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桜木坂の友情 作者:りみ

第10回   番外編その3【コラボ・A small bond】前編
(※こちらは、まきさんの小説キャラ『スギセン』のキャラに、我が『トキタン』のキャラを混ぜたコラボ小説です!!まきさんの方は『スギセン』視点、こっちは『トキタン』視点で書いてますので!!!まきさんの方の『A small bond』もご覧あれ!!)
(まきさん=http://www.denpan.org/home/makinkym/)



【ゴトン・・・・ゴトン・・・・・・・・・】

「なぁっ、庄治はん、楽しかったやろ?ミュージカル!!」
「ええ、そうですね。しかし、佐藤さんがミュージカル好きだったとは、意外ですね」
「ちょっとぉっ、ウチ、コレでも乙女やでっ★・・・なぁ、こうして並んでたら、私ら夫婦とでも見えるんかな?」
「ブッ!!!」
「歳の差夫婦♪ウチのが明らかに年下やん!」
バスの中で会話をする二人の男女――佐藤恵利と時野庄治。
そして、少し離れた席で寝ている少女が、時野連。

【ガタン、ガタン・・・・・・・・・・・・・・・・・トサッ!!!】
連はどこでもすぐに寝る癖がある。
現に今も熟睡していた。そして、バスが止まった瞬間に右隣にいた一人の男性にもたれかかった。
「・・・・・・・・・・?」
その男性が連を見る。
「・・・・・・・・・・・ん〜〜〜〜・・・・・・・・・」
「起きましたか」
その男性が連にそういう。男は背がスラッと高い。
「眠い・・・・・・・・で、アンタ誰?」
「おい・・・裕さんになんてこと・・・・」
という、少し怒った声が聞こえたが、眠そうにしていた連には聞こえてなかった。
「片瀬(かたせ)君、まぁ、そこは抑えておいて。・・・申し遅れました。僕の名前は杉山 裕(すぎやま ゆたか)です。『はあとふる』で記者をしております。・・・君のお名前は?」
「時野連。・・・・・で、そっちの片瀬って人は?」
「義彦(よしひこ)だよっ・・・・何でお前みたいな子供に呼び捨てされなくちゃいけないんだ・・・」
「フアア〜〜〜ア・・・・」
「人に名前聞いといて聞いてないじゃないか・・・・」
「まーまー片瀬、大人なんだから怒らないのー」
と、片瀬の隣にいた女性が言う。
「お〜い、連、誰と話してる?」
庄治がやってきた。
「・・・・お父さん・・・・か。この人・・杉山裕って人。記者さんだって。」
「杉山です。」
「こらっ、連!!・・すいません、こいつはいっつも無表情で無愛想でね〜・・どーしてもこんな言い方になってしまうんですよー。」
「・・・悪かったね。」
 そんな2人に裕は何も表情を変えずに話した。
「いえ、おかげで楽しいお話をさせていただきましたよ。・・小さな名探偵のお父様ですから、きっと娘さんと同じように名推理をなさるのでしょう。」
「んー、お父さんは名探偵じゃないよ」
「連、余計なことを・・・。えー、時野庄治です。宜しくお願いします。時野探偵事務所から、やってきました。」
自己紹介なのに、なぜかお見合いのようになっていた。
「では、あなたは探偵なのですね?」
「はい!!」
「ダメダメ探偵だけど。」
そして、佐藤も来た。
「あれ、あんたまさか・・・・『はあとふる』の?」
「あ、京都出版の佐藤恵利さん?」
「そうそう!!!杉山さんやね?」
「はい、杉山裕です」
「うわぁー、会えて嬉しいわぁ。な、な、色んな事件解いとるんやろ??」
 すると、裕は照れたように言った。
「いえ、それは片瀬君と一緒で・・・」 
「ぜーんぶ裕さんのお手柄なんですよ!すごいんですよ、裕さん!!」
と女性が言う。
「あれ?あんたはんは??」
「あー、裕さんと同じく『はあとふる』で働いてる、木村 加奈子(きむら かなこ)です。こっちのバカは、片瀬義彦です」
「またバカって言われたよ・・・。」
片瀬は肩を落としたようだった。

