黒猫の緑眼。

作者：じゅえる

第16回 　 頭痛持ちのアビシニアン。愛しい人。産まれ落ちる悲哀。包まれた博愛。罪の意識。翼。

愛しいと想う感情は、いつか消えてしまうモノなのだろうか。だとしたら、あたしが今感じているこのウザったい位の「好き」も、いつか綺麗サッパリ消えてしまうのだろうか。 あたしは『ひなた』くんが好き。愛してる。必要。『ひなた』くんしか要らない。 いつまで経っても好きなのはどうしてなんだろう。あたしはいつまで『ひなた』くんを好きなままなんだろう。この感情は、あたしにとって何か影響を及ぼしているのだろうか。『ひなた』くんが、あたしを好きになってくれるのかすら解らないのに。好きでいることが、何かを産み出すのだろうか？あたしは、どうして生きているんだろう。 逢いたい。 アイタイ。 必要とされる事は、あたしにとってとても重要。必要とされなければ、生きていても仕方が無い。独りの空間や時間を楽しめる部類の人間ではないのだ、あたしという人間は。愛しい人には愛されたいし、大切な人と一緒に時間を共有したい。あたしじゃなければ駄目だと言われたいし、あたしだけ愛してほしい。あたしには、対人間が必要だから。必要とされなければ、価値が無い。 『ひなた』くんに、逢いたい。逢いたくて潰されそうだ。『ひなた』くんは、こんな感情をあたしには抱かない。それって、やっぱり少し切ないわね。あたしだけ、『ひなた』くんの事を好きなんて、独りぼっちもいいところよね。それでも『ひなた』くんの事が好きなのは、どうしてなんだろう。『ひなた』くんは、あたしに対して少しでも狂いそうに”好き”を感じた事、あるのかしら。あるわけないわね。これ以上、『ひなた』くんの事を考えて苦しくなりたくない。あたしには、『ひなた』くんしか、見えてない。それすら、今は痛い。消えてしまえば良いのに。あたしという人間。 ねぇ『ひなた』くん、『ひなた』くんは、『じゅえる』を噛み切りたいと、思ったりする？ ねぇ『ひなた』くん、『ひなた』くんは、『じゅえる』を噛み千切りたいと、思ったりする？ ねぇ『ひなた』くん、『ひなた』くんは、『じゅえる』を噛み砕きたいと、思ったりする？ 『じゅえる』は『ひなた』くんに、噛み切られて、噛み千切られて、噛み砕かれたいと、思うのよ。 『ひなた』くんは、「『じゅえる』を噛み砕いて血を浴びたい」って、云ってくれたの。貴方は覚えてないだろうけれど。 あたしは『ひなた』くんに噛まれると堪らなく嬉しいの。堪らなく快感を得るの。『ひなた』くんには解らないだろうけれど。『ひなた』くんは、きっと、もっとあたしの事を噛みたいんだろうなぁ、って、思う。「血が出るまで、噛みたい」って、云った事を『ひなた』くんは覚えてないでしょうね。あたしは、『ひなた』くんに血が出るまで噛まれたいと思うけれど、ねぇ『ひなた』くん、あたしに消えない噛み痕を残してしまったら、あたしは『ひなた』くん無しでは生きていけなくなってしまうよ。『ひなた』くんは、あたしとずっと一緒に居てはくれないでしょう？あたしは、ずっと一緒に居てくれる人にじゃなきゃ、「噛み切って」って、言えないわ。臆病だから。『ひなた』くんが居なくなってしまったら、あたしは『ひなた』くんが残した噛み痕を見る度に、『ひなた』くんを好きで好きでどう仕様も無い自分に気付くのよ。それって凄く惨めで最低だと思わない？それでも、噛み切って欲しいと思うのは、噛み切られたいと願うのは、『ひなた』くんしか居ないの。ホントに莫迦みたい、あたし。 ねぇ『ひなた』くん、今はまだ、中途半端にしかあたしの事を噛ませてあげられないけれど、『ひなた』くんがまだあたしと逢いたいと思って逢ってくれる日があるのなら、その時間をあたしに割いてくれるなら、あたしは『ひなた』くんに思いっきり噛ませてあげられる日がくるよ。うまく言えないけれど、あと半年の間に。 ねぇ『ひなた』くん、『ひなた』くんは、あたしの事を殺したいと、殺してあげたいと思った事はない？ あたしは『ひなた』くんに殺されたいと思う。いつも。逢う度に。『ひなた』くんは、あたしの首を絞めようとして、途中で止めてしまった事があるの。覚えてる？あたしは、『ひなた』くんに殺されたかった。だから、『ひなた』くんが途中で首を絞めるのを止めてしまった時、酷く悲しかった。 ねぇ『ひなた』くん、『じゅえる』を、殺してくれるかしら。 もし『ひなた』くんさえ良ければ、だけど。 出来れば、あたしは『ひなた』くんに殺されたい。『ひなた』くんは、あたしのお願いを聞いてくれるかしら。 生きている瞬間から、死に至る瞬間、死んだ瞬間から、死に絶えた瞬間へ。その瞬間を、愛しい貴方に見てもらえるならば、その瞬間を、愛しい貴方と過ごせるのならば、その瞬間を、愛しい貴方の其の手に委ねる事で迎えられるのならば。その瞬間ほど、美しく、儚く、幸せな時は無いでしょう？ 愛する貴方に殺されたい。

Novel Editor by BS CGI Rental
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