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黒猫の緑眼。 作者:じゅえる

第28回   絶滅した筈の天使の群れ。目玉を抉り取られた仔兎。殺人を繰り返す狗。

セックスをして、お金を貰った。大した金額じゃないけど。
それでも俺は、そのお金を大事に財布に入れた。
「また連絡してね」
と云って、別れた。笑顔で手を振って。バイバイ。

深夜でも営業中、近所のコンビニエンスストア。
俺はどっちかっていうと、Family Martの方がSeven Erevenより好きだね。
コンビニの蛍光灯は嫌いだ。無機質で、何でも晒されてしまいそうで。それでも足が向いちまう。だって深夜でも営業中。
別に空腹じゃないのに、お菓子を品定め。グルッと店内をうろついて、ビールをカゴにガンガン入れる。1本2本3本…7本入れたらラッキーセブンで縁起が良いかな。結局食べたくもないお菓子を適当にカゴに入れて、レジで清算。いつもこの時間働いてる店員が目を合わせないで云う。
「1,638円になります」
チーン♪
「袋は2つに分けますか?」
あれ?今日は少し会話してるぜ。

会計済まして外に出て、空を見上げた。昨日の台風が過ぎ去って、今夜の空は澄んで見える。気のせいかな。東京の明るい夜空には数えられる程の数の星が瞬いている。綺麗だな。星ってこんなに綺麗なものだったっけ。まぁいいや。だって綺麗だと思ったら、綺麗なんじゃん?ビールの入った袋が重くて腕に食い込んでる。既に指先が痺れてきてる。あーあ。またこんなに買い込んで、俺ん家の冷蔵庫、前に買ったビールがまだ何本か入ってた筈。愛情の無いセックスすると、いつもコンビニで莫迦買いしてる。これって、一応俺の中ではストレス発散してるんだろうか。早く家に帰って、シャワーを浴びよう。溜まった涙も、全部流そう。

帰り道、見知らぬ男に電話番号とメールアドレスを書いた紙切れを渡された。汚い字。
「何でも云う事聞きますから、貴方の奴隷にしてください」
って、男は真剣に血走った目で俺を見据えて言った。マジ怖いっつうの。
「じゃあ消えろ」
今の俺は機嫌が最悪だ。男はビクビクしながら、それでもしつこく
「連絡ください」
って云って去った。FUCK OFF!!
貰ったお金で、入れ墨を彫った。全額投資。



ねぇダーリン。逢わない時間をどうしてるの?
ねぇハニー。逢わない時間に、俺の事を考えている?
『ひなた』くんに「ハニー」って云ったら、「止めて」って云われた。あはははは。

逢いたいの。君は俺に逢いたくならない?なってたら、逢いに来てるか。君は自分に正直だから。逢いに来てよ。
俺は怖くて、君のLiveに行けなかったよ。行けば君に逢えたのにね。こんなに逢いたいと思ってるのに、君のLiveには行けなかったんだ。行っても君にシカトされるんじゃないかとか、寧ろシカトされたらもう生きていけなくなっちまうから。俺って意外と弱いんだ。君に関してだと、特別に。

『ひなた』くんは、あたしに逢うといつも、大体、毎回、後から電話してきて「逢いたい」って云う。
あたしに逢ってない間は、本当にどうでも良いんだなぁ。あたしに一目逢った時に、衝動的に「逢いたい」って思うんだろうな。厭な奴。莫迦野郎。ムカつく。大好きでどうしようもない。畜生。
あたしは結局まだ『ひなた』くんが好きみたいだ。『ひなた」くんは、あたしの携帯の留守電に伝言を入れる時に沢山喋る。意外と。だからあたしは『ひなた』くんの伝言を聴くのが好き。『ひなた』くんと電話で話しているのはもっと好きだけど、いつも『ひなた』くんが怒るからあんまり長く話せないんだもん。『ひなた』くんの入れる伝言は、可愛い。可愛くて、愛しい。永遠に保存しておきたいくらい。出来る事なら。

「電話があんまり好きじゃない」って、以前『ひなた』くんはあたしに云った。
「電話で話してる時間がもったいないから、逢いたい」
って電話で話す度いつも云う。
『ひなた』くんはあたしの事を「好きだって思ってても良いかな?」って云った。良いかな?って、何かな?
「『じゅえる』はやっぱり可愛いな」
「『じゅえる』の事、やっぱり好きみたい。好きだって思うのは、俺の勘違いなのかなぁ?」
バーカ。
あたしがどんだけ『ひなた』くんの事を愛してるのかサッパリ解ってない。解ってないからこんな酷い言葉を吐くんだわ。
『ひなた』くんに逢いたいのに、毎日。毎日毎日。逢えないのなら、電話で話したいのに。僅かな時間だけで良いの。寝る前に、「おやすみ」って電話してくれたりしてほしいの。声を聴かせてほしいの。それだけで、安心できるのに。あたしは『ひなた』くんの事を感じていたい。だって好きなんだもの、狂っちゃうくらい。こんなに『ひなた』くんの事を好きになる筈じゃなかったんだけどなぁ。予定外。想定外。『ひなた』くんは、あまりにもあたしの理想の男だった。失敗。

ねぇ『ひなた』くん、『ひなた』くんがあたしの事を好きだって云うのは、どうしてなの?
ねぇ『ひなた』くん、『ひなた』くんがあたしの事を愛してるって云うのは、どうしてなの?

