突然であるが、あなたは恐竜という生物をご存知だろうか? …我々人類が生まれるはるか昔より地球の各地を歩き回っていた爬虫類である。 そして、今からおよそ6500万年前に全て滅びてしまった…と言われていた。 そう、「絶滅した」とされていたのだ…つい15年ほど前までは。
ここは日本の何処かにあるという『三畳学園』高等部…。 「…では、次の問題をー…」 ―ここでは、いつものように授業が展開され…。 「じゃあ、豊田さん」 ―いつものように生徒が名前を呼ばれ…。 「豊田さーん?」 ―いつものように名前を呼ばれている生徒が授業中に居眠りをし…。 「…はっ!?」 ―いつものように、名前を呼ばれていることに気付き慌てて飛び起きる。 「…ねっ、ねねね寝てませんよー!?」 「あ、あのねぇ…」 ―そしていつものように先生に呆れられ、クラスは爆笑の渦に包まれる…。
しかし、この豊田と呼ばれた女子生徒…『豊田ダイナ』は他の人間とは明らかに違っていた。 といっても、例えば特別頭がいいとか、背が高いとか、あるいは外国人とのハーフという訳でもない。 そもそも厳密には、彼女は人間と呼べるのかすらわからない存在だったからである。
「…ダイナちゃん、一緒にお弁当食べよ!」 ダイナに声をかけてきたのはすぐ後ろの席にいる『日野リエ』である。 彼女はこの高校に入学してすぐにダイナと知り合い、一緒に弁当を食べるほどのよき友である。 「わぁっ、リエっち、その卵焼きおいしそうじゃん。手作り?」 「うん、ちょっと焦げちゃったけど…」 「それでもふっくらしてて美味しそうだよ〜」 早速、弁当のおかず談義が始まった。 こういう風に一緒に「弁当を食べている生徒」の間ではよくある光景である。 「ところでダイナちゃんのお弁当は?」 「えへへへ…」 ダイナはニコニコ笑いながら弁当箱を包んでいた風呂敷を解き、つづいて弁当箱の蓋を取った。 「じゃーん!」 「…カルビ丼!?またえらいボリュームだね…」 「だって大好きだもんっ」 「あぁ…なるほど、ダイナちゃんってもともと肉食恐竜だもんね…」 「えへへ…」
今の台詞でピンと来た方々も多いことだろう。 そう…豊田ダイナはもともと、小型の肉食恐竜『トロオドン』を遠い祖先にもつ恐竜人なのである。 もっとも、祖先が肉食恐竜だとはいっても実際は長い進化の過程で雑食性になってはいるようだが、やはりダイナは肉が好きなようである。
「でも、そんなに肉ばっかり食べてて大丈夫なの?」 リエは思ったことを口にした。同じクラスメートとして、やはりダイナの身体のことが心配で仕方がないのだ。しかしダイナは余裕の笑みを見せてこう答えた。 「その辺は大丈夫。毎日しっかり運動はしてますから」 「ははぁ…なるほど…」 と、力こぶを作ってみせるダイナを前に、ただただ呆然とするリエなのであった。
時は流れて放課後…。 「ところでダイナちゃん、これから部活なんだけどどうする?」 「そうだね、部長は何言い出すかわかんないからなぁ…」 そう言いながら二人が辿り着いたのは『社会科室』である。 普段ここは社会科、とくに歴史の授業で使われる教室だが、放課後はある部活の部室となる。 その扉には『三畳ミステリー調査部』と書かれた紙が貼り付けられていた。 「…入るよ」 「うん」 ダイナたちは、その怪しげな空気が漂う部室への扉を開けるのであった。
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