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ダイナちゃん! 作者:古淵 工機

第5回   突撃!ダイナの晩ご飯!?(前編)
ここは海と港の街・神奈川県横須賀市。
……の片隅、小高い丘の上にある三畳高校。

……の中にある、2年C組。ここにあの二人の姿があった。
「ダーイーナーちゃんっ!」
「あぁ、リエっち」
「今から帰り?」
「まぁね」
「ふぅーん」
…実は、リエにはひとつ気になっていることがあった。
ダイナとリエは高校に入学した時からの友達であったが、思い返せばリエはダイナの家に行ったことがない…。
一体ダイナはどんな家に住んでいるのだろうか、それが気になって仕方がなかった。

更にもうひとつ、気になっていたことがある。
基本的に爬虫類は、寒いと体温が下がり動きが鈍くなるといわれている。
そして生物学的には、恐竜は爬虫類から派生した動物である、とも言われている。
つまりリエの頭の中では当然の如く『恐竜=寒さに弱い』という方程式が出来上がっていたのだ。

目の前にいるダイナはどうか?
確かに今、寒い時期だからコートを着て寒さを防ごうとしているのはわかる。
しかし、もともと寒さに弱いハズの恐竜が、果たして無事に家に帰り着くことができるのだろうか?
…一緒に帰る、という経験自体をしたことがないリエにとって、やはりその辺りは友人として心配でならないのだった。

「…ねぇ」
「ん?」
「…今日、ちょっとダイナちゃん家に寄ってってもいいかな?」
「いいけど…なんでまた急に?」
「ちょっとね」
こうして、リエはダイナの家へと向かうことになったのである。

いくら関東地方の南側にある横須賀といっても、さすがに12月にもなると木枯らしが吹き、肌寒い感じである。
コートを着ていたとしても、当然ながらその寒さを完全に和らげることなどできはしないハズだ。

「ひゃっ!?」
いきなり吹いた突風に身を震わせる二人。
その直後、リエは震えながらダイナに訊ねた。
「ダ、ダ、ダイナちゃん…大丈夫?」
「大丈夫、ちょっとやそっとじゃ死にゃしないって」
…前回のティラノサウルス事件を生き延びているだけに、やたらと説得力のある台詞だった。
「でも、ダイナちゃん…」
「ご心配なく。こー見えて私は案外寒いのは平気なんだよね〜」
「えぇっ!?恐竜って寒さに弱いんじゃなかったの!?」
「あはは…」

ここで解説せねばなるまい。
ダイナの祖先が『トロオドン』と呼ばれる小型の肉食恐竜であることは第1話でも触れたとおりであるが、そのトロオドンには高度な体温調節機能が備わっていたという説がある。
恐らくその機能が進化の鍵となったのであろうか、トロオドンの形質を引き継ぐダイナもまた、恐竜でありながら寒さにはある程度耐えられるというのである。

「…まぁ流石に、寒空の下へ半袖で出て行くようなバカはしないけどね…」
「へぇー…」
「あ、ほらリエっち、着いたよー」

学校から更に上がった丘の上の高い場所にダイナの家はあった。
入口は呼び鈴や郵便受け、表札にドアこそあるものの、その雰囲気は家というよりむしろ洞窟の入口に近い様子であった。

「ただいまー」
「おじゃましまーす」
ダイナの後についてその家の中へと入っていくリエ。
果たして彼女を待ち受けていたものとはっ!?

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Novel Editor by BS CGI Rental
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