ。 だが、時を重ねる事に少しずつ知っていける物だと思う。相手の事を思いやり時には自分を見せると、友情と言う物が成り立つはずだ。 合わない者とは無理に居なくていい。ただ、永遠の仲間達を大事にしてほしい。そして何より自分を大切にして欲しい。 探し物は、すぐそばにある』
と言う手紙が。 「・・・・・・・・・・あのころさぁ、私、初めて会った時は緊張して、友達なんかできないよー!って思ってたけど・・・・・・でも、楽しかったんだ、6年間・・・幼稚園なんか近くになかったから、初めての友達!」 「私も・・・・・嬉しかったなぁ、あの玉もらえた時。友達ができて嬉しかったな・・・」 「・・・・・・・・オレもだな」 「俺も・・・・・・・男が俺以外1人だったから戸惑ったけど、なんか“友達”って良いなって思えてきて」
担任が残した友情玉を機に、6人は思い出した。 昔輝いた友情を。永遠の仲間達を。忘れていたけど、友情がどれほどキレイだったかを。
「・・・・・・・・・・・・ねえ、つかっちゃん」 「ん?」 「・・・・・・・・・・・・・“友情”って・・・いいもんかな」 「・・・・かもな。少なくとも、俺は時野と“友達”でよかった。・・・それ以上行きたいような・・・・・」 「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・そだね」 そう答えた連は、どこか嬉しそうだった。
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