「後ろから抱き締めてても良い?」 うふふ。君にそう言われると、溜まらなく嬉しくて、胃の辺りが捻られてるみたいにギュウギュウ締め付けられてるみたいな感じになる。でも俺は嬉しさを顔に出すのを我慢するんだ、毎回。クールなフリして「いいよ」なんて素っ気なく言う。そんで君に抱き締められると嬉しくって嬉しくって、君に背中を向けているのを良い事にニヤニヤ笑いが止まらない。君の腕が俺の首に絡まる感じが好き。君の胸の体温を背中で感じるのが好き。君の呼吸が耳にかかる感じが好き。君が好き。君だけが好き。 I love you. 愛してるのよ。 I want you. 貴方が欲しいの。
暑くて目が覚めた。体中がジットリと汗ばんでいる。うぅ。最悪だ。 厭な夢なんてみたせいか、頭が痛い。ズキズキ、ズキズキ。 起き上がろうとしたら、ベッドから転げ落ちた。生まれて初めてベッドから転げ落ちたぜ。イッテェ。。そんな自分の間抜けさに、ちょっと笑う。やっべぇ、独り笑い。 クーラーのスイッチを入れる。ブゥゥン、、、少し間を置いてから、フワリと冷たい風が吹き出して来た。汗ばんだ躰には気持ち良い。暫くベッドに寝っ転がって、目を瞑る。寝っ転がったまま、枕元を手探りでゴソゴソ、テレビのリモコンを探す。んーん?アレ?無いなぁ。しょうがないから起き上がって探す。なぁんだ。枕の下にあるじゃん。意味も無くテレビをつける。ブラウン管には最近良く見るお笑い芸人がギャアギャア喚いていた。喉が渇いている事に気付いて、ビールを取りに冷蔵庫に向かう。クーラーをつけている部屋から出ると、ムッとした熱気で最低のキッチン。暑い。夏なんて嫌いだ。開け放った冷蔵庫の中からは、ヒンヤリした冷気が流れてきた。気持ち良い。暑いから、冷蔵庫なんぞの冷気に快感を感じるんだろうな。ってことは、暑いのも悪くはないのかもしれねぇなぁ…なんてクダラナイ事を考えながらビールを片手に部屋に戻る。携帯電話が鳴っていた。誰だろうと着信画面を覗いてみると、援交相手のオヤジからだった。シカト。今はコイツを相手に出来る様なテンションじゃない。君からの着信は相変わらず無いのにさ。ビール飲みながらテレビのチャンネルを変える。ロクな番組がやってねぇ。意味も無くチャンネル2往復。諦めてテレビを消す。キーン、、、テレビは断末魔の悲鳴をあげて真っ暗な画面になり、俺の目に瞼を閉じるとチカチカ光る厭な残像を残して眠った。部屋の掃除でもするかなぁ。
彼奴とセックスしたのはいつだったっけ…?無精者の俺が、昔から続けている唯一の日記を読み返してみる。嗚呼、先月の31日だ。ってことは、今日で丁度10日経ったんだ。長い様な、短い様な、彼奴と逢ってないと毎日彼奴の事ばっかり考えてるから日にちの経ってる感覚がよく解らなくなる。莫迦だなぁ、俺。来週には性病検査にまた病院行かなきゃ。ったく、彼奴とセックスする前には薬物治療で大分良くなってたのに、彼奴とセックスしてから出血した俺は彼奴から性病もらったんじゃねぇかってまた余計な心配しなきゃいけない羽目になった。コンドームって、やっぱり付けた方が良いのかもしれねぇな。性病って最悪だ。
随分放置していた郵便ポストを覗きに家を出た。うひゃあ!よくもここまでって位にギッチリと俺宛ての郵便物やらDMが詰まってる。全部を部屋に持って行くのは流石に気が引けるから、俺宛ての郵便物以外をマンションに備え付けの要らない郵便物専用ゴミ箱に捨てた。それでも大量に残った郵便物を部屋に戻って開封してみる。携帯電話の料金明細書、電気、ガス、水道料金の明細領収書、美容室からの割り引き特典ハガキにクレジットカードのDM。目を通して、破って捨てる。それだけの作業に疲れ果てた俺。ふ、と時計を見ると仕事に行く時間が刻々と迫っていた。俺はだらけたままシャワーを浴びて、今日も仕事に行く事にした。
ココナッツのお香に火をつける。甘い匂いでテンションをあげる。 さぁさぁ今夜も俺は笑顔の仮面をつけるのである。 御飯を食べるより、君とキスしてたいなぁ。なんて考えながらさ。君に噛まれた痕が、内出血で無気味な色になって腫れている。痛みがまだ残っている。傷痕に触れながら、嬉しくて独り笑う。うふふふ。
いらっしゃいませ。ご指名有難うございます(嗚呼、君に逢いたいなぁ)。
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