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黒猫の緑眼。 作者:じゅえる

第23回   途切れた未来と云う名の光。月は2つで太陽は3つ。食べられた螺子。



眩しい。
ブラインドが開いてるの?
この光は。
何処から?
噫。
躰がベッドに沈み込んでいきそうに重い感覚。
頭が痛い。
気怠い。
眩しすぎて目が開けられないわ。
この白く強い光は。
何時から?
ふと、あたしの手が何かに触れた。
隣に温かい物体。
……人?
此処は、あたしの部屋で、あたしは今、あたしのベッドに寝ている、筈だわ。
あたしの側に、居るのは誰なの?
眠気なんて無かったのに、あたしは自分で気付かない内にまた眠りへと落ちていった。

目覚めれば、あたしはあたしの部屋に居て、あたしのベッドであたしの毛布に包まっていた。ブラインドは閉じられている。外界からの光は無い。部屋の中は暗い。夜の、暗さだ。手探りでサイドボードのライトをつける。オレンジ色の柔らかい灯りが、部屋に広がった。灯りがついた瞬間、あたしはやっと気付いた。隣には彼があたしに背を向けて眠っていた。いつから彼は此処に来たのだろう?何故あたしのベッドで寝ているのだろう。あたしは何も思い出せない。彼が此処に居るのは何故?あたしも彼も、服を着ていない。全裸だった。セックスはしたのかしら?噫、全く何も思い出せない。全裸で頭を抱える間抜けなあたしにお構いなく、彼はスヤスヤと規則正しい寝息を立てて眠っている。鼾までかきはじめた。なんて憎たらしい男なのかしら。愛しすぎて、殺したい。無理矢理、彼の背中にくっ付いて抱き締めた。低い呻き声を洩したあと、彼はあたしの方に躰を向き直し、寝ぼけ眼であたしを抱き締め返してきた。苦しい。彼の体温が熱い。しかも彼はあたしを抱き締めたまま、もう眠りに落ちている。動けない。なんて幸せ。彼が如何して此処に居て、あたしが彼と何をしたかなんて思い出せなくて良いや。もう少し、こうして居られれば。彼の寝息があたしの耳に掛かってくすぐったい。なんて幸せ。この瞬間は、永遠には続かないから、彼が起きたらキスしてもらわなきゃ。眠るのが勿体ない。
チェーンスモーカーのあたしは煙草を吸いたい衝動に駆られて、彼が目覚めるまでの時間、幸せと苛々の間を行ったり来たりしなきゃいけなかった。



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Novel Editor by BS CGI Rental
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