「好きだよ」
「愛してる」
あたしは『ひなた』くんの事が大好き。
こんなに解り易い感情なのに、『ひなた』くんが云う「好きだよ」も「愛してる」も全然解んないよ。何でそういう事云うワケ?
「逢いたい。今直ぐ逢いたいの。逢ってキスしよう」
そう云ってくる『ひなた』くんは、いつもいつも衝動的なのね。あたしと逢った事も、毎回覚えてないんでしょう。
あたしがもっと『ひなた』くんに対して冷静になれれば良いのに。そうすれば、『ひなた』くんもあたしと遊ぶのが楽になるのにね。あたしは『ひなた』くんに期待しちゃうから。好きすぎて、どうしても期待しちゃうから。そんで辛くなっていつも自爆。うふふ。
もう辛いのも苦しいのも悲しいのも切ないのもぶっ壊れるのも泣くのも落ち込むのも解んなくなるのも疲れちゃったわ。
疲れちゃったよ。疲れたの。
安心したいの。
どうしようかなぁ。


結局また俺は君の事を考えて泣いている。
君に逢っている時間は、幸せと哀しみが混ざり合っているから、君が俺の部屋を出て行った後で、俺は堪えられなくなって泣く。
もう疲れた。
それでも君を好きな感情が消えない。
逢いたい。
なんだってんだ、ちくしょう。

1発お前の頭をぶん殴ってやろうか?
腑引き摺り出してお前のその嘘ばかり吐き出す口に突っ込んでやろうか?
お前の綺麗な入れ墨剥いで俺にくれよ。
殺してくれよ、君の手で。
唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖唖!!!!!!!!!
駄目みたい、、もう限界。
限界破裂。

君の忘れて行ったジャケットには、君の匂いが染み込んでいた。
当たり前?
でもね、君のジャケットを畳んで、今度家にまた君が来た時に渡そうと思っていた俺は、フッと薫った君のジャケットからの君の匂いにクラクラしちゃって、なんだか嬉しくなっちゃって、君のジャケットを抱き締めて眠っちゃってた。変態だな。うふっ。
好きかどうかは別問題で良いよ。問題にもなりゃしねぇけど。
好きなんて知らねぇよ。愛してるなんて言うな。
言ったところで、そんなもん、唯の言葉だ。そんなに強くはないぜ。
今更だけど、ふっ切らなきゃね。ふっ切れんのか?
好きなのを止めたい。
愛してるなんて知らない。
待つのは厭だ。
期待したくない。
不安になるのは無駄。
君は俺の何でもない。
俺は君の何でもない。
通り過ぎる。
バイバイ。

眠くて瞼が重いけど、今寝たら最悪な悪夢をみるだろうからまだ寝たくない。
君と寝てる時にも悪夢を見た。怖くて最悪なヤツ。君と寝てたのに悪夢みるなんて。でも起きた時に君が隣に居たから、安心した。
夢なんだか現実なんだかよく解んない。でも怖さだけは超一級品。登場人物は、君だった。あはははは!
好きなのかな?
逢いたいのかな?
愛してるのかな?
考えるのかな?
どうしたいのかな?
君と居ても、君と離れてても、結局は君に対して俺はいつもいつまでも疑問符しかついてこない。
だから全然愉しくない。
君は?

『ひなた』くん、『じゅえる』の事好きなの?
「好きだよ。好きだから、逢いに来てるんじゃない?」
『ひなた』くんは、あたしが「『ひなた』くん好き」って云うから、あたしが安心すると思ってあたしの事を「好き」って云ってくれてるんだと思う、って、前に『ひなた』くんに言ったら『ひなた』くんに怒られたの(笑)。
「俺今ムカつくところだった…」

「『じゅえる』と居ると、安心する」
って『ひなた』くんが言った時、是から先も、あたしにだけ安心すれば良いのに、って思った。
あたしにだけ安心してくれるなら、『ひなた』くんが不安になった時にあたしに逢いに来てくれるかな。
逢いたいな。

『ひなた』くんに逢わない間が長く空けば空く程、あたしは辛くなって苦しんで泣いてんのに、『ひなた』くんから連絡があったり、家に来てくれたりするとアッという間にテンションが上がる。単純な女。まだ好きなんだわ。ムカつくわ。
あたしは元『ひなた』くんと毎日毎日逢いたいんだよ。

唯、それだけなんだよ。



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Novel Editor by BS CGI Rental
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