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黒猫の緑眼。 作者:じゅえる

第11回   薔薇の棘。睡眠薬。アルコールと悦楽。其処に在るもの。子羊のソテー。カブトムシの幼虫。バレンタイン。

あたしには、何が有るんだろう。
何時まで閉じ篭っていられるんだろう。

何もしない事の楽さと淋しさは、もう充分なんじゃないのかなぁ。

求められると、安心する。少なくとも此の世の中で、コイツはあたしを必要としているんだって事に、安心する。あたしがソイツを必要としていなくても。必要としている相手に、あたしを必要としてもらいたいくせに、そうする事があたしには不釣り合いな気がして、出来ない。
不釣り合い、と云うんじゃ無くて、あたしが必要としている相手にとって、あたしは必要とされないんじゃないだろうか、と思うんだ。だから、好きな相手に「好きだ」と云われても、その台詞は物凄く嬉しくて、云われたかった筈なのに、素直に受け止められない。寧ろ、否定する自分が居る。
捻くれてる。

『ひなた』くんにとってのあたしって一体なんなんだろう。
此処に存在していて良いんだろうか。
あたしにとって『ひなた』くんは総てに成りうるのに、『ひなた』くんにとってのあたしが大して重要でないのなら、あたしは『ひなた』くんと一緒に居る意味が無くなってしまう。
求められないのなら、別れなくては。
存在意義が見い出せないのなら、離れなくては。
一緒に居る事に幸せを感じなくなってしまっているのなら、逢う必要が無いじゃないか。
離れている時間を苦痛に感じなくなっているのなら、もうお互いに時間を共有する事もなくなるだろう。
必要ないから。
あたしの感情は、『ひなた』くんに対して生まれて、『ひなた』くんにだけ感じるのに、一方的になってしまっているのなら、それは時間の無駄になる。
アイドルに恋をする少女漫画みたいなもん。
あたしは此処に居て、実在している生身の人間だから、現実から目を背けていたら

生きている意味が無くなってしまう。

あたしを必要として。
必要とされないのなら、もう連絡すらしないのなら、あたしにそう言って。


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Novel Editor by BS CGI Rental
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