そうして、ひょんなことから打ち解けた(連は寝ていたが)。





そのとき。



【ガタンッ!!!!!!】




「オイ、コラ、静かにしろぉ!!」
《キャアア―――――ッ!!》
乗客員が騒然とし、悲鳴が上がる。




男が黒い覆面をし、黒い手袋をした手にはピストル。こげ茶色のジャンパーに濃い緑色のジーパン。




“バスジャック”が、入り込んできたのだった。




「静かにしろよぉ・・・・・・・・おい!」
「ヒッ!!」
バスジャックが運転手に銃口を突きつける。
「回送にしろ。言う事聞かねえとぶっとばすぞ!」
「ハッ、ハイ・・・・・・」
運転手が、バスを『回送』にした。
「よぉし・・・・・・・・・○×ホテルへ向かえ。とっとと行け!!!」
「ハイッ・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
バスジャックは、乗客を見渡した。
見ると、子供を抱きしめて泣いている母親や、怯えて真っ青になっているサラリーマン、何が起きたか未だに理解できていない子供や老人、神に祈っているシスターもなぜかいた。
老人は、恐怖のためか杖を握ったり放したりしていた。
片瀬が木村にしがみついているのが滑稽だった。佐藤は怖がると言うよりも事件のネタが出来上がったな、と言う表情だった。
そして、怖がっていない人間が二人――裕と連だった。
そんな裕達をバスジャクは見つけて、声を荒げた。
「おい、お前!!何でそんなすまし顔で座ってんだよ・・・」
男が指したのは連だった。
「怖くないから。というか眠い・・」
連は思いのほかさっぱりと答えた。その次に裕が答える。
「僕も、同じです。」
すると、男は怒ったような口調になった。
「てめえら、俺をナメてんのか??俺を誰だと思ってる!!」
「知らないよ」
「誰ですか」
連と裕が同時に言った。
覆面の下で男が怒っているのが誰の目にも明らかだった。
「オマエ・・・・人質くるか?」
「いーよめんどくさい」
連は本気で面倒くさそうな表情で断った。
「撃つぞ!?」
「撃てば?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「?撃たないの?」
「・・・・いーから来いっつんだよぉ!!!」



【ドギュン!!!!!!!】

《キャアアア―――――ッ!!!!!》
乗客たちが悲鳴をあげる。男が本当に発砲したからだ。
「れ、連!行くな!」
「めんどくさいし眠い・・・・」
「それでいい、お前は行くな!」
庄治が娘をひきとめる。娘が人質になるのを望む親などいないだろう。
「なんだったら僕行きましょうか?」
裕が平然と言って見せた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
連はしばらく何かを考えているように裕を見た。そして、
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・ご自由に」
と。

そのとき、“何か”が二人の間で通じ合った事を知っているのも二人だけだった。

「片瀬っ・・・裕さんがっ、裕さんが・・・」
木村が涙目になっている。
「・・・・・・・・・・大丈夫だよ」
「えっ?」
連が木村に言う。
「だいじょーぶだよ・・・・・・あの人なら」
「・・・・・・・・・・・・!?」

「おーい、オマエ・・・記者なんだってな」
「はい。僕は記者です」
 
男が話すのに、裕は冷静に答えた。
「じゃぁ、俺の記事を大々的に書いてくれよ。まぁ、生きてたらの話だけど。」
「では書きますかね。・・しかし、記者というものは、色々な情報がないと書けないものなんですよ。メモをしなければいけないので、どなたかが質問をしてくださらないと、僕は記憶力があまりよくないので、だめなのです。」
 
これは明らかにウソである。記者は質問をしながらメモを取るのは常識である。もちろんこれは裕が連に向けた合図でもあった。
「じゃぁ、聞くよ。それでいいでしょ。」
それを知ってか、連が話し出した。男は少し嬉しそうに銃を下げる。
「フン・・さっきの子供か。まぁいい。何でも聞いてくれ」
男が銃を下げる。すると、ちょうど裕の手の位置に来た。
 
「アンタの目的って何??」
「人を殺すことだな。」
 すると、連は何かを見たようだ。それでも話を続けた。
「フーン・・じゃぁ、アンタの持ってる銃って、ニセモノなの?」
男は驚いて言う。

「何だとこのガキ!さっき見ただろ!!・・」

【カチカチ、カチ・・・】
男が銃の引き金を引く。






そこまでだった。






“発砲できなかった”・・・・正確に言えば“弾が抜き取られていた”のだ。
そしてその弾は、裕の手の中にあった。

「??????」
「連さん、感謝します。・・おかげですぐにできましたよ」
銃弾を持っている裕。これが刑事時代に、彼が最も得意としていた技だった。その銃から銃弾を抜き、使えなくするというものだった。
「フフッ、残念でしたね。あ、話してませんでしたね。僕は現記者で・・・元刑事です」
「クッ、クッソォッ!!!」
「フフッ、終わりですね」










「・・・・・・・・それは違うんじゃない?」







《・・・・・・・・え・・・・・・・・?》
連のだるそうな言葉。
「終わってないよ・・・・・・・・・そーでしょ?運転手さん」

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Novel Editor by BS CGI Rental
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