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黒猫の緑眼。 作者:じゅえる

第10回   考えるスカンク。起きない駱駝。首を吊れない儘彷徨う象の群れ。

『ひなた』くんは、『じゅえる』の事を好きだって云う。
『じゅえる』が思っているより、『ひなた』くんは『じゅえる』の事を好きなんだって。
「『じゅえる』は俺がいい加減に『じゅえる』と付き合ってるんだと思ってるだろ?そうじゃないよ。俺は『じゅえる』と都合良く付き合ってないし、好きだよ。」
……ふぅん。
「仕事が忙しくなると、遊びたいって感情が押し殺される。遊びたいけど、遊びたいって感情が勝てないんだよ。」

電話が繋がらなかったのは、忙しかったのと、体調を崩していて、家とスタジオの往復ばっかりだったから、なんだって。殆ど他人と接触をとってなかったらしい。へぇ。

「『じゅえる』の着信がいっぱいあって、(『じゅえる』は俺と話したいんだろうなぁ)って思ったけど、忙しくて掛けらんなかった。でも、1回掛けただろ?」―――CLUB CITTA'川崎でLONDON NITEがやった日。
「あの後また電話取れなくなったから、タイミング外したなぁって思った。」
『じゅえる』が沢山着信を残すのは、迷惑?
「迷惑じゃないよ」
……『ひなた』くんが忙しい時は、電話に出れないし掛けられなくなるなら、『じゅえる』から電話して着信残ってから、待っていた方が良いの?…つまり、『じゅえる』からの着信を沢山残さない様に『ひなた』くんから『じゅえる』に掛け返して来るのを待っていた方が良いのかって事なんだけど…。例えば1週間とか…。
「あぁ、それが良いや。『じゅえる』、頭良いなぁ。そうだね。俺から掛けるよ。だから1週間経っても俺から電話掛け返せなかったら又電話しなよ。」
『ひなた』くんは、
「俺は『じゅえる』の事、凄く構ってるんだよ。『じゅえる』は放って置かれてると思ってるんだろうけど。電話だって、『じゅえる』から着信あったら絶対3日以内には掛け返してるだろ?俺は、『じゅえる』から電話があったら掛け返すもん。自分で(すっげぇな〜、俺。ちゃんとやってるよ〜。)って思うもん。」
って云った。そうなんだ…。「ちゃんとやってる」って、何?そう思う事が、あたしにとって必要なのかしら。
『ひなた』くんが、あたしに「『じゅえる』が思っているより、俺は『じゅえる』の事を好きなんだよ」って言い出したのは、いつからだったか。でも最近は会話する度にその台詞を云っている。あたしが安心すると思って、優しさ故にわざわざ云ってくれているのか、一体なんの意図が含まれているんだろう。

『ひなた』くん、あたしの事、今は好きだって言ってくれるじゃん。飽きたりした時に、『ひなた』くんはどうなるの?
「俺の方から離れる事はないよ。『じゅえる』が俺に飽きた時に、『じゅえる』の方から俺と離れるんじゃない?例えば『じゅえる』に彼氏が出来たら、俺から離れるだろ。『じゅえる』が俺を必要としなくなったら、俺は『じゅえる』の前から消えるよ」
どう考えても、そんな『じゅえる』側に都合の良い展開は信用出来ないんだけど、『ひなた』くんは前にもそんな様な事を云った。「俺は『じゅえる』の事好きだもん」が理由らしいけど、怖い。
「『じゅえる』は可愛いじゃん。俺は可愛い女が好き。女だったら誰でも言い訳じゃ無い。選ぶ。」
『じゅえる』は『ひなた』くんにとって、可愛いのか…全く信じられない。
「『じゅえる』に逢う時は、『じゅえる』だけに逢いたいから、『じゅえる』の友達とは逢いたくない。友達が居ると、気を遣うから厭だ。『じゅえる』に逢ったら、他の奴は要らない。2人だけで居たいから」
この台詞は、最近良く聞く。
「『じゅえる』は俺と付き合ってるんだって思って良いんだよ。」
って云いやがった。
その台詞を、余計な事を何も考えずに両手放しで莫迦みたいに素直に受け止めて喜べたらどんなに楽な事か。あたしには、莫迦になる事が出来ない。
好きすぎて、苦しいんだよ。
素直に受け止めるなんて出来ないし。
莫迦野郎。
あたしは毎日だって『ひなた』くんと逢いたい。逢えないなら電話で話したい。
『ひなた』くんには、それが出来ないのを解っているから、言って、困らせたり面倒臭がられたり、嫌われたりしたくないから、大人しく我慢してるだけで。
こんな関係は、あたしにはきっと不向きだ。
毎日が苦しい。
先が見える恋愛なんて無いだろうけど、『ひなた』くんとの関係は、何も見えない。
いっその事、遊びと割り切って付き合えたらどんなに楽だろう。なんでこんなにあたしは『ひなた』くんに本気になってしまっているんだろう。あたしは今、最高に莫迦だ。



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Novel Editor by BS CGI Rental
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