「え?俺?」 「うん。つかっちゃん英語できるでしょ」 「ちょっとだけなら・・・・」 「多分コレ英語だと思うんだけど・・・・・」 「英語?」
W E N S
共通する英語?
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あ」
ふいにつかっちゃんが、何かに気づいたようにいう。 「方角???」
W――WEST。西。 E――EAST。東。 S――SOUTH。南。 N――NORTH。北。
「・・・・・・・・・これって方角の頭文字・・・・・?」 とつかっちゃんが呟く。 「かもね。・・・・“古き命の音”・・・・・・・・・・」 「音・・・なんかしないぞ?」 つかっちゃんの言うとおり、周りは静かで木々ばかりだ。
「・・・・・音・・・・・・・・・・アッ!!」 茉莉花が言う。 「何?」 「前、先生が教えてくれたじゃない!理科の時間!」
***************************** 20年前。 理科の授業の時間でのこと。 その日は課外授業で、大きな林の場所へつれていかれた。 「ホラ・・・・・・・・・・」 「うっわぁ、デケェ樹!!!」 「そうとも、尾崎。樹は、“命”とも言われるんじゃ・・・」 「命?」 「そう。樹は、命の水を吸い取って生きている・・・・そして、その命の水から作り出される酸素が、人間を生かす・・・・・だから、水に感謝し、樹にも感謝。感謝することで・・・する側もされる側も、すがすがしいもんじゃよ」 「へー・・・・・・!!!」 「ねっ、先生っ、樹に耳つけると音がするよ!ゴーって音!!!」 「ああ、そうとも、酒井。水を吸い取っている音・・・命の音じゃ」 「フゥーン・・・・」
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「・・・てなことがあったよね!?」 葵が言う。 「ほらっ、20年前!!6年生になって初めての理科!!」 「あっ、言ってたぁ!ほらぁ、啓輔が質問したんじゃん!」 「覚えてねーよ・・・・」 「・・・・待って、あの時耳つけたの・・・・・この樹だよ!?」
葵が指さすは、すぐそばの大きな樹。 「どれどれ・・・・」 佳織が耳を近づける。
【ゴォ・・・・・・・・・・・・・・・・ゴォ・・・・・】
命の音。 「うん、する!!」 「じゃあ、コレ基準に・・・・・・・・・・5とかっていうのは、5歩歩けってこと?」 「メートルの可能性もあるぞ?」
「・・・・・・・・樹の本数?」 連が呟く。 「樹、結構あるし・・・・・・・・・・・・・本数じゃない?」 「そうかもね!」 「めんどいことするんだな・・・・・・」 男陣が呟く。 この樹から、まずW――西に5本分、そこからE――東に3本分、そこからN――北に2本分、そこからS――南に5本分。
そうしてたどり着いたのは、『掘れ』と刻まれた桜の樹だった。
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