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桜木坂の友情 作者:りみ

第12回         〜   後編

「・・・・・・・・・・・・ア・・・・・・・・・・・」
木村の全身から力が抜け、ヘタリと腰が抜けたようだった。
「・・・・・ア・・・・・アハハ・・・・・」
「木村さんっ、やりましたよぉっ!!!すごい、すごいやんの!!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・フゥッ」
連もフッと笑った。
「・・・・・・・・・・・・どっち切ったの?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それはね・・・・・・・・・・・」



その時。
《チッ・・・・切りやがったか・・・》

壁の向こう側から、もう一人の犯人の声が聞こえた。
「!!!裕はんっ、そっちにおりますね!?」
《ええ、佐藤さん。覆面しちゃって・・・似あいませんよ、きっと》
《チッ・・・・・・・大鳥(おおどり)のヤツ、やられやがって・・・・》
《・・・・・・・大鳥・・・・・?》
裕は、共犯者の“大鳥”と言う名に聞き覚えがあった。そう、アレは確か―――


《悪いですけど、この壁壊させてもらいますよ》
《アア!?させるか!!!》
《・・・・・フゥ・・・・・・・・・片瀬、眼鏡持ってて》
《え、あ、ハイ!!》




【ドガッ!!!!・・ドガッ!!】


その声の直後から、ドガ、ドガと言う音が聞こえる。
裕が壁を蹴っているのだ。

《裕さん、何してるんですか!?》
《見りゃわかるだろ片瀬!!ブチ壊してるんだよ!!》
あまりの変化に、庄治は驚いて片瀬に聞く。
《この人・・2重人格なの???》
《あれが・・裕さんの教師姿です。でも、本当は人情に熱くて優しい人なんですよ。だから、勘違いしないでくださいね》
《教師って・・記者もやってって教師もしてるのかっ??変わった人だなぁー》
と言う庄治の呑気な声。
「片瀬・・まさか裕さんメガネ外してるの?? 」
と言う木村の問いに、今度は佐藤が問いかけた。
「木村はん、裕はんがメガネ外したらどうなるん?」
「もう、すごく怖いですよ!!!前一度外してもらったんですけど、人格変わるんです!」
「フ〜ン、“クレヨンしんちゃん”の上尾先生見たいやわ」
《そうなんですよ、あ、そっちも入り口塞がっていますよね?壊せます??》
「・・・壊すって言ったって・・あ、佐藤さんならできるかも!!」
「え、ウチ??」
「ええ、佐藤さん、お願いします!あなたならできるでしょ?」
「・・・・・・だいじょーぶだよ。佐藤さん強いじゃん」
「んもう、連ちゃん、ウチ乙女やで〜〜〜〜〜〜〜・・・・」
「・・・・・・・だいじょーぶだよ、佐藤さん十分乙女だし。だから壁壊して」
「連ちゃん言うとることと勧めとること逆やで〜〜・・・・でも、そんな事言うてる場合ちゃうやんね!!よしっ!!!」











【ドガアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!!!!!】







決して、爆発ではない。
決して、仕掛けられていた爆弾が爆発したわけでもない。









佐藤は何度も蹴ったわけじゃない。



たったの一度。そう、一度蹴っただけ。



一度蹴っただけなのに、爆発よりもすごいような音がした。




【ガラガラガラガラガラ・・・・・・・・・・・】
その一撃で、壁はくずれてしまった。
「クッソ!!!」
犯人の声。悔しそうに歯軋りしている。
(ベルリンの壁崩壊、その時代に生まれてたら佐藤さん行ってあげればよかったのに・・・)
と、京大出身で頭の良い片瀬はそう思っていた。
【ガラガラガラガラガラ・・・・・・・・・・・】
その一撃で、壁はくずれてしまった。
「クッソ!!!」
「何だよ、佐藤はもう壊しちまったのか?」
裕が(メガネを外した)出てきて残念そうに言う。 
すると犯人も同時に出てきた。悔しそうに歯軋りしている。
「もうこんなことやめねーか???その銃に弾は入ってねーんだし」
眼鏡を外してまるっきり人格が変わった裕は、犯人に野良猫のような目つきを向け冷たく言った。
「オマエ・・さっきの記者か??・・甘いな・・。まだ爆弾はあるんだよ・・。あと30分で爆発するんだ!」
犯人は勝ち誇ったように言う。すると、裕が連に言った。
「なんか、あと30分後に爆発するんだってよ」
「フーン・・・・どうでもいい、てゆーか眠い」
「お、お前らなんでそんな平常心・・・」
「うっせんだよ!!・・いい加減にしろよ!!!さっさと自首しやがれ!!元刑事の俺が、わからないとでも思ってんのか!?」
男が全部言う前に裕が怒鳴った。
「・・・・・・あんたホント変わるね」
「コレが本性です」
その間に全員避難させた4人が戻ってきた。
庄治は驚いた目で裕を見ていたし、佐藤は「アンタかっこええな」という眼差しでみていた。
「あのー・・・裕さーん??」
片瀬が話しかけても裕は頭に血が上っているのか聞いていなかった
「あぁ!?うるせぇよ片瀬ぇ!!オマエ怖がってばかりいるなよ!!!」
もはや誰も止められない。(止める気がない人たちだらけだが)
「ヘッ!!!アホくせぇな、誰が自首するかよ!!!!!」
「そうかよ、だったら逮捕するまでだ!!!」
“元”刑事なので逮捕は出来ないんじゃ・・・と連は思った。
「ヘッ!!!捕まってたまるかよ!!!!」






「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・メガネかけさせたら?」
「そうだな」
片瀬は、裕にメガネをかけさせることにした。




【スチャ・・・・】

「おっ?・・・・あ、どうもすみません。お見苦しい点があったことを謝ります」
と律儀に謝罪した裕。
「ケッ、何ワケわかんねーこと言ってやがる!!」
「まぁまぁ、“奥田 智章(おくだ ともあき)”さん」
「な!?何でオレの名を!?」
「知ってますよ。あなたさっき“大鳥”とおっしゃったじゃないですか。覚えていますよ・・・だって、『大鳥 洋佑(おおどり ようすけ)と奥田智章』は有名な犯罪者グループの総長でしょう?」

この二人は、前にも大掛かりな犯罪をしでかした二人組みなのだ。
この二人は、前にも大掛かりな犯罪をしでかした二人組みなのだ。
8年前に、大規模な強盗殺人事件があった。
そのグループの名前は、『O(オー)』。
当時被疑者として指名手配されていたのが『大鳥 洋佑』と『奥田 智章』だった。
裕は続けて話した。
 
「・・あの時は、事件が解決せずにお蔵入りになってしまいました。しかし、僕は今度こそあなた方を逃がしませんよ。あなた方が銃で人を撃てなかったのも、さらに犯罪を増やしたくなかったからです」
「・・・・・・・・・・・アンタよく覚えてんね」
 
男は追いつめられたような顔をした。
「そうか・・・だが俺はまだ捕まるわけにはいかないんだよっ!!」
「・・・・・まだ何かあんの?」
連がめんどくさそうに言う。



その時犯人が爆弾を見せた。




残り時間は後







――――――10分。
「今すぐ爆発させてやるよ・・・・」
と、二つの色のコードの内赤を切ろうとした。





「させるかぁっ!!!!!」
【ドガッ!】
「ぐっ!!!」
佐藤が後ろから男の後頭部をひじで殴り、その拍子に男の手から爆弾が飛ぶ。




【キャッチ!!!!!】
運よく木村が両手で爆弾をキャッチした。が。


「・・・・・・・・・・加奈子さん、それ動いてますよね・・・・・・・」

















「・・・・・・・・・・イヤアアアア!!!片瀬っ、パス!!!」





【ポン!!キャッチ!】


「えっ、え、えええ!?わ、佐藤さんパス!!!!!」
片瀬が佐藤目掛けて投げる。

「わっ、わ、わわわわわ、いらんよ!!!庄治はんパス!!!」
「えっえ、ええええ!!!???もう、誰かパス!!!」

と、庄治が投げた先は普通の乗客。
「キャッ、キャアア!!アナタパスゥッ!!!」
「わ、わぁ!!ちょっと、パス!!!」
「パス!!!」
「パ、パス!!!!!」

パニックとなってしまった。

「ええええええええい!!!!もう、パス!!!」
とサラリーマンらしき男が投げた先にいたのは、杖を持っていた老人。
「!!」
【カキ―――――ン!!!】
老人が杖で野球のように爆弾を打った。




