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黒猫の緑眼。 作者:じゅえる

第6回   考え事。結果。希望。

夢にまでみるようになった。
或は、常に夢に現われていたのに気付いていなかったのかもしれない。
夢をみても、覚醒と同時にその夢見た記憶は消失してしまうから。消失、というよりも、思い出そうとしても思い出せなくなってしまう。忘れる事と、思い出せない事と、消えてしまう事は違う結果をあたしに齎している筈だ。

あたしが『ひなた』くんの夢をみるのは、極稀。
こんなに好きな感情をもっている相手の夢をみないのは、なんだか不思議に感じる。
夢っていうのは、無意識の内に感じている事や印象の強い事柄を睡眠時に脳がまるでデタラメに繋ぎ合わせた映画のフィルムを上映するみたいに再生する事だと聞いた。
あたしにとっての『ひなた』くんは、覚醒時に常に考えている対象に有る。好きで好きで堪らないから。
携帯電話のコールが、鳴らないかと待ってばかりいる。
最後に『ひなた』くんに逢ったのはいつだっけ?
最後に『ひなた』くんの声を聴いたのはいつだっけ?
最後に『ひなた』くんに触れられたあたしの躰の箇所は何処だった?
そんな事ばかり考えているあたしはキチガイもいいとこだ。異常だと思う。自分でも。
こんなに常に『ひなた』くんの事ばかり考えているのに、夢に出てくる回数は数える程しかない。
現実世界で逢えないのなら、せめて夢にみる事ができれば良いのに、と思う。

電話を掛けても繋がらない。
声すら聴く事が出来ない。
相手の状況なんて考えてあげる事が出来る程、あたしは落ち着いていられない。
逢いたいと思ったら、逢いたいんだもん。
『ひなた』くんは、あたしが何回も電話を掛けている事をどう捉えているんだろう。
『ひなた』くんから見たあたしは、一体どんな女なんだろう。
あたしが幾ら考えたところで、『ひなた』くんの思考が微塵も解るワケがないのに。
あーあ。面倒くさい。
あの日、『ひなた』くんが掛けてきた電話には一体どんな意味があったんだろう。そこに意味はあったのかしら。
自意識過剰。マイナス思考。神経過敏。考え過ぎ。

逢いたい逢いたい逢いたい逢いたい!
単純な事が出来ないって、どういう事?
好きも嫌いも必要なのも要らないと思う事もグチャグチャになって解らないよ。
安心したいと思うなら、あたしの事も安心させて欲しいと思うのは余計な感情なのかしら?
気付けよ、とあたしの(元)彼氏は云った。
あたしと『ひなた』くんの関係の薄さについて。だと思うけど。
『ひなた』くんに対して本気になるのは無意味な事だ、位に。
あぁもう解ってるわよ、そんな事くらい。
浮気で不倫で遊びですよ。本気なんて言葉、鼻で笑っちゃう様な関係でしょうね。
好きになった事も、あたしの心に居る『ひなた』くんの大きさも、あたしにとっては何のプラスにもならないのかしら。
自分で自分の首を絞めているだけなのかしら。
気付かないで莫迦やってんのと、気付いた状態で莫迦やってんのと、莫迦やってんのを楽しむのと止めるのと、あたしはどっちにすれば良いのかしら。どっちに転ぶのが幸せになるのかしら。そんな事すら考えたくない。
クダラナイ。
感情と行動を別々に出来る程、あたしは出来ちゃいない。そんなに器用じゃない。それが出来る程器用な女だったら、こんなクダラナイ事で一々考え込んだり悩んで泣いたりしない。
『ひなた』くんにすら、要領が悪いな、なんて云われているあたしが、『ひなた』くんの事を幾ら好きになったところで『ひなた』くんに飽きられない様にする為にはどうすれば良いのか、なんて、考えるだけで頭痛がするわ。
もう考えない様にしなきゃいけない時期になっているのかしら。
玩具は古くなったら大人しくゴミ箱へ?
縋り付くのは醜い?
答えを独りで出せる程、あたしの頭は働かない。

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Novel Editor by BS CGI Rental
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