愛美から法一の蜂の体とレイジの背中に羽のようなものが見えたことを聞いた啓十郎は、少し考え込んでいた。そして、口を開いた。
啓「・・・・彼らのところへ連れて行っていただけませんか?」 愛「え・・?」 啓「彼らとあって話がしたいのです。」
零「じゃあ、話そうじゃないか。」 隠れていたレイジが愛美たちの前に現れた。 愛「レイジ君!法一君も・・!」
啓「話は聞いていたようですね?それならば話は早いです。」 零「いや・・よく聞こえなかった。ガラス越しだったから・・」
ドテっとコケる啓&愛。
啓「ならば単刀直入に言わせていただきましょう。人体を改造してよからぬ事をたくらむ組織を潰すのに力を貸してください!」 零「!」法「・・あの組織・・かっ!?」
啓十郎は3歳の時「あの組織」に「作られた」「壱号機」であり、法一はその翌年に「作られた」「弐号機」である。 親がその組織の一員だったためにこのようなことは容易に行われていた。 しかし、たとえ両親が望もうともこんなことをする組織は必ず終わらせなければならない。同じ改造生命のこの三人ならそれが出来る、と啓十郎は説明した。
愛「・・・そんなの危ないよ!ねえ!レイジ君!」 啓「お願いします・・・。」 零「俺は改造生命じゃねえ!」 啓「!!!!」
そういって走り出してしまった。
愛「レ・・レイジ君!」法&啓「後藤さん!」
レイジを追いかける。
零「改造生命・・化け物・・・!畜生!畜生!畜生!!」
法「は・・速ええ・・」その速さに驚く法一。 愛「す・・すごい・・もう見えなくなっちゃった・・」 啓十郎が抱えている愛美も驚く。 啓「改造生命かそうでないか・・これで判る筈!カアアーーーーッ!!」 啓十郎が叫んだ瞬間、背中から黒い羽が生え、普段細めの目が見開き、足が鳥のような足になった。 愛「(こ・・これが改造・・!)」 啓「法一!愛美さんを!」愛美を法一のほうへ投げる。 法「え・・う・・うわわわわわっ!!!!」 愛美を受け止めるも、女性に免疫の無い法一は真っ赤になって倒れてしまった。
愛「きゃああっ!!法一君大丈夫!?」
啓「カアアーーーーーッ!!!」高速で空を飛んでレイジに追いつく。 零「なっ!!」 人通りの無い公園で啓十郎に捕まった。
啓「まったく・・何も逃げなくてもいいじゃねえか!」(この姿になると性格も変わる) 零「うるせえな・・」 啓「あんたも改造生命なんだろ?大体判ってるんだ、隠さなくてもいいだろう!」 零「うるせえって言ってんだろ!!」 啓「く・・・・。」
レイジに睨まれ、動けなくなった啓十郎。 普通、改造生命は羽などを表に出さなくても普通の人間よりはるかに強い。 そのはるかに強いはずの自分が動けなくなると言う事実に、レイジは少なくとも只者でないことだけは感じ取った。
啓「・・・わかった。あんたが改造生命かどうかはこの際やめよう。だが、あんたはとんでもなく強いことだけはわかった。だから手伝ってほしい。頼む。」 零「・・・・それならいい・・・でもな。」 啓「?」 零「何で愛美を巻き込んだ?最初から俺か法一にだけ言えばよかったのに。その組織のことを知ったばかりに何か変なことに巻き込まれるんじゃないのか?」 啓「う・・それは・・」
零「・・・いや、もういい。だが俺としても迷ってる。だから・・強い者同士、戦って決めよう。」 啓「戦いで・・か。なるほど単純で明快で最高の方法だ。」 零「お前が勝ったら俺は手伝う。俺が勝ったら・・少し考える時間を貰う。」 啓「わかった・・。」