「・・・・・落とすと爆発するんちゃう?」
佐藤の凍りついた声。



【ハシッ!!!】

裕がキャッチした。
「ん〜〜・・・・これ、どうしましょうね?」
呑気な裕の声。
「どっちか切れば止まると思うよ?」
「そうですね。では、連さんにお任せしますよ」
「えーめんどくさい」
「まぁまぁ・・・・ほら。爆弾なんて滅多に持てるものじゃないですよ」
といって呑気に裕は連に爆弾を持たせた。
「・・・・・・・・フア〜〜ア・・・・・・・じゃあ・・・さっき犯人が赤切ろうとしてたから、青でいいや」
と、連は青を切った。
【ピ、ピ・・・・ピタ・・・・・・】
 







止まった。

「止まりましたね、連さん」
裕がそう言ったその瞬間、男はガックリと肩を落とした。 爆弾も無事止めて、犯人の2人は逮捕された。時効まであと少し・・・と言う所だった。
「連さん、あなたのおかげで助かりました」
「・・・・・別に」
裕は深々と礼をしていたが、片瀬は連が、何かやっぱり気に入らなかった。
「・・・・あのさぁ」
「?」
片瀬が連に話しかける。
「・・・・・・・・・・・・・・とりあえず、“信じる”っていうことだけは教えてもらったから」
「誰に?」
「・・・・・(歯がゆさ)誰にって、オマエからじゃなかったらオマエに話してねえよ・・・・・・・ありがとう」
「?なんて?」
「・・・・・・二回も言わない!!!!」
一方。
「なぁなぁ、裕はん!!・・・もし、もしウチが付き合おう言うたらどないする?」
と佐藤が聞いた。

もちろんそれは、木村が裕の事を好きだと言う事を承知の上。承知の上で、裕が木村の事をどう思っているか知りたかったのだ。
そして佐藤は裕の事を恋愛対象としてみてない。

「それは、ダメです。なぜならもう・・・・・いますから」
と、裕が真剣に言った。
「オッ!!!な、誰誰誰!?木村はんとか!?」
と佐藤が言う。













「・・・『はあとふる』の皆がいますから、そっちの新聞社には行けませんよ」










しばしの沈黙。







「・・・・・・・・・・・・・プッ」
連が少し笑った。
どうやら彼の頭の中では付き合う=一緒に仕事をするという意味らしい。
(この子並に鈍感だ・・・・)
と片瀬は思った。
「まぁ、でも、そちら様ともお付き合いしますよ!!!A small bond!!」
「なんなん?その英語!」
と、裕が英語を言ったので佐藤が聞く。
「“A small bond”と言うのは、“小さな絆”と言う意味です。今回この事件で、僕ら小さな絆が生まれたと思いません?」
「・・・・・フア〜〜〜ア・・・・・・・・さぁ・・・・・・信じるってことができたからいいんじゃない?」
「ええ、連さん。その通りです。ひょんなことでも絆は出来るものですね」


そして、それぞれ解散する事に。
「・・・・・・・・・・・・・・・・あ」
連は気づいたように、少し面倒くさげに木村に聞いた。
「結局、あの時どっち切ったの?」
「え?ああ・・・・・ふふ、青よ」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・なんで?」
「だって・・・・・・・・・・・・」
チラリ、と木村は佐藤を見た後に裕をジッと見た。


「佐藤さんの言ってた事思い出したの。佐藤さんってロマンチストでしょう?“赤い糸”の話が好きみたいだもの。で・・・・・・ふと思ったの。“この壁越しに、赤い糸で裕さんと繋がってるんじゃないかな”って。“自惚れでもいいから繋がってて欲しいな”って。・・・・そう思ったら・・・・・・・・赤い糸、切りたくなくて」



「・・・・・・いーんじゃない?あの人全然気づいてないけど・・・・・いつか気づいてくれるよ」
「フフッ、ええ♪ありがとう!」


そして6人はそれぞれ解散した。
“A small bond”・・・・・ちょっとした事件から生まれる小さな絆もある。
その絆は・・・・・・・・・・・・・・きっと永遠なものだろう。

                     

           番外編その3【コラボ・A small bond】 終わり

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Novel Editor by BS CGI Rental
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