『ひなた』くんは、日本に帰って来てもあたしに連絡してこない。この場合は、「してくれない」になるのかしら。あたしはそこまで自分を落として考えるのが厭。あんまり期待をしないようになったけれど、それでもやっぱり少し期待をしているのは、『ひなた』くんの事をいまだに好きだからなのかしら。好きなのかしら。好きなんでしょうね。噫、ムカつく。これじゃあ、まるで『アキラ』の事を好きだった時みたいだわ。まるで同じ。同じ事を繰り返しているあたしは、何をしているのかしら。好きになるっていうのは、想いが強くなった方が辛くなる。相手からの言葉も行動も何もかもを期待して待ってしまうから、どうしても相手に望みを持つ。厭んなるわ。『ひなた』くんに関する単語を聞くと、どうしてもまだ反応して悲しくなるし、悲しくなるくせに聞きたいと思うし、あたしは『ひなた』くんとセックスしてる女ってだけなのに「特別な関係」であってほしいと願っている。『ひなた』くんがあたしの事を「好き」でセックスしていてほしいと願っているんだわ。綺麗な女も、才能ある女も、財力の有る女も、総てを兼ね備えた女も、自分の理想通りの女も、通り越してあたしに興味を持って欲しいと思う。そんな様な事は、もう随分以前に『ひなた』くんが云っていたけれど。 「『じゅえる』は可愛いと思うよ。でも、可愛いだけじゃ逢いに来ない。何で『じゅえる』なんだろう」
…知らねぇよ。そんな事をあたしに聞かないでよ。莫迦。 厭だ。 好きな人を求めるのは、どうしてなのかしら。 特別な人を探してしまうのは、どうしてなのかしら。
淋しいから? 甘えたいから? 求められたいから? 「好き」だと言って抱き締めて欲しいから? 自分が相手の「特別な存在」になりたいから?
それとも「好き」は感情の昂りなだけで、人間という動物にある子孫を残す為の本能?
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