眩しい。 ブラインドが開いてるの? この光は。 何処から? 噫。 躰がベッドに沈み込んでいきそうに重い感覚。 頭が痛い。 気怠い。 眩しすぎて目が開けられないわ。 この白く強い光は。 何時から? ふと、あたしの手が何かに触れた。 隣に温かい物体。 ……人? 此処は、あたしの部屋で、あたしは今、あたしのベッドに寝ている、筈だわ。 あたしの側に、居るのは誰なの? 眠気なんて無かったのに、あたしは自分で気付かない内にまた眠りへと落ちていった。
目覚めれば、あたしはあたしの部屋に居て、あたしのベッドであたしの毛布に包まっていた。ブラインドは閉じられている。外界からの光は無い。部屋の中は暗い。夜の、暗さだ。手探りでサイドボードのライトをつける。オレンジ色の柔らかい灯りが、部屋に広がった。灯りがついた瞬間、あたしはやっと気付いた。隣には彼があたしに背を向けて眠っていた。いつから彼は此処に来たのだろう?何故あたしのベッドで寝ているのだろう。あたしは何も思い出せない。彼が此処に居るのは何故?あたしも彼も、服を着ていない。全裸だった。セックスはしたのかしら?噫、全く何も思い出せない。全裸で頭を抱える間抜けなあたしにお構いなく、彼はスヤスヤと規則正しい寝息を立てて眠っている。鼾までかきはじめた。なんて憎たらしい男なのかしら。愛しすぎて、殺したい。無理矢理、彼の背中にくっ付いて抱き締めた。低い呻き声を洩したあと、彼はあたしの方に躰を向き直し、寝ぼけ眼であたしを抱き締め返してきた。苦しい。彼の体温が熱い。しかも彼はあたしを抱き締めたまま、もう眠りに落ちている。動けない。なんて幸せ。彼が如何して此処に居て、あたしが彼と何をしたかなんて思い出せなくて良いや。もう少し、こうして居られれば。彼の寝息があたしの耳に掛かってくすぐったい。なんて幸せ。この瞬間は、永遠には続かないから、彼が起きたらキスしてもらわなきゃ。眠るのが勿体ない。 チェーンスモーカーのあたしは煙草を吸いたい衝動に駆られて、彼が目覚めるまでの時間、幸せと苛々の間を行ったり来たりしなきゃいけなかった。
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