この日は夏休みが終わったばかりで、まだ暑い。 しかし、なぜか赤い枯葉が飛んできて、レイジたちの前を横切った。 その瞬間、二人は一斉に互いに飛び掛った。
零「うらああっ!!!」強烈な蹴りが啓の首に入る。 啓「たっ!!」それもかまわずレイジの腹にストレートを入れる。 零「ぐっ・・・!!」 啓「カアアッ!!!」鋭い爪の生えた足で蹴り飛ばす。 零「グあーーーーーーーッ!!!!!」砂場まで吹っ飛んでしまう。 そして啓の追い討ち。ニードロップを落とそうとする。 が、レイジの蹴りに吹っ飛ばされ、さらに空中で地面に向かって殴り飛ばされた。
啓「ガハッ!!!!!」 零「もう終わりか!?」 啓「バカ言うな!」一瞬で立ち上がり、レイジの顔を殴る。 零「うおっ!!・・このやろお!!!」 顎に強烈なキックを叩き込み、さらに飛び上がった啓をうまくつかんでパイルドライバー(相手の頭を下にした状態で落ちる)をかけ、さらにダメージを与える。
啓「く・・・ぐ・・これは・・そろそろ奥の手を使う・・か。」 そういって自分の羽を数本むしりとる。 零「・・?」
その頃愛美と法一
法「すいません!俺、女の人とああいうことになったりするの苦手で!」 愛「それはいいからっ!早く行こう!」法「はい!!」
走ってレイジ達のいる場所に近づいて来ている。
そして・・
啓「くらえ・・・・!!!!」 ダッ!っと、レイジに一瞬で近づき、レイジの胸に両手の平とそれが持っていた羽をぶつけた。
啓「・・・・・・天空殺破(てんくうさっぱ)!!!!!」 この技は、啓十郎の腕力とスピードで巻き上げられた空気の衝撃を羽の力で相手の体に全てぶつけてしまう技。
零「グ・・・・・・・は・・・・・・!!!!!!!!!」 血を吐いて倒れた。
その時愛美たちが来た。
愛「レ・・レイジ君!!!!」 法「そ・・そんな!!!」
啓「・・・遅かった・・な。安心しろ。気絶しただけだ。」
法「後藤さんが・・・負けるなんて・・。」絶望した顔で 愛「気絶・・?」
啓「ああ・・気絶・・ん?」
法「アレが・・気絶か?」 愛「違う・・よね?」
啓「な・・・な・・・・」
零「効いたぜ・・・。」
レイジはまだ元気だった。 その時啓十郎に戦慄が走った。 自分の最大の技を叩き込まれても立ち上がってきた「後藤 零司」とは何者なのか。と。
啓「・・・ま、まさか!!!!」
零「うおらぁッ!!!!!!」 啓十郎は何かに気がついた。 しかし、その瞬間レイジの一撃が決まり、啓十郎は倒れていた。 そして、またしても愛美はレイジの背中に何かを見た。 愛「…羽…。」
啓「・・・参った。アンタは・・本当に強い・・。」 零「お前も強かったよ。」 啓「愛美・・さん。あなたを巻き込んだこと・・許していただきたい。」 元に戻って愛美に詫びる。
愛「え?あ、別に私は・・」 零「おいおいいいのかよ・・・。」愛「え、何が?」 零「お前自分のおかれた状況わかってないだろ・・」 愛「え?なに?なにが?」 零「アホ・・」 愛「あ、ひど〜い!!!」 法「まあまあ。その辺にして・・後藤さんも啓十郎も怪我してますし。」 愛「あ、そっか!レイジ君、大丈夫!?」
零「俺は大丈夫だよ。法一、啓十郎を連れてけ。家に行って手当てしよう。」
法「あ、はい!」 愛「あれ・・?(なんでさっき喫茶店にレイジ君達がいたんだろう?ひょっとして・・私のことで?)」そう思った瞬間、真っ赤になってしまった。 零「ん?どうした?」
このとき、すでにあるひとつの運命の輪が動いていた